5月6日まで1週間を切った。
a flood of circle結成20周年記念ライヴ、日本武道館。それをゴールに行われてきた〈日本武道館への道〉という対バンツアーも終わった。しかしこのツアーは、メンバーにとってはかなり大変な日々だった。佐々木亮介(ヴォーカル&ギター)がリハに来なかったり、ライヴ中に曲順を突然変えたり、いわゆる〈ライヴとはこういうものだ〉という固定観念を崩し、予定調和でないステージをやろうとする。武道館を目前にして、そんな状況をメンバーはどう思っているのか。メンバーそれぞれに聞く、武道館直前の心境。第3回はベースのHISAYO。
武道館に向けたツアーはどうでしたか?
「今やってるツアーは、ワンマンじゃなくて対バンだから面白いですね。対バン相手によって、佐々木のその日のモードが変わるんですよ。日々違うスタイルに対応していくから、どう来ても大丈夫、な状態にしておかないといけないから、めっちゃ鍛えられましたね」
〈なんでこんなことすんねん!〉って思ったライヴはありましたか?
「前日のライヴが終わって、ナベちゃん(渡邊一丘/ドラム)と『今日のライヴ、ギターが大きかったね』って話してたら、佐々木、それを聞いてたのか、次の日、ギターをイントロだけ弾いて、あとはほぼ弾かない、ってライヴがありましたね(苦笑)。それでいて最後、アンプのツマミを佐々木が上げに行ったから、〈そんなオイシイとこだけやらせるか! もう全部ぶっ壊す!〉と思って、私もベースの音量めちゃ上げて、ぐぁぁぁぁって弾きまくりました(笑)。そしたらそれがファンやスタッフから評判がよくて。でもムカついてるから終わったあと『佐々木のバンドやけど、佐々木のためにバンドをやってるわけじゃないからね』って詰め寄ったら、『今日はこのままだと何も起こらないと思ったから、メンバーを怒らせたかったんですよね』って」
まんまと乗せられたわけだ?
「そういうことか、と。このツアー、ギター弾かなかったり、全然違う曲始めたり、リハ来なかったり……正直、それはどうなん?って思うこともあるけど、そこで気づくことがちゃんとあるから、ムカつくとかそういう感情はないです(笑)」

そういう佐々木の変化に気づいたのはいつ頃でしたか?
「一昨年の野音のちょっと前ですね。まずモニター(註:ステージのプレイヤーに、自分の音や他のメンバーの音を聴き取れるようにするためのスピーカー。ほとんどのバンドは置いてある)を取っ払って、開場中のBGMもなくしたんですよ。始まる前のSEもないし、なんなら照明も地明かりのまま。〈なんで?〉と思ってたら、リハに来ないとか、予定にない曲をいきなり弾き始めるとか、ルーティンになってるものを壊していくようになって。うちらがそれに対応していくと、つまらなくなってまた何か壊す。その繰り返しです」
なんで壊したいのだと思います?
「他のバンドと同じことをやってもしょうがない。だからみんながやってる、予定調和を崩したい。でも続けてると、それが予定調和になる。だからつねに何か壊そうとしてるんじゃないかな。でもそうやって、変わってくる佐々木に対して、ちゃんとステージで対応するのが面白いし、楽しい。鍛えられるし、もう慣れた(笑)。こないだも楽屋で『じゃあ私が武道館でベースを弾かなかったらどうする?』って言ったら『いいっすよ。そしたら俺がベース弾きに行くかもしれないし』って言ってました(笑)」
そういう、予想もしないことが起きるのが、本来のライヴの面白さだ、という思考というか、精神性になってるわけですね、彼は。
「そうですね……この答えって、別に武道館で出せるものではないと思うので。だから〈私たちのバンドの途中経過はこれです〉っていう姿を見せるライヴになりそうな気がする」
他のバンドによくあるフォーマットからとにかく逃げる、と。
「そう、対バン相手のファンからしたら〈やる気あんのか?〉〈ちゃんとやれよ〉って声も上がるかもしれないけど、そう思わせないくらい〈なんか凄いな〉って思わせるライヴをするつもりなので。私たちが他のバンドに合わせることは、たぶんないかな」
佐々木に「ちゃんとやれ」って言っても逆効果だもんね。
「例えばスタッフが『たぶん佐々木はフロアに降りるので、マイクのケーブル長くしておいてください』ってローディーさんと話してるのを聞いたら、佐々木はフロアに降りないんですよ。それを求められてたり、〈そうするんでしょ〉って思われたらやらない。だからみんな何も言わない(笑)」
このバンドのメンバーの中で、一番日本武道館でのライヴに夢と憧れを持っていたであろう姐さんは、そういうライヴでいいんですか?
「夢や憧れとは全然違う武道館になるな、って早々に気づいてます(笑)。でも、みんなが思ってるフラッド、他のメンバーが思ってるフラッド、に近いものは見せることができると思います。たぶんモニターも置いてないだろうし、リハもしない。佐々木が入ってくるの、開演15分前とかだと思うし」
大変ですなあ(笑)。
「でも面白いじゃないですか。たぶんライヴ中も、なんか違うなと思ったらなんとかして壊そうとするだろうし。でも、ただ〈グチャグチャにしたい〉ってことじゃないんですよ。お客さんのことを考えてないわけでもない。本当の今の気持ちをバンドで共有して、それを音にして出すためにやってる。ライヴって発表会じゃないでしょ、ってことだと思います。だからなんでもできる準備はするけど、あまり想像はしない。いつもニュートラルでいるように、最近はどのライヴもそんな感じで臨んでるし」

昨日のライヴ(4月19日〈I ROCKS 2026 stand by LACCO TOWER〉)でも、急に違う曲をやることになってましたね。
「〈本気で生きているのなら〉が始まるのかなと思ったら『あと何分?』って佐々木がスタッフに確認してるんですよ。〈あ、これは曲変えるつもりだな?〉と身構えてたら、案の定『じゃあ武道館の練習する?』って言い出して、いきなり〈Diamond Rocks〉って言ったんです。ナベちゃんも私もまだ復習してない曲だったから、めちゃくちゃ慌てたけど、構成ちゃんと合ってた(笑)」
さすがです(笑)。
「でも〈Diamond Rocks〉を武道館でやるのか否か、誰もわからない(笑)。当日のセットリストに入ってても、やるとは限らない。でもそれが面白いですよ。他にこんな感じでやってるバンドはいないし。もちろん普通に曲決めて、練習して、しっかり準備してライヴに臨むのもすごいけど、うちらはそれを目指せなかった。そのかわり、とんでもない緊張感と、バンドのヒリヒリした姿を見せることができるし、それに面白さを感じてる。佐々木に洗脳されてしまいましたね(笑)」
どんな状況でも丁寧に、きっちりしたベースを弾くことで知られていたHISAYOが、佐々木に変えられてしまった、と(笑)。
「そうなんですよ(笑)。昨日の〈I ROCKS〉でのセッションも、〈ちゃんと弾かないと!〉じゃなくて、〈ぶち壊さなきゃ!〉って気持ちになったし(笑)」
じゃあ、「武道館はどんなライヴになりそうですか?」って聞かれたら「わかりません!」が答えですよね(笑)。
「私はそうですね。こういうライヴにします、なんて言えない。だって曲順が出ていても、そのとおりにやるなんて、誰も信じてないし(笑)。いつ、どんな曲になっても、その時のベストな演奏をするだけ、としか言えない。そのぶん、緊張感とスリリングさがみんなで味わえたらいいなと思ってます。初めて観る人や、久しぶりに観る人はちょっと驚くかも知れないけど、覚悟してきてください(笑)、今のフラッドはこういう感じです。でも面白いし、カッコいいでしょ、って胸を張れるので」
文=金光裕史
写真=新保勇樹

第一弾 アオキテツインタビュー
第ニ弾 渡邊一丘インタビュー
第四弾 近日公開
〈a flood of circle 20周年記念公演 LIVE AT 日本武道館〉
5月6日(水・祝)日本武道館
OPEN/START 15:00 / 16:00
特設サイト
NEW ALBUM
『夜空に架かる虹』
2025.11.12 RELEASE

- 夜空に架かる虹
- KILLER KILLER
- ASHMAN
- マイ・モーターサイクル・ダイアリーズ
- モモちゃんのブルース
- SNAKE EYES BLUES
- キメラファンク(FLY! BABY! FLY!)
- ルカの思い出
- 全治
