【LIVE REPORT】
〈SHE’S 15th Anniversary “She’ll be fine”〉
2026.06.01 at 渋谷CLUB QUATTRO
今年でバンドが結成15周年を迎える、その記念公演である。タイトルに〈She’ll be fine〉とあるのは、今から10年前、彼らがメジャーデビューを発表したのがここ渋谷クアトロであり、その時の公演名に由来する。個人的にはあの日彼らと出会ってなければ、ここまで近い距離でSHE’Sの活動を見守ることにはならなかったと思っている。たぶん誌面で連載をやることもなければ、台湾公演に同行して4人と朝まで呑んだり、武道館に密着することもなかっただろう。それだけあの日は自分にとって、SHE’Sというバンドに首を突っ込むきっかけとなったライヴだと認識している。

というわけでクアトロは彼らとの出会いの場所ということもあって開演に余裕を持って会場へ向かうも、すでにフロアはパツパツでお客さんの熱が高まっていた。直近で観たBillboard Live YOKOHAMAのライヴとはまるで違う雰囲気なのは当然だが、それにしてもいつになくテンションが高い。そして迎えた開演時刻。「Un-scienece」そして「Change」と当時と同じ曲順でライヴをスタートさせたバンドの演奏は荒々しく、それに呼応するようなフロアの高まりもいつも以上で、さらに栞汰のギターソロが熱を煽る。ここまでライヴハウスの熱狂が似合う彼らを観たのは初めてだ。彼らの音楽はつねにホールやアリーナといった大きな場所を求めていて、4人もそんな場所が似合う存在になろうとしてきたし、ファンもそんな彼らを見守るようなライヴの楽しみ方をするのが当たり前だった。だが今ここにいる両者は明らかに違っていた。「デカい声を聞かせてくれ!」という竜馬の煽りに対し「オウオウ!」と予想外の反応を返すフロア。めちゃめちゃ新鮮だ。「Blue Thermal」からの「Back To Kid」という流れには、バンドが紡いできた時間の経過を感じさせる感傷が滲んでいて、汗でキラキラ光る竜馬の首元に青かった時代の残滓を見たような気がした。


叩きつけるような激しいグリッサンドに驚いた「Just Find What You’d Carry Out」、負の感情を投げやりな唄い方で表現する「Ugly」。デビュー当時の竜馬は、自分の気持ちを表明するのが苦手な若者だった。人の目を気にしたり、相手にどう思われるかを先回りして考えるあまり、自分を抑え込んでしまう臆病なヤツで、だからこそ彼の歌は憂いを帯びているのだと腑に落ちた。また、そんな自分に対する鬱陶しさをステージで生々しく爆発させる瞬間を何度も観てきたが、今はそんなかつての自分をエンターテインメントとして表現できるようになっていることを実感した。だからそのあと「ワンシーン」で起こったフロアの盛大なシンガロングは、そんな頼もしい姿を見せてもらったファンからの祝辞みたいなもので、その見事な大合唱に竜馬自身がビックリしていたのも愉快だった。

ライヴ中盤以降のステージも、15年のキャリアに裏打ちされたバンドのスケール感に溢れていた。「Night Owl」や「Set a Fire」と立て続けのエモ曲で空気を入れ替えてからの「幸せ」「Letter」とバラードに繋げるドラマチックな展開をはじめ、とにかく彼らの音楽は大きな場所と多くの人前で鳴らされることを求めているのは明らかだ。もちろん今このギュウギュウ詰めの場所の居心地のよさも、関西出身バンドのアットホームなMCも捨てがたい。けど、彼らはもっと遠い場所まで行けるバンドなのだ。「遠くまで」から本編ラスト「Voice」までたたみかけるようなバンドの一体感が支配するステージは、ずっと彼らに自分が追い求めていた景色だった。この場所で彼らと出会って10年かかったけど、ようやく待ちこがれていたバンドの姿を目にすることができて、そのことがなによりも嬉しかった。想定外のダブルアンコールで披露した「Over You」でも、竜馬の力強い歌声に胸が熱くなっている自分に驚いた。まさにメモリアルなライヴだったのだ。


さて、ここからは余談だ。個人的な彼らに対する思いを書かせてもらおう。冒頭で触れた通り、10年前にクアトロで彼らのライヴを観ていなければ、ここまで深い付き合いをすることにはならなかったと思っている。というのも、その時の彼らは音源や見た目のイメージからはほど遠いバンドだったからだ。「大阪SHE’Sです!」という栞汰の威勢のいい自己紹介とは対照的な竜馬のたどたどしいMC。陰キャなステージでの佇まいと、バンドに埋もれがちな歌声。それらすべてが意外だった。大阪の都会育ちの4人組、ルックスも音楽も洗練されたピアノロックバンド。てっきりメジャーデビューと同時に各所でバズり、メディアを賑わせフェスを席巻する存在になるかと思っていたけど、どうやらそういうレールに敷かれたバンドではないことを悟ってしまったのだ。でも、というかだからこそ、彼らのことが好きになった。この面倒で不器用なフロントマンが書く歌のリアルを伝えたい。遠回りをしてでも、彼が歌を書き、唄う理由をちゃんと届けたい。後日の取材でも触れたが、あの日「声が小さいよね」と終演後の挨拶で感想を伝えた時の竜馬の凍りついた顔は今でも覚えている。酷いことを言ってしまったという申し訳なさはもちろんあるが、だからこそ彼の大きな声を聴きたくてライヴに足を運ぶようになったとも言える。

今の竜馬はあの時と違い終始デカい声で歌を唄い、「もうええわ」とツッコミを入れたくなるほどMCでベラベラ喋るようになった。10年という時間の中で、彼は音楽だけでなく自分自身に対する自信を深め、3人のツレともそれを分かちあい讃えあう間柄にもなった。これまで結成から15年、メジャーデビューから10年という月日が花を咲かせた記念公演。アンコールにTシャツ姿で出てきた4人に、ちょっとだけ〈そろそろTシャツが似合わなくなりそうな歳だな〉とイジワルなことを思うほどの時間の経過も感じつつ、9月に出るというアルバムに思いを馳せてみた。タイトルは『Who am I?』。きっと今の竜馬なら、自分が何者なのか、大きな声でその問いかけに答えてくれるだろう。
文=樋口靖幸
写真=タマイシンゴ


【SET LIST】
- Un-science
- Change
- Cloud 9
- Blue Thermal
- Back to Kid
- No Gravity
- Masquerade
- Just Find What You'd Carry Out
- Ugly
- ワンシーン
- Night Owl
- Set a Fire
- 幸せ
- Letter
- 信じた光
- Getting Mad
- 遠くまで
- Grow Old With Me
- Dance With Me
- Voice
ENCORE
- Morning Glow
- Curtain Call
NEW DIGITAL SINGLE
「葡萄」
2026.06.08 RELEASE

NEW ALBUM
『Who am I?』
2026.09.02 RELEASE


〈CD〉 ※初回盤、通常盤 共通
- Four
- 花雨
- Good Life
ほか全10曲収録予定/曲順未定
〈Blu-ray〉 ※初回盤のみ
- 「Sinfonia “Chronicle” #4」 at 昭和女子大学 人見記念講堂 (2025.10.2)
- 「SHE’S 15h Anniversary “She’ll be fine”」 at 渋谷 CLUB QUATTRO (2026.6.1)
■【数量限定セット】<復刻>Her Dog Tシャツ付(初回限定盤+<復刻>Her Dog Tシャツ)
※UNIVERSAL MUSIC STORE限定販売
〈SHE’S 15th Anniversary “She’s fine”〉
6月14日(日)大阪城音楽堂
開場 16:30 / 開演17:30
