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tacicaベース小西悠太、初の単独インタビュー。20周年イヤーを締めくくったライヴを振り返る

text by 樋口靖幸
2026年4月28日


さる4月5日、ヒューリックホール東京にて20周年イヤーを締め括ったtacica。〈tacica 20th anniversary final “同じ穴の貉”〉と銘打たれた本公演には、そのタイトルから連想される奇妙な仲間意識が会場に漂っていた。それはここが1年前に同じ場所からスタートしたアニバーサリーイヤーのゴールということもあり、どこか打ち上げ的な意味合いを感じていたからだろう。かといってライヴ自体がいつもと違うスペシャルな催しになるわけではないのが彼ららしさだが(ただし野村陽一郎[ギタリスト&プロデューサー]が一部ゲスト参加)、ただ、これからのtacicaを担うのは小西悠太(ベース)の存在であることを実感するものだった。とくにライヴが始まって2曲目に披露した「ミカラデタサビ」でのベースは、猪狩翔一(ヴォーカル&ギター)の影で控えめに存在を主張するこれまでの彼ではなく、21年目を迎えたバンドを引っ張り上げるような勇ましさを湛えていたのだ。というわけで周年の締めくくりとして、本邦初となる小西のソロインタビューを敢行。本当は打ち上げ会場で呑みながらやりたかったけど、初ソロ取材ゆえそこはお互いシラフで行うことに。次は酒場で乾杯しながら話したいです(笑)。



どうですか、20年やってきて初めてソロインタビューを受ける心境は。


「いやぁ……想像してなかった」


あははははは!


「想定外です」


まずは先日の公演を振り返りますが、どんな手応えがありましたか。


「ちゃんと20周年を締めくくれたライヴだと思います。周年が始まってからツアーがあり、〈TOMOE〉(THE NOVEMBERS、People In The Boxとの対バンツアー)もありましたし、そうやって1年かけてやったことが、特にライヴ前半の3人でやったステージにつながった感じはしました」


そういえばあの日って、最初から最後まで3人でやるのかと思ったら、途中から野村さんが出てきたじゃないですか。1年前のヒューリックホールも野村さんとやってたから当然なんだけど、あの時よりも3人だけでバンドが完結してる感じがあって……野村さんも似たようなことをアンコールで言ってたけど。


「あぁ。『最後まで3人でやればよかったんじゃない?』みたいな(笑)」


それぐらい3人にとって、周年は特別な1年だったんだろうなって思いました。


「スタッフ含めてみんなで一丸となれた1年でしたね。音響の人とかテックの人も含めて、〈もっとこうしていこう〉みたいな意見交換とか提案をたくさんしてくれて。そのおかげで僕も猪狩もライヴに対する姿勢とか考え方が変わってきたというか。そういうのが全部あの日のライヴにはちゃんと出てたかなって」


あと、小西くんの物販紹介がこなれすぎてしまってるところが問題といえば問題で(笑)。


「そうなんですよ(笑)。猪狩からダメ出しされることもなくなってしまい」


小西くんをイジれる新しいネタを考えてほしいです。謎かけとか(笑)。


「無理です(笑)。絶対スベるんで……そういうのがいいのかもしれないけど」


猪狩くんとの20年という時間の長さについては今、どう感じてます?


「気がつけば、みたいな感じですかね。15歳から猪狩と一緒にいるんで、自分から意識するようなことはあんまりなく。それこそ周りから言われて〈もうそんな経つか〉ってなる感じです」


自分のバンド人生を振り返るとどうですか?


「運がよかっただけですね。最初に猪狩と出会ったのもたまたま同じ高校だったからで、隣の町に住んでなかったら出会うこともなく。あと、卒業して別々の道に進んで2、3年経った頃、僕が猪狩のことを思い出してバンドに誘ったら、向こうも同じタイミングでバンドをやることを考えてたみたいで。そういうことがいくつも重なっただけで、そうじゃなかったらたぶん今ごろは好きな音楽聴いたりライヴに行くような、そういう生活をしてた気がします」


小西くんっていろんなことにそこまで積極的ではないイメージがありますけど。


「そうですね。tacica以外の場所でプレイすることも、声をかけていただければ喜んでやりますけど、自分から〈やりたい!〉みたいな感じでは……正直ないので(笑)」


ははは。そういう控えめな性格について、デメリットを感じたことは?


「デメリットはあまり考えないようにしてて、逆にそれをメリットとして捉えようとはしてます。僕、自分からあんまり主張しないのは、自分に自信がないからなんですよ。演奏することに対してもそうだし、ライヴで緊張するのもそうだと思うんですけど」


20年やっても?


「そうですね。自信がないから〈間違ったらどうしよう?〉とか考えてしまう。だったらそのぶん余計に練習したり、イメージトレーニングしたり、最近はそういう意識でやれてるます」


その積み重ねで自信がつくこともあるのでは?


「自信っていうか、後悔することは減りましたね。例えばレコーディングの時にあとから〈エンジニアの人に音をもっとこういう感じで!って言えばよかったかな〉とか思わないように、ちゃんと言うべきことを言うようになったり。まぁそれぐらいですけど」


そうやって後悔してる自分のことを、隣にいる猪狩くんは察していると思いますか?


「どうなんですかね……(しばし考える)察しているかもしれないけど、猪狩にもそういうところがあったんじゃないかなって気がしますね」


後悔することが?


「作り終えて、ちょっと時間が経ってから〈もっとこうしておけばよかったな〉みたいな。だから、自分がそうなってるのを察しているところはあるかもしれない」


そのへんは2人で話したりしない?


「しないですね。やっぱりこれだけ長いと、どんどん家族っぽくなるじゃないですか。楽屋にいてもあまり話さなくなったり。まぁそれでもウチらは話すほうだと思いますけど」


ライヴを観るたびに思いますけど、2人は友達っていう感じがしますけど。


「そうなんだ……でも、お互い仲のいい友達は別にいるんですよ。もちろんツアーとか行けば2人でご飯を食べたりするけど、こっちにいる時はほぼないし、それこそ別々の友達と会うほうが多いぐらいで」


だからこそステージに立ってる時ぐらいは友達に戻るというか。


「あ、それはそうかもしれない」


猪狩くんって他人に対して厚い壁があるタイプじゃないですか。


「そうですね(笑)」


壁があるから思ってることを上手く言葉にできないし、お客さんへの伝え方も下手くそだし。けど、ああやって小西くんをイジることによって、その壁をなくそうとしてるというか。


「それはわかります。で、本来の猪狩に近い感じになる」


そうそう。壁のない自分を目の前にいるお客さんに直接出せばいいのに、それができない。だから小西くんを介してそういう自分を出すっていう。


「でも、それはそれでいいバンドだなって思いますけどね」


そう、そこがすごくバンドっぽい。つまり2人の関係性があってのステージというか。ちなみにtacicaのベースとして〈ここだけは誰にも負けない〉と思えるところは?


「やっぱり猪狩が求めてるもの――こういう曲にしたい、こういう音が欲しい、みたいなことは聞かなくてもわかるというか。あとは猪狩の歌にタイミングに合わせて弾くことに関しては、誰にも負けないと思います」


それだけ彼のことをわかっていると。


「これだけ長く続けていればそうだろ、と思いますけど。とりたてて自分のプレイで秀でてるものって、そんなにないと思ってるんで」


正直、昔は小西くんのベースをとりたててすごい!って思ったことはなかったんですね。たぶんバンドの在り方としても、猪狩くんが引っ張るバンドだし、そこに小西くんはついていくだけ、みたいな。


「まぁそうですよね」


けど、ここ最近の作品とか今回のライヴもそうだけど、今はもっと小西くんのプレイが主張しているというか。「ミカラデタサビ」なんて小西くんのベースがあってこそだし。


「ああ……ありがとうございます(笑)」


tacicaは2人が横並びで存在してるバンドなんだなって思いました。


「なるほど……あの、20年経ってもバンドって伸びしろがまだあるんですね」


もう少し言葉にできます?


「猪狩は感じてるかもしれないですけど、自分の中ではそこまで意識して自分を前に出してるつもりはないんですよ。確かにベースのリフは多くなったかな?ぐらいで、基本的には猪狩の歌と言葉を聴かせたいし、うるさいベースは要らないと思ってて。でも、猪狩と20年やってるうちに、いつのまにか進化してるんだなって。だったらもっとこのバンドはやり続けていく価値があるというか、伸びしろがあるんだなって」


無責任なことを言うと、たぶん小西くんみたいな人がメンバーでいたら、どんなバンドも長続きしそうな気がする(笑)。


「あははは。よくも悪くも主張がないんですよ。平和主義者じゃないですけど。それってさっき言ったみたいに、性格的に自分を誇れるものはないからで。本当にたまたま運がよかっただけだと思ってるから、プレイヤーとしてのこだわりとプライドってほぼないに等しい。ブレブレっちゃブレブレなんですよ」


本人がいないから言いますけど、猪狩くんみたいな面倒くさい人とやれることが才能というか(笑)。


「あはははは! でもそれは自分も同じですよ。猪狩じゃなかったらここまでこれてなかったと思うし、いろんな人と出会えてなかったと思う。そもそも……さっきの話に戻るんですけど、猪狩とバンドやろうってなった時に『曲は誰が作るの?』『え、じゃあ……猪狩で』って彼に丸投げしたら、本当に作ってきたから今があるわけで。最初は『え、俺が作るの? 詞まで書くの?』って言った猪狩から、最初にできたのが〈HERO〉だったんで。あそこでよく自分の無茶ぶりを引き受けてくれたなって今でも思いますよ」


小西くんの人生最大の自己主張がそのタイミングだったんじゃない?


「そうかも。それまで猪狩と一緒に演奏したのって1回しかないんですよ。でもその1回がずっと残るくらいインパクトがあって。声だったり、唄ってる姿だったり。それが他の人にはないと思ったからなんですけど」


ある意味、猪狩くんの才能を掘り起こした人ですよね。


「そうなんですよね」


そこで〈俺がアイツを見つけたんだ〉みたいに主張しないのが小西くんで。


「遅かれ早かれ誰かが見つけてますよ。たまたま自分は同じ高校だっただけなんで」


そういうところですよ、tacicaが20年続いてきた理由は。


「でも本当にそうなんで。運がよかっただけ(笑)」



文=樋口靖幸
写真=大参久人



〈tacica TOUR 2026 “DYING SONG”〉
9月21日(月・祝) 柏PALOOZA
9月26日(土) 静岡Sunash
9月27日(日) 名古屋ell.FITS ALL
10月3日(土) 岡山IMAGE
10月4日(日) 梅田Shangri-La
10月11日(日) 大手町三井ホール
10月24日(土) 札幌BESSIE HALL


tacica オフィシャルサイト

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