Age Factory、11月8日の武道館公演、完売間近(註:取材時点。その後完売を発表)。これを驚きのニュースと捉えるか、当たり前の事象と捉えるかは、コロナ禍以降のライヴ現場を観ているかどうかの差であろう。泥臭いスタイルをどんどん逸脱しているAge Factoryは今やバンドシーンの中でも異色の存在だ。尖ったラッパーたちと次々接触していくこと、奈良に根を下ろすローカルバンドであること、さらには日本一有名な大舞台を目指すことを、同時に実現させているチームも他にいないのではないか。その内情をパソコン越しで探ってもわからないので、思い切って奈良へ飛んだ。訪れた自主レーベル〈0A〉。少数精鋭のスタッフは、ほとんどが地元ライヴハウスで同じ意識を育んだバンドマンたちだった。選民のコレクティヴを気取る人はおらず、ただ同類だけでイキイキと回っているチーム。これで武道館実現って、夢ありすぎやしませんか。
(これは音楽と人2026年11月号に掲載された記事です)
近づく武道館公演を記念してのインタビューです。私、最初は〈LOSTAGEの五味(岳久)プロデュースで登場した若手〉と認識していたから、こんな未来はまったく考えてなくて。
清水英介(ヴォーカル&ギター)「あぁ。そうですよね」
ただ奈良から、彼らの血を受け継いだオルタナバンドが出てきたなと思っていた。もちろん、そのイメージは10年をかけて大きく裏切られていくわけですが。
清水「でも、だからこそ最初のアルバムをLOSTAGEにお願いしたところもあったと思う。影響受けてたら、名前も出さずバレへんように似たような曲作るのが普通でしょうけど。俺からすると、まず今は先輩たちにブラッシュアップしてもらう、でも同じスタイルを守っていくことが自分たちの理想ではないよ、っていう提示がファーストアルバムやったんですよ。当時から五味さんに口酸っぱく言われてたのが『俺らと同じにはなるなよ』っていうことで。俺は『はよLOSTAGEみたいな感じになりたいっすわー』って何回も言ってたんです。そのたびに『それ、おもろい?』って」
西口直人(ベース)「ははは。俺はあんま言われてないけど」
清水「俺アホみたいに言われた(笑)。だからこそ次第に離れていったし、まずRY0N4(リョウナ)の、俺らにとってのプロデューサーの起用にも繋がっていったと思う」
RY0N4くんはもともと奈良の後輩バンドマン。グランジ系の音を鳴らしてましたよね。
西口「うん。そこからラッパー兼トラックメイカーになって。バンド時代も最後のほうはトラップ的な要素を入れたり、DJ入れたイベントやってたから。俺らにそういう要素を運んできてくれたのがRY0N4だった」
彼の名前がクレジットに入ってくるのが「HIGH WAY BEACH」(2020年リリース)以降。ロックバンドが作詞で外部の手を借りるって、あまり聞かない話です。
清水「しかも特定のひとりだけっていうの、ない話ですよね。理由としてはヒップホップが明らかに一世を風靡してたから。海外では完全に主流やったし、そのあとコロナ禍が来てみんな家にこもっちゃって、ライヴの臨場感がなくなるのはバンドにとってけっこう危機やった。そういう最中だったからこそ自分たちが今から何ができるんだろうって考えたし、ライヴハウスにいる自分たちの視野の狭さにも気づいた」
そこから、みなさんは一気にクラブカルチャーと接触していく。鮮やかな変化でした。
西口「遡ったらね、Dragon Ashとか、クラブと繋がるムーヴメントってもちろんあったと思うんです。ただ俺らの時代、それこそグランジ的なギターの音と接続し始めたラッパー、リル・ピープが出てきたのが大きくて。そこにRY0N4も俺らも魅力を感じたし、自然に惹かれていきましたね」
清水「面白さがバンドを超えてましたね。リル・ピープのサウンド、MVとかストーリーも含めて。現に一番パンクしてるのこいつらやな、みたいな」
増子央人(ドラム)「あとはTohjiとの出会いもデカい」
清水「最初はRY0N4が、お互い全然無名の時に知り合って。僕らも初期の頃から知ってたんですけど、彼のストーリーとか曲も僕らにかなり影響を与えたと思いますね」
西口「Tohjiの存在を無視してこの数年の活動なんてできないと思いますよ。すごすぎる、あいつ。スタイルを提唱していく推進力とか、はっきりと見せつけられたから。僕らが、っていうより、たぶんみんな影響受けたと思う」
いや、どうでしょう。バンド界隈でその影響を語る人、あんまり見たことない。ピュアにエモが好きっていうだけなら、別にスルーできる人もいるだろうし。
増子「あぁ。でも俺らは実際に見て、カッコいいと思っちゃったし、憧れがある。音楽とスタイルに、なるほどって思っちゃうんですよね。あそこまで突出したアーティストの動き方って、もう音楽性を超えてくるじゃないですか」
清水「俺、もはや人のライヴをただピュアな気持ちで観てられないところはある。どうやって音出してるのか、どんな間合いで次の曲に行くのか、どういうアートワークなんか、どんな服装でやってんのか。細かいことまで気になるし、悔しいっていうか、どうしても見比べてしまう。逆に言うと〈畑が違うから見比べても意味ないっしょ〉って俺は諦めたくない。もっとジャンルじゃなくて、その表現の熱量の話。俺らの世代ってそういうところまで見えやすいから。見えないとダメだし」
見えないとダメですか。
清水「うん。昔やったらMVをチェックする媒体も限られてたわけじゃないですか。誰でもいつでも見れるようになったら、そのMVの作り方も、出し方もそりゃ変わる。そこも含めて強い影響を与えていきたい。どんな人が目の前にいても、それこそロック聴いたことない人でも、何か食らわせることはできると思うし、それこそがこのバンドの存在意義でありたい」
近年はラッパーとのコラボ曲も増えてるし、今、クラブで演奏することもけっこうありますよね。
清水「けっこうしてる。2019年か、初めてクラブのイベントに出たんですよ。それは僕の友達がやってるアパレルブランドの主催で、DJもいて、バンドは俺らと踊ってばかりの国が出て。けっこう尖ったイベントやったんですよ。俺らは奈良にいながら、何人かラッパーと繋がりもできて、渋谷のクラブにはギリ遊びに行ったことはある、くらいの時期。そんな時期にイベントに出てほしいって言われて。オールナイトのイベント自体も初でしたけど。もうカルチャーショックまみれ」
増子「俺、その日のことすごく覚えてる。アルバムの『EVERYNIGHTE』は2020年ですけど、確か先行配信で〈CLOSE EYE〉をもう出してたんですよ。で、深夜2時とか3時に〈CLOSE EYE〉演奏した時の、フロアのアガり方がすごかった。モッシュみたいになってるけど、あくまで踊りの延長線でそうなってる感じ。ロックフェスでよく見る、みんな揃って手を動かしてる形じゃなくて。ただ思い思いに身体を動かして踊ってる。〈すげぇいい光景だな! こういうフロアってあるんだな!〉と思って」
清水「確かに。フェスの予定調和みたいな行動がまったく存在しなくて、それを目の当たりにした初の瞬間でしたね。俺らはそれまで完全にライヴハウスのバンドやと思ってたから、すごい意外というかショッキングな出来事やった」
あぁ。それは意識変わりますね。クラブって、チャラいか怖いか、みたいな偏見が私にもあるんだけど(苦笑)。奈良から見たらもっと遠いものかと思ってた。
清水「あ、もちろん東京ユース感みたいなもの、それまでは毛嫌いしてたけど。意外とピュアなものかもって思い直した。全員が全員俺らの曲知ってるはずもないんですよ。でも自由に踊ってる。それがなんかよかったな。同じ場所にずっといたらそのことにも気づかんかったと思う。ライヴハウスの定石から離れていくことで、セットリストとかバンドの見せ方とか、大きく変えられたと思う」
あとはマーチャンダイズの発信方法も変わった。ただバンド名の入ったTシャツを売りたいわけじゃない。生き方、着こなし方も含めて、Age Factoryのファンであることを誇ってほしい、みたいなメッセージがあって。
清水「あのね、俺が最初からずっと思ってたのって、バンド名だけのTシャツが作れるバンドは、ただバンドのロゴTだけを出してるわけじゃないってことで」
うん? どういうこと?
清水「バンドとしてのアイデンティティがないと何の意味もない。そのために何を出してきたか、今何をしてるか、次にどこ行こうとしてるかをつねに見せてないと。そこに説得力がないとバンドのロゴに意味なんてねぇだろって今も思ってる。超シンプルな白Tに俺らのロゴだけでいい、それだけでもう掲げるものがあるって言えるバンドに、今ようやくなったと思う。そうなれるようにずっと活動してきたから」
今、マーチャンダイズはメンバー3人で作ってます?
西口「基本的にはデザイナーと英介ですね」
清水「今はメインとなるデザイナーが〈0A〉にいてくれて。もともと奈良でバンドやってて、地元のライヴハウスで知り合ってる。デザインを自分からエイジに売り込んでくれたんですね。『ぜひ知ってください』って持ってきてくれた」
今日〈0A〉に来て紹介されてわかったけど、ほんと地元のバンドマン繋がりで賄ってますよね。
清水「うん。チーム作るにあたって、マネージャーとデザイナーは絶対必要やったんですよ。俺が全部自分でできることではないし、時間もないし。ただ、意思伝達する前に、自分たちの意思を自然と感じ取ってくれる人がチーム内にいないと、それって回らないんですよ。ライヴの照明もPAも作曲者も、MVもアートワークも活動場所も、全部が連動してるものでありたいし、一個だけ、たとえばマネージメントだけどっかに任せるとか、そういうことすると鮮度が落ちる」
あとは、大阪や東京の大きな会社にお金払って任せたところで何かが違ってくるだろうし。
西口「根本、友達とやりたいっていうのはある。みんなで一緒に勉強して作っていくことが重要で」
清水「ひとりではできないから、絶対的に安心できるチームが必要なんですよ。どんどん安心できるようになりたい。全部の呼吸が連動してるいち生命体でありたい。既存のものに回収されたくないし、つねに更新してたい」
この形って、DIYとは微妙に違うものですよね。
清水「DIYではないでしょうね。LOSTAGEのやってることをDIYと表現するなら間違いなく違います。俺は『同じ道を歩んではならない』って言われ続けたから。だから一番でっかいチームにした」
ドゥ・イット・アワセルブズ、というか。
清水「うん。ユナイトって言葉なんかな。共鳴やと思います」
地元チームで回しながら、こうやって武道館が売り切れるって、すげぇカッコいい夢だなって思う。
清水「そう言ってくれる人多いですね」
増子「言われても、あ、そうなんか、って感じ」
別に誇らしい気持ちにはならない?
清水「んー、夢とは思わんかな。武道館ができたからって幸せにはならないし。バンドはずーっとしんどいと思ってる。しんどいってことは何かに対してずっと頑張ろうとしてるってことで、それが僕は続けばいいと思ってる」
最後に、武道館当日に向けて思ってることは?
清水「今ツアーをライヴハウスでやってることも含めて、武道館でライヴハウスをしたいわけじゃないとは思ってる。武道館という場所でできるショウ。そういう一日を作りたい」
わりとショウアップしたものになりそう?
増子「バカ派手なエンタメにはならんけど。レーザーぼーん、火ぃぼーん、みたいなものではなくて(笑)」
清水「照明、映像、音響とか、すべてここにいる理由がある人たちに頼んでるから。全員共鳴できる人たち、やっと全ピースが揃う。で、そういう一日がその先にどんな影響を及ぼすか。それが今は楽しみだなと思ってます」
文=石井恵梨子
撮影=小田切楽

〈Age Factory presents "twilight 2026"〉
2026年11月8日(日)日本武道館
OPEN / START 17:30 / 18:30
※SOLD OUT
