【LIVE REPORT】
〈GRAPEVINE IN A LIFETIME CIRCULATOR Tour〉
2026.09.19 at EX THEATER ROPPONGI
「最後はすべてを大成功にする、こーれー!」
田中がそう言って、本編のラストに披露したのは「ふれていたい」だった。
たぶん25年前、この曲を作った頃は、まだわかってなかっただろう。何が待ってんのかも、終わらんねえ!の先に何があるのかってことも。おそらくはぼんやりとした希望でしかなく。でも今はわかる。終りがあることも、そして触れていようが狂れていようが、君が笑う、それだけが自分たちにとって確かなものだということも。

〈GRAPEVINE IN A LIFETIME CIRCULATOR Tour〉は、2001年にリリースされた4枚目のオリジナル・アルバム『Circulator』を、リリースから25周年を記念した〈リビジット・ツアー〉と称し、今、あらためて〈リビジット=再訪〉するというものである。それは、『Circulator』というアルバムを通して、あの頃と今を重ねるものになった。
とはいえ、過去を懐しむということではない。
全16公演中、この日、9月19日のEX THEATER ROPPONGIは14本目。ツアーを重ね、徐々に固まってきた様子が感じられるセットリストは、もちろん『Circulator』の楽曲が中心に置かれた構成だが、さらに「ねずみ浄土」「ドスとF」「猫行灯」「天使ちゃん」の4曲をのぞけば、そのほとんどが2001年当時の曲である。徹底してあの頃に僕たちを連れていこうとしていた。


しかし、ここ最近の音源と『Circulator』ではアプローチがかなり違う。熱量が高く、当時のバンドの状況含めシリアスな面持ちのある『Circulator』に比べて、最近のGRAPEVINEはもっと隙間があって、遊びを楽しむ余裕がある。かつユーモラス。当時の曲多め、最近のは4曲というのは、それが理由でもあるのだろう。しかし演奏が圧倒的に成長して、曲にメリハリがついていたし、何より最近の4曲が持つサウンドへのアプローチは、驚くほど25年前の曲たちと馴染んでいた。
それはこのバンドがつねに音楽的に面白いものを探求し、ジャンルに拘らず、バンドとして形にしてきたことが大きい。25年前、『Circulator』を引っ提げた全国ツアー〈Whitewood 2001〉からサポートに加わった金戸覚(ベース)と高野勲(キーボード)と共に、ライヴと作品を形にしてきた。つまりこのツアーは、5人で歩んできた道のりを再確認し、振り返るものでもある。そこから起こる化学反応が、このバンドを古臭くしなかった。音楽に貪欲にさせた。西原誠が休養し、バンドの方向性が見えなくなったあの頃からこの日まで、『Circulator』の曲たちは、この5人のバンドの成長を映し出していた。


この日の会場をびっしり埋めた客層も、田中が年齢層もイジる場面もあったが、そんなことはなく幅広い。これまでと比べ拳もよく上がっていて(笑)、若い客層も増えた感じがある。だがそういう客席を見る目はおそらく、ああ変わっとらんなあ、君らも俺らも、という感じの優しさがあった。
先ほど書いたように、ベースにある音楽性は変わらずとも、どんなバンドと形容しにくいオリジナリティを持つようになったのは確かだ。田中が右手にマイク、左手にハープを持って、十字架に磔られたようなポーズを見せた「天使ちゃん」や、「ドスとF」などは、これまでとはぜんぜん違うオリジナリティを持つ。それでいて、超久々に聴いた「波音」や「フィギュア」などが、まったく色褪せない、というか新鮮さすらあるのは、このバンドがずっと長年かけて音楽を自分たちなりに咀嚼してきたからなのだろう。


アンコールのラストはアル・クーパーのカヴァー「Where Were You When I Needed You」だった。この叙情的なソウルの名曲は、〈Whitewood 2001〉の後半、毎晩呑んで、5人の距離がかなり近づいた頃、高野からの提案でセットリストに追加されたものだ。辛い時に違う男のもとに去っていった恋人が戻ってきて、僕があれほど苦しんでいた時、君はどこにいたんだい?と問いかける、当てこすりのような男の歌。誰よりも好きだったからこそのつぶやき。当時、この曲を聴いた時は、バンドの状況が重なって、えらく心がヒリヒリと傷んだものだ(ちなみにこの曲が収録されているアル・クーパーのアルバムは『Naked Songs』。先日『Circulator』の特装盤にも収められたこのツアーのライヴ・アルバムのタイトルは、おそらくそこから取られた)。
僕が必要としてた時、きみはどこにいた?
寂しい独白のようにも聴こえたこの歌が、今は、あの時の君はどこにいた?と確かめるように響いてくる。バンドもメンバーもファンのひとりひとりも、同じように歳を重ねながら25年間、ずっとここにいた。あの頃を知らない若いファンも、きっと同じように歳を重ね、それが続いていく。ずっとずっと。永遠は望みの中でしか手にすることはできないが、ゆえに純粋な形をしている。25年前の彼らとそれに夢中だった自分の姿、そこに少し成長したかもしれない部分と、何も変わっていない部分を見つける。そんな姿に〈リビジット〉して、僕たちはこれがずっと続くことを願い、永遠にふれた、そんな気がするのだ。
この日はメジャーデビュー29周年。ニクー!と田中が何度も叫んでいたが、当然、来年は30周年。そんな永遠はずっと続いていく。
文=金光裕史
写真=藤井拓


- Buster Bluster
- きみが嫌い
- B.D.S.
- 風待ち
- ねずみ浄土
- Our Song
- lamb
- 壁の星
- フィギュア
- ドスとF
- 波音
- パブロフドッグとハムスター
- アルカイック
- SO.
- 猫行燈
- 天使ちゃん
- discord
- (All the young)Yellow
- ふれていたい
ENCORE
- I found the girl
- その日、三十度以上
- HEAD
- Where were you when I needed you(Al Kooper cover)
〈GRAPEVINE SPRING TOUR〉
2027年3月27日(土) 仙台・仙台電力ホール
2027年4月18日(日) 福岡・福岡市民ホール 中ホール
2027年4月28日(水) 東京・LINE CUBE SHIBUYA
2027年4月29日(木・祝) 東京・LINE CUBE SHIBUYA
2027年5月5日(水・祝) 名古屋・Niterra日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
2027年5月9日(日) 大阪・NHK大阪ホール
