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  • #ライヴレポート

【Archive/Live Report】キズ/音楽と人2025年3月号

text by 樋口靖幸

キズ 単独公演 “焔”
2025年1月6日 at 日本武道館


(これは『音楽と人』2025年3月号に掲載された記事です)



ダブルアンコールで迎えたエンディング。絶え間ない歓声と拍手の中で、白塗りの男たちが泣いていた。1人ずつその様子がスクリーンに投影される中、天を仰いで涙を堪えようとするフロントマン、来夢の表情に目が止まる。ここまで無防備でイノセントな彼を見たのは初めてだ。でも、そんな生身の姿を人前に晒してしまうのも仕方がないのかもしれない。この日、彼は初めてステージで言いたいことをちゃんと口にすることができたからだ。キズというバンドを組んで以来、言葉にしたくても言えずに抱えてきた思い。バンド始動から8年、2時間のステージで駆け抜けた彼らの武道館初ワンマンは、彼にとって思いがけないセリフを口にする一夜だった。


公演日は世間的に年始明け、仕事始めの月曜日。エンタメ業界的には厄日みたいなカレンダーとも言えるだろう。そんな日に平然と武道館を押さえてしまうのも逆張りを好む彼ららしい。ゆえに開催発表後も派手なプロモーションや煽りもナシ。そういえば去年本誌初となったインタビューでも、来夢はロックの聖地に対する憧れを口にしつつも「もう他に武道館しかやれるところがなかったから」と嘯いていた。そんな彼らが武道館だからといって、メモリアルなライヴをする気がないのはわかっていた。むしろ、いつもの通りの自分たちをどこまで貫き通せるのか。それがこの単独公演の見どころだと思っていた。


仰々しいSEからの「ストロベリー・ブルー」。こちらの不意を突くようなオープニングに続けて「傷痕」を投下すると、さっそく客席との距離を過激なパフォーマンスで詰めてくる。さらに「人間失格」や「蛙-Kawazu-」で暴走する4人。烈火のごとくぶち上がる彼らと、それに負けじと食らいつくファンとの壮絶なやりとりがすさまじい。彼らにとってはいつも通りの景色だが、ステージと客席の距離感を埋めようとする切迫した思いが双方から感じられる。しかし短いMCを挟んで披露された「銃声」では、安易な共感を拒絶するかのように、来夢は物悲しい歌声を会場に響かせる。そこには親近感もなければ手を差し伸べてくれそうな優しさも見つからない。ファンに寄り添ったり、甘い言葉をかけることなどもってのほかと、突き放すような冷たさをまとっていた。そう、今まで彼はそうやってこのバンドを続けてきた。もちろん武道館でもそのスタンスを変えるつもりはない、ということなのか。それが単なる痩せ我慢だとわかっていても。


安易な共感は無用。軽い気持ちで好かれてたまるか。そうやって彼がキズというバンドで求めたのは、絶対的な繋がりだった。キズの音楽がイビツで不穏な形をしているのは、その音楽の迷宮の中から本当の自分を見つけてほしいから。どこまで俺という人間についてこれるか。いつまでも俺のことを愛せるのか。や、そんなことは不可能なのかもしれない。どうせ愛なんて不確かなものだ。でも、どうしても諦めることができない。いつか見つけられるんじゃないか。そんな形のないものを探す旅は、シラフでできることじゃない。仮面の代わりに白く顔を塗り、衣装をまとって武装した。それが彼にとっての音楽であり、キズというバンドで唄う理由なのだ。


ライヴ中盤。〈まだ愛してる〉と繰り返す「鬼」を唄う来夢の姿にオーディエンスは釘づけだ。不器用にしか人を愛せない自分の不甲斐なさを呪った歌。これまでも彼はこっそりと愛をテーマにした曲を書いてきたものの、昨年リリースしたこの曲ほどハッキリと彼が愛を唄ったことはない。もともと彼はライヴでも本当に言いたいことは何ひとつ言えない奴だった。「嬉しい」や「ありがとう」という当たり前の気持ちも言葉にできず、ステージで身悶えする彼を何度も見てきた。それを言葉にした途端、その思いがどこかへ消えてしまう怖さがあったのだ。


バラードの「My Bitch」、そして「0」「リトルガールは病んでいる。」「おしまい」と勢いよくたたみかけ、本編の幕があっという間に閉じる。そして新曲「R/E/D/」を初披露したアンコールを経てから、三度の登場となるダブルアンコール。ラストの「黒い雨」を唄いながら、抑えきれない気持ちを吐き出すように、ついに彼はこう叫んだ――「愛してます」。


「黒い雨」は彼が曖昧な表現に逃げることなく自分の気持ちをそのまま綴った曲であることをリリース当時のインタビューで語っていたが、その曲とともに彼は思いを言葉にすることができたのだ。そういえばアンコールの時も「ありがとう」という言葉を繰り返していた。ありがとう、愛してる。そんな当たり前のセリフを、ようやく彼は口にすることができたこの日。まさか本人もそのために武道館という舞台が用意されていたとは思ってなかっただろう。でも、そうなることが予め運命として決まっていたかのように、武道館は終始、愛の交歓で埋め尽くされていたのだった。



文=樋口靖幸




NEW LIVE DVD
『キズ 単独公演「焔」2025.1.6 日本武道館』
2025.04.09 RELEASE

【完全生産限定盤】DMGD-042/043 [DVD+CD] ¥18,000(tax in)
*オリジナルBOX仕様
*ランダム裏ジャケット(全4種より1種封入)
*フォトブックレット60P
*動画配信視聴コード封入(メンバー副音声ライブ映像/期間限定) 詳細はコチラ
【通常盤】 DMGD-044/045 [DVD+CD] ¥7,700(tax in)

[DISC-1 DVD]
キズ 単独公演「焔」2025.1.6 日本武道館
01.ストロベリー・ブルー
02.傷痕
03.人間失格
04.蛙-Kawazu-
05.銃声
06.地獄
07.鬼
08.平成
09.My Bitch
10.0
11.リトルガールは病んでいる。
12.おしまい
13.R/E/D/
14.鳩
15.豚
16.雨男
17.ミルク
18.黒い雨

[DISC-2 CD]
SINGLE「R/E/D/」
01.R/E/D/

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キズ オフィシャルサイト

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