20年やってきたことで確立したアイデンティティや自信もあるけど〈次はこうきたか〉って驚かせたい
さて、ダイちゃんの乗ってるタクシーが到着した模様です。
金澤「はい、ここで大丈夫で〜す。あ、領収書お願いします」
山内「……ダイちゃん、そこってどこ?」
金澤「今着きました。下にいますよ」
なんか後ろの景色が違うような……。
山内「そこ、ロッキング・オンじゃないの?(笑)」
金澤「違いますよ。ちゃんとタクシーで……ブツッ(通話が切れる)」
……20周年最初の取材がこんなんで大丈夫なのか?(笑)。
マネージャー「すみません、六番町(ソニーの社屋)に行っちゃったらしいです(笑)」
一同「あははははは!」
山内「ホンマおもろいなー。あ、ダイちゃん戻ってきた」
金澤「すみません、今ソニーの受付にいます(笑)」
ダイちゃんもこのままリモートでやりましょう。それにしてもすごいな。3人で取材するはずだったのに、たどり着いたのがソウくんだけっていう(笑)。
山内「2人の足並みが揃ってますね(笑)」
金澤「あえて揃えたんですよ(笑)」
インタビューを再開します。会えない時期を経て、フジファブリックは「光あれ」という曲を出しました。当時ソウくんは「城ホールで自分の夢をひとつ叶えたから、ここからはみんなのために歌を書いていきたい」と話してて、その気持ちが込められている曲だなと。
山内「おこがましいかもしれないけど、僕らがみんなを導いていけるような音楽をやりたいと思ったんです。みんなの道を照らすようなもの。そしたら世の中がコロナになって、そことリンクしてしまった曲でもあり」
その次に出たのが「楽園」。
山内「ダイちゃんがいい曲書いてきてビックリしました」
当時ダイちゃんは「自分のダークサイドをもっと出したいという思いから〈楽園〉ができた」と語ってました。
金澤「それまで僕ってキラキラしたイメージの曲を出してきたと思うんですけど、もっと感情の深い部分に触れるようなものができたと思います」
どちらの曲もフジファブリックとしては新境地で。
山内「とにかく挑戦し続けてる感じで。それが『I Love You』っていうアルバムに繋がるんですけど」
あのアルバムにも驚かされました。ちなみに20年一緒にバンドをやってきて、3人の関係性はどう変わってきたと思います?
山内「表立った違いはそんなにないんですけど、それぞれの生活みたいなものが音楽に出るようになったというか、日頃各々が感じてることが楽曲とか歌詞で素直に出せるようになってきてるぶん、より僕らの絆も深まってる感じがします」
マネージャー「お話中すみません……金澤から『充電が切れそうだから充電器が欲しい』と連絡がありまして、今会社の総務の人が対応しています」
せっかくのいい話が台無しです!(笑)。
山内「まぁまぁ(笑)。でも3人の絆はより強固になってると思いますよ。3人それぞれの生活とか日常があって、その延長線上に音楽があるっていう……そういう日常の中の音楽だなっていうのを、2人が作る曲から感じることが最近多いので」
もしかしたら次のアルバムって、日常がテーマ?
山内「これはアルバムの取材でちゃんと話したいんですけど、みなさんフジファブリックが普通のバンドやと思わんといてください」
どういうこと?
山内「みなさんが考える日常と、僕たちの日常はたぶん違うんですよ。そんなフジファブリックの日常が、1曲目から最後まで詰まってるアルバム」
フジファブリックの日常ってどんなだろう? ……あ、ダイちゃんが復活してます。
金澤「充電器貸してもらいました(笑)。あの、いい意味で背伸びしてない感じのアルバムだと思います。例えば山内くんが今まで見てきたものとか聴いてきた音楽が自然に反映されてたり。すごく自然な感じ」
加藤さんは?
加藤「無理をして作った感じがないというか。20年の活動と地続きでできたもの、みたいなものだと思います」
肩に力を入れず、リラックスしてるアルバムだと。
山内「ダイちゃんや加藤さんも言ってたけど、確かに背伸びも無理もしてないっていうのはそのとおりで。例えばどこにいるのかわからない聴き手に対してへりくだったり、逆に抗ってみたりとか、そういうことにはなってなくて。僕らには20年やってきたことで確立されたアイデンティティがあって、そこに対する自信もあるし、でも〈次はこうきたか〉って驚かせたい部分もある。そういう意味で肩肘の張らない、リラックスしたものになってるんじゃないかな」
だとしたら『I Love You』とはまた違うアルバムになりそうですね。
山内「もちろん。あの、リラックスはしてるんだけど、いざレコーディングってなるとダイちゃんも加藤さんも僕の想像を超えてくるようなフレーズで勝負してくるんですよ。やっぱりこの2人も人生を賭けてバンドをやってるんだなって」
完成を楽しみに待ってます。あと、今日の取材のリベンジをちゃんとしたいですね(笑)。
山内「周年の話をするのは今日が初めてだったし、アルバムのこともチラッと話す取材になると思ってたのに、まさかの事態で(笑)。でも、こういうところもフジファブリックっぽくていいなって思いますけど」
金澤「編集部、行きたかったな〜」
加藤「行きたかったね」
山内「めっちゃオシャレだよ、編集部」
次回はぜひ3人で!
文=樋口靖幸
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