NITRODAYのヴォーカル&ギター小室ぺいが、自身が気になったものを独自の視点で調査&分析し、文章に綴っていくWEB連載。20歳を迎えて、ふとした時にぺいが感じた素直な思いについて。
#11「好きな場所」
2月。先月は、なんとか1日、1日大事にやれた。でも最近はちょっとしんどい。せっかく二十歳になっていい調子だと思ってたのに、またこの日々は指の間をすり抜けていってしまうのか。みんなの声が遠く、胸がきつく狭められる。この寂しい気持ちは冬の夜の空を見上げるみたいで、はるかかなたにある星のことを思ったら、ここにいるちっぽけな人間がどうして生きてるかなんてどうでもいいと感じることもある。それはたぶん良くないことだ。理由はわからない。実際、自分が思うかっこいい人たちはみんな真っ直ぐ前方を見つめてるようにみえる。僕もそうなりたい。目は逸らさない、逃げない、それが大人になるってことか。そのための努力を一からしていきたい。思ってることは全部話したい。話されたい。頑張る、しかないのだ。とは言ったけどここに書くべきことは今はない。心配無用(してくれたら嬉しいケド……)。
青って好きな色だな。なんでか心が落ち着いた気になる。青って言ったら何だ。海とか、空とか、自然の中にあって、でもそれって単調なカラーじゃなくて、クレヨンで塗っていったみたいな色の濃淡があって、それが季節だなあとか思う。僕が高校生の時に住んでた家は、神奈川県の茅ヶ崎ってところにあって、そこからは海が近かった。夏は遊びにきた人で溢れてるけど、反対に冬にはほとんど誰もいない。地元の人がぽつりぽつりくらいだ。だから学校から帰ってきてなんとなくまだ家に帰りたくないなって時はちょっと寄り道する。やわらかい砂の上はスニーカーじゃ歩きにくい。寝転ぶと星がたくさん見えて、波の音は近くで聞くとすっごくでかい。叫んだくらいじゃ届かない、自分の声が響くよりも先に吸い込まれていって、それはバンドに合わせて歌う時と同じだった。だからよく歌の練習をそこでしてたり。最近は海、行けてないなあ。
あ、でもこないだいいところを見つけた。僕は歩くのが好きで、よく頭の中が煮詰まってどうにかなりそうだって時は歩いたりしている。大方いく当てはない。家を出て、左に進もうか、右に進もうか、なんとなく風に任せていくのだ。その時は確かかなり歩いてて、気づいたら公園に着いていた。初めてくるところだ。結構大きくて、夜だったからかほとんど人気はなかった。中へ入ると長い階段があったから登ってみた。上までたどり着いたらなんとそこは丘だった! なぜか嬉しかった。丘なんて今まで生きてきてあんまり見たことなかったし。正直、村下孝蔵氏の歌詞の中に出てくるイメージしかなかった。そこに草笛の音は響かないけど、なんだか懐かしいような景色が広がっていた(ところで村下孝蔵氏は僕が生まれる少し前に他界してしまっている。とても会いたかった、話してみたかった)。
更にそこから少し奥に進むと木の椅子がちょこんとあるだけの広場があって、周りは林で。いい場所だった。好きな場所では本当の気持ちになれる。そこでしばらくまた曲を作ったり、歌の練習をしてた。途中で散歩中のワンコがやってきた。ちっちゃくて元気なやつだった。かわいかった。僕は猫が好きだけど、猫と遊んでたら鼻水とくしゃみが止まんないってことがあった。そっかー、なかなかうまくいかないもんだー。でもそんなに気にしてない。
これからもお気に入りの場所で、自分の言葉に正面から向き合いたいと思っているある日の夜明け前だった。
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Information
ミニアルバム『少年たちの予感』が発売中。
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