【LIVE REPORT】
9mm Parabellum Bullet presents「カオスの百年 vol.22」
2026.09.06 at 昭和女子大学人見記念講堂
「最初からめちゃくちゃ演奏が合う人たちと新しいバンドを組んだ感覚」
「強力なロックンロールバンドになった感覚です」
本誌10月号に掲載されている菅原卓郎の発言である。滝 善充がドラムに転向した3人編成9mm Parabellum Bulletのことだ。
9月9日から始まる全24本のツアーの前哨戦となる〈カオスの百年 vol.22〉は、フレッシュな3人編成と、サポートメンバーを入れた5人編成、違う形態での2部構成ライヴである。今回のツアーは日によって3人編成か5人編成での公演となる。どちらか一方へ移行するための過渡期ではなく、今後は3人編成と5人編成、その両軸で9mm Parabellum Bulletを見せていく。その意思をライヴそのもので提示する一夜となった。
お馴染みのSE、アタリ・ティーンエイジ・ライオットの爆音から始まるステージ。まず登場した3人編成9mmは、一発目にいきなり新曲「レーゾン・デートル」を投下。これだけで気合いも心意気も十分伝わってくる。ギターの同期音源などを取り入れながらも、ステージ上にいるのは3人だけ。そのシンプルな佇まいによって、これまで以上に一人ひとりのプレイが露出する。まず気づくのは音像がパンク化していること。極めて野生的な滝のドラムを筆頭に、タメない、焦らさない、思っていることがそのまま音になる素っ裸のロックンロールがある。

裸だからよくわかる。ロックンロールと書いてみたものの、このバンドはそもそも骨格がかなり変である。日本でなければ生まれていない歌謡曲調メロディと、やたら悲劇的な歌詞世界。〈リズム&演歌〉と書いてしまえば怒髪天になるが、サブちゃん的な漢気で突き進む先輩とは違い、卓郎の歌声は妙にたおやか、悲劇に翻弄されるヒロインのような女性性が強い。だがそのことを本人が楽しみ、むしろ〈歌の世界で主人公には酷い目に遭ってもらいましょう〉と笑う余裕すら持っているため、ファンは安心して〈そういうファンタジー〉に浸ることができた。音像はかなりワイルドなロックンロールなのに、である。

3人編成9mmは事実と虚構がないまぜになるのが面白い。特にいいのは音圧で勝負しないしっぽり系の曲で〈君がそばにいるなら 夏がまだ続くから〉〈終わらせるだなんて できない〉と唄いあげる「夏が続くから」はまさに今の3人の物語。「黒い森の旅人」ではイントロの同期に柔らかなピアノまでが入ってきて(10年以上も前に滝が弾いたものが今になって発掘されたそうだ)、たとえ骨だけになってもこのバンドを終わらせたくない3人の意地を、優しく抱きしめているようだった。

ドラマは続く。後半、真紅の照明に包まれた「叫び-The Freedom You Need-」はまさに見せ場の連続で、生き抜く覚悟を唄う卓郎は過去の自分が作った物語を全身で受け止めるヒーローになっている。和彦の絶叫がさらなる嵐を呼び込む。滝のビートは命の炎そのもの。もうこれは〈そういうファンタジー〉ではなく〈応援するしかないリアリティー〉と言うしかない。こんなにも変で過剰な、言い換えれば世界のどこにも替えがいないバンドに対する圧倒的なプライドを感じた。

20分の休憩を挟んで再びアタリ・ティーンエイジ・ライオット。続いてはドラムにロッキーこと渡部宏生(heaven in her arms / SZKN)、ギターにお馴染み武田将幸(HERE)を加えた5人編成だ。当たり前だがステージの密度が違う。上から見れば〈△〉だったフォーメーションが〈M〉に変わっている。図形とアルファベットを同じ土俵で比べても仕方がなく、そもそもドレスコードとマナーが違う感じだ。最初に出てきた3人編成が生身のドラマを見せているのなら、こちらは戦隊モノのような、数が揃うことでピシッと決まる形の美学を見せている。

ドラム以外、弦楽器隊4人の自由度が違う。演奏しながら自由に動き、距離が近づいたメンバーとはがっぷり4つで向き合い、高々とネックを掲げ、ブレイクでは思い切りそれを振り下ろす。全員が同じポーズを決めてみせるのは、アホっぽさと紙一重ではあるが、まさにロックバンドの大定番。滝と卓郎がお立ち台からコテコテなツインギターソロを放つのも〈そうこなくっちゃ!〉のカタルシスだ。そして何より、5人の音がゴゴゴゴゴーッ!と迫り来るメタル的重厚感。

数で押す横綱相撲の9mmと、新しく組んだロックンロール・バンドの9mm。アウトプットが2つあるのだ。日によってどちらも楽しめるのは強みでしかないし、好きなものばかり飽きずに煮込み、いささか煮詰まりかけていたところに、やたら新鮮な風穴が開いたような感覚も生まれている。3人編成だからできることがあり、5人編成だからできることがある。同じ楽曲であっても、編成が変われば聴こえ方は変わる。その違い自体を新しい武器として提示していくことが、現在の9mm Parabellum Bulletのスタンスなのだ。
本編ラストは一発目と同じ、本日2回目の「レーゾン・デートル」。卓郎と滝が〈正面突破で突っ込んで!〉と声を張り上げる姿に、もうなんだかゲラゲラ笑いたい気分になっていた。強い。そして頼もしい。もしかして今の9mm、一番面白いんじゃないか。
文=石井恵梨子
写真=タカギユウスケ

【SETLIST】
■3人編成
1.レーゾン・デートル
2.Discommunication
3.Keyword
4.夏が続くから
5.黒い森の旅人
6.キャンドルの灯を
7.Lovecall From The World
8.Supernova
9.叫び -The Freedom You Need-
10.The Silence
■5人編成
1.ロング・グッドバイ
2.新しい光
3.Sleepwalk
4.Black Market Blues
5.光の雨が降る夜に
6.The World
7.Answer And Answer
8.Brand New Day
9.Talking Machine
10.レーゾン・デートル
