【LIVE REPORT】
仲村宗悟 presents X OVER × パスピエ
2026.08.30 at 恵比寿・The Garden Hall
仲村宗悟とパスピエによる対バンイベント――しかも、外部の企画ではなく、仲村宗悟プレゼンツ。事情を知らない人からすると、〈どうしてこの組み合わせに……?〉と思ったことだろう。なぜなら2組の活動のフィールドが、あまりに違うからだ。しかし、宗悟とパスピエのヴォーカル・大胡田なつきが専門学校時代からの友人だと知り、納得。旧交を温めるイベントになるんだろうか。そう予想していたが、今思えば、それでも想像力は足りていなかった。実際にステージを目にしたことで、この対バンがどんな意味を含んだものなのか深く理解し、感動すらした。
友人同士による対バンは珍しくない。今回もそう見られていたはず。しかし、繰り返しになるが、これはまだ互いに何者でもなかった学生時代からの仲間による対バン。つまり、当時から互いを認め合っていた者同士が長い年月を経て、同じステージに立つのである。会場に入った時から居心地のよさを感じていたが、その理由はここにあった。この日、パスピエのライヴを初めて観る人も多かっただろう。しかし、恵比寿ガーデンホールは、スタート前からあらゆる意味で〈ホーム〉だった。フロアの仲村宗悟グッズ着用率の高さから、宗悟ファンが多いことはわかっていたが、パスピエのステージに対してもふんわりとした温かさ、安心感、そして敬意が向けられていた。おそらく、パスピエの面々もやりやすかったはずだ。

実際、パスピエのステージは最初から最後までまったく隙がなく、それでいて温かかった。4人の楽器隊が鳴らす音すべての粒立ちがよく、成田ハネダ(キーボード)を中心に、それぞれがどう絡み合ってひとつの楽曲を作り上げていくのか、細部まで堪能できたのはまさに至福。余計な味付けをしない、各楽器の音に忠実なサウンドは、70、80年代のロックを見ているかのような錯覚を起こした。決して圧を感じさせない佇まいで、ものすごい演奏をかます。大胡田のパフォーマンスもその当時のシーンのカリスマシンガーを彷彿とさせるように、優雅に舞い、唄う姿が美しい。彼女のポジティヴな歌声は、自然とフロアに沁みていった。
そんな彼女らのパフォーマンスを、観客は長めの拍手で称える。フロアのあちこちで揺れるペンライトに対する「光るグッズ、宗悟のヤツですか?」という大胡田の第一声に、すかさず成田が「〈宗悟〉って呼び捨てにして、(ファンに対して)角が立たないか?」と焦り気味にカットイン。しかし大胡田は、18歳の時に上京して通い始めたミュージックスクールの同期だから、宗悟呼びを許してほしいと穏やかに言った。当然、わざわざそんなお願いをする必要はないくらい、フロアは仕上がっていた。その後、学生時代の沖縄訛りバリバリだった頃の宗悟のモノマネで、大胡田は宗悟ファンの心をさらにガッツリ掴むのだった。
続いて登場した仲村宗悟は、友人の前でパフォーマンスするという興奮と気負いがいい具合に混ざりあい、これまで観てきた中で一番の内容になった。〈今の俺がやってることはこれなんだ〉と大胡田に対して胸を張るような「Oh No!!」から、男臭くもカラッとした太陽のようなパフォーマンスを展開。そんな彼を支えるのは、ゴリっとしたサウンドの塊を放つ4人のバンドメンバー。久しぶりのフルバンドセットが、演奏の熱をさらに高めた。


意外だったのは、1曲目が終わっただけなのにMCに入ったこと。先ほど、上京当時のエピソードを暴露した大胡田に苦笑いで苦言を呈しつつも、「時は戻らないけど重なるんだ。着実に重ねてるんだなあ」と今回の対バンについて、熱っぽくも感慨深く語る。初っ端からギアが入っていることは伝わった。様子見なんて一切しない。実は、このMCは機材トラブルによる臨時の対応だったようだが、そんなふうには見えなかったし、ここでフロアにひと言伝えることには大きな意味があった。対バンならではの気合いが感じられるが、今日の相手は旧友ということもあり、ほどよく肩の力が抜けている。何より、歌がよかった。『音楽と人』8月号のインタビューでも歌唱法を変えたことを話していたが、呼吸を意識的にコントロールしたことにより、声の安定感と迫力が明らかに増していた。自信が漲っていた。ステージ運びにも無駄がなく、スムーズ。観客の興奮度も高く、「ナチュラル」での一体感はこの日のピークだったように思う。

パワフル、かつキレのあるダンスで魅せた「ハンドメイド」もよかったが、この日のハイライトはアンコール。ここでは、宗悟が作曲、大胡田が作詞という座組で共作した「無色透明のモーメント」を初披露した。東京に出てきたばかりの〈無色透明〉だった頃からここまでの自分たちの流れについて書いたこの曲は、〈この瞬間を見てほしくて〉と願いを込めて書かれたもの。両者のストーリーを知っている今、2人がステージ上で真正面から向き合って唄いはじめるところから心が揺さぶられた。
この企画には大きな意味があった。それは、仲村宗悟と大胡田なつきという2人のミュージシャンは、現在の両者の活躍を見るかぎり、プロになる前からその素質があり、人間的にもいいヤツだったということを互いに証明してくれたことだ。筆者が普段から思っていることがある。日々の生活を送っているとつい忘れがちだが、人という存在は、「この人はたしかにそこにいた」と言ってくれる人がいて初めて成立するもの。この2人は公の場でそれをやってくれた。それが両者のファンにとってどれだけうれしかったか。
最後に、2人はそれぞれこんなことを言っていた。「あの時、何者でもなかった俺たちを(今こうして)見てくれる人がこんなにいることはすごいよ」「こんなファンが宗悟についてくれてて私はうれしい」。この日集まった観客は、音楽を通じて彼らの人生までも感じ取り、胸がいっぱいになったはずだ。
文=阿刀“DA”大志
写真=遥南 碧

【SETLIST】
■パスピエ
- 最終電車
- SYNTHESIZE
- GOKKO
- トロイメライ
- とおりゃんせ
- まだら
- U.N.O
- メケメケ
- シネマ
- トキノワ
■仲村宗悟
- Oh No!!
- bug
- Craving
- imitation
- don’t disturb me
- マーメイド
- NOTE
- ナチュラル
- ハンドメイド
- WINNER
- JUMP
アンコール
■仲村宗悟 feat. 大胡田なつき
- 無色透明のモーメント
SETLIST PLAYLIST ※新曲はリリース後追加予定
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