「二度目のファーストアルバムみたいな作品」と語っていたように、ミクスチャーサウンドに自身の在り方を見出し、その音楽性を明確化させたNovel Core の最新アルバム『PERFECTLY DEFECTiVE』。ハウスバンド・THE WILL RABBITSとともに作り上げた本作を携えたツアーのファイナルが6月26日豊洲PITで行われた。そこには、バンドメンバーやファンとより密にコミュニケーションをとり、さまざまなトライ&エラーを重ねてきた彼が目指していた幸せなライヴ空間が広がっていた。
そしてこの日、〈ミクスチャー・フロア〉と称したゾーニングを導入したNovel Core。フロアを4つのゾーンに分け、行き来自由にしたこの試みは、彼が今、〈ミクスチャー〉という名の元に表現したいことにも通じるものと言えるだろう。そこでツアーの手応えと〈ミクスチャー・フロア構想〉についてじっくり話を聞いた今回のインタビュー。Novel Coreが音楽を通して目指す世界は、どんなものなのか。改めて彼の現在地を確認する対話となった。
ツアー初日に「5年後に東京ドームに立つ」と宣言し、ファイナルのステージでは、「ドームライヴは目標でも約束でもなく、予定である」と語った彼の挑戦はまだまだ続く。その行く末をこれからもしっかりと追いかけていく。
今回のツアー、初日とファイナルの2公演を観させていただきましたが、ここ数年のトライ&エラーを経て、パフォーマンスにしても、フロアの雰囲気にしても、Coreさんが目指していたものに確実に近づくことができたのかなと感じましたが、ご自身としてはいかがですか?
「そうですね。これまでトライしてきたことをもう一段階前に推し進めて、それが思っていた以上に形になったし、最終公演のミクスチャー・フロアにしても、やった意義があったと言い切れるんで、いいツアーになったんじゃないかなと思ってます」

〈PERFECTLY DEFECTiVE TOUR 2026〉福岡、名古屋のフロアの様子

ファイナルの豊洲PITでは、ミクスチャー・フロアと称して、フロアを4つのゾーンに分けられていました。
「はい。ロックフェスとかをきっかけに、サークル・モッシュだったりダイヴだったり、そういう楽しみ方に慣れている人たちも自分のライヴを観に来てくれるようになって」
豊洲でもロットングラフティーやRIZEといったバンドのTシャツを着た人たちをけっこう見かけましたね。
「それはめちゃくちゃ嬉しいことではあるし、もっとそういう人たちのも観てほしいとも思ってるんですけど、同時に、Novel Coreチームの土台を支えてくれているOUTER(註:Novel Coreのファンネーム)たちは、ダイヴとかモッシュといったライヴハウス・カルチャーに対しての耐性がない人たちがほとんどなので、そこでのハレーションが起きないようにするには、どうしたらいいか?というのが、ここ数年の課題ではあったんです」
Coreさんがデビューされた2020年というのは、コロナ禍の真っ只中で。従来のライヴの楽しみ方ができない状況がしばらく続いていたのもあり、コロナ禍におけるレギュレーションでしかライヴを体験したことがない、従来のライヴハウス文化を知らない方もOUTERの中には多くいらっしゃいそうですよね。
「まさに。ソーシャルディスタンスの観点からライヴハウスのフロアにも基本的に座席があったし、それこそ前回豊洲PITに立った時(2023年1月〈Novel Core ONEMAN LIVE -Untitled-〉)もまだ、歓声の制限とかもあったりして。そういう状況の中でライヴハウス文化を知ったOUTERたちも大勢いるし、そもそもライヴの楽しみ方って、人それぞれでいいわけじゃないですか。それぞれの楽しみ方で音楽を感じることが、一番大事だし、それを全部許容してあげたかったし、お互いの好きなものを毀損し合わないようにするにはどうしたらいいか?って、ずっと考えていて。それでゾーニングという形でエリアを分けることがベストなのかなって。ただ、〈ゾーニング〉という言葉だけを取ると、フロアを分断してしまう感じに捉えられちゃうかもしれないけど、ゾーン間の行き来が自由にできるのであれば、ライヴ中もそれぞれのペースに合わせて見る場所を選べるし、それぞれの楽しみ方ができるんじゃないかと思ったので、そういう形にさせてもらいました」


しかも、ステージに一番近い、前方フロアの真ん中に設けられた、ダイヴもモッシュも楽しめる〈アクティブゾーン〉の真横に座席指定エリアがあって。同じように〈アクティブゾーン〉を挟んで、座席指定の反対側にファミリーエリアを内包したスタンディングのセーフティゾーンが設置されていたのには、正直驚きました。
「やっぱりどうしても椅子席って後ろになりがちだし、ファミリーエリアも後方になりがちじゃないですか。座って観たいから、子供が一緒だからってステージから遠い場所で観ることになってしまうのは、なんか公平性に欠けるなって思ってたし、今回設けた各ゾーンに可能な限り差異がないようにしたかったんで、全部が最前列にあるということを前提条件として今回進めさせてもらったんです。ライヴ中のMCでも少し言わせてもらいましたけど、ゆくゆくは身長だったり、その人が持って生まれた変えようのないものによって我慢を強いられたり、逆に気を遣わなきゃいけなかったりすることもどうにかしたくて」
目の前に背の高い人がいてステージがよく見えない、とか、ライヴハウスあるある話だったりしますしね。
「そこで、〈まあそういうもんだよね〉って割り切ることも大事だとは思うんですけど、〈演者側のアプローチによってはどうにかなるんじゃないの?〉っていう漠然とした希望は捨てないでいたくて。あとライヴハウスカルチャーにおいて大事なもののひとつとして、未知のもの、未体験のものに触れられるってことがあると思うんです。ファイナルをやった豊洲PITは違いますけど、例えばZeppとか大きなライヴハウスだと、大体2階に座席があって、1階がオールスタンディングのフロアになっているじゃないですか。だから、シーティングのお客さんが至近距離でアクティヴにライヴを楽しんでる人たちを感じることってあんまりないと思うんですよ」
上から眺めることはできても。
「上からぐちゃぐちゃになってるフロアを見たら、ただ〈怖そう〉〈激しそう〉としか思えないかもしれないけど、でも真横なら、人がぐるぐる回っていたり、ハイタッチしてる様子を見て〈こんな感じで楽しんでるんだ〉とか、もし倒れ込んだ人がいたとしても、〈あ、こうやって助けてあげてるんだ〉って知ることができるわけじゃないですか。そうやって当事者としてそのカルチャーを肌で感じてもらうことで理解も高まるはずだし、結果、OUTERの中にライヴハウスカルチャーを育てることにもつながると思ったんですよね」
〈こういう楽しみ方があるんだよ〉と、ただ言葉で説明して提示するだけでなく、実感してもらうことで、伝えられるんじゃないかという思いもあったと。
「まさにそうです。観たことのないものを目にして、別にそこに混じらなくても〈なんか楽しそう!〉と感じてもらうこと自体に意味があるなというか。〈アクティブゾーン〉の子たちが、ダイヴしてフロアに戻る時に、座席指定エリアの前を通ったりするわけじゃないですか。その時に、指定席の人たちアイコンタクトであったり何かしらのコミュニケーションが起こる可能性も大いにあるし、全然違う楽しみ方をしている両者の間に、シンパシーであったり、共有する何かが生まれたら、それはすごく素敵なことだし、このうえなく美しいことだなって」

Coreさんが、ミクスチャーという言葉に自身の在り方を見出して、それを音楽として体現するようになって約1年半ほど経ちますが、自分だけでなく、お客さんの多様性も肯定したい。それが今回のゾーニングの実施にもつながっているのかなと、今の話を聞いて思いました。
「なんかアイドルとロックバンドの両方が好きです、というのを言いづらいみたいな暗黙の空気ってあるじゃないですか」
SNSでもアカウントを分けている人もいたりしますしね。
「そうそう。アイドルを追っているアカウントのタイムラインに、もうひとつのアカウントで好きだといってるロックバンドのツイートが流れてきて、『こっちのアカウントにこのツイートが流れてくるの、ウケる』みたいな投稿を見るたびに思うんですけど、アカウントを分けなきゃいけないって思わせる、今の空気感ってなんなんだろう?と思うんです。もっと言えば、年齢だったり性別だったり、人種、国籍、信仰、職種……世の中には人をカテゴリライズする要素がたくさんあるわけですけど、そういうものを全部一旦差し引いて、好きなものを『好きだ!』って、でっかい声で叫びやすい社会を作りたいんですよね。それって僕が音楽で体現したいことにも直結してるんで、とにかくそれを突き詰めたいなって」
Coreくん自身、ジャンル分けやカテゴライズという部分でずっと悩ましい思いを抱えていたわけで。
「今自分は、〈ミクスチャー〉という言葉の元に、いわゆる〈何でもアリ〉な状態を作ろうとしていますけど、〈何でもアリ〉が嫌だという人たちも絶対にいて。ロックやヒップホップやポップスの境界線がぼやけて、何が本当のロックで、何が本当のヒップホップなのか定義しづらくなっちゃうのが嫌な人たちも一定数いると思うんです。正直、その感覚は僕にはまったくフィールしないですけど、でもそういう人たちがいていいと思うし、そこは毀損したくないんですよね。ただ、これまでどのカテゴリーにもはまりきらなかった人たちが、〈あ、ここに受け皿がある! ラッキー!〉と足を踏み入れられる新しい場所を作りたいんです」
つまり選択肢を増やしたいということでもあるのかな。
「そうです。べつに今ある既存のシステムを正解だと信じている人たちに対して、『そうじゃなくて、こうしたほうが絶対にいいと思うよ』って言いたいんじゃなくて、正解の数を増やしたいだけで。だから、いいライヴをして、いい歌を唄うだけでなく、僕の曲をデカい声で唄ってくれるフロアの人たちと一緒に、もっといい景色を見に行くためにはどうすればいいのか。それをこの先も考えていきたいし、そのためのアプローチをみずからやっていかなきゃいけない時期だとも思っていますね」

あえて意地悪な質問をしますが、ゾーニングに関して、お客さんの自主性に任せればいいじゃないかという意見もあると思うんです。それに対しては、どう答えますか?
「その意見も理解できます。ただエンタメに関しては、基本的に敷居が低ければ低いほどいいと僕は思うんです。それがどんなカルチャーであれ、ハードルが低ければ低いほど、新しい出会いが生まれる可能性は増えるし、正解の数も増えるはずで。だから、できる限り接触の機会を増やすためにも、ハードルは下げたいというのがありますね。未知なるもの、自分が知らないものに接触するハードルを下げることは、すごく今の自分の中にあるテーマな気がします」
Novel Coreというアーティストが、エンターテインメントや音楽への入り口としてあったらいいなという感覚があると。
「めちゃくちゃあります。変な話、音楽を作ることって、元をたどれば、僕がカッコいいと思っているものをどうやったらみんなにもカッコいいと思ってもらえるかってことだと思うんです。自分が享受してきたいろんなカルチャーだったり、これがいいと思ったものを、自分のフィルターを通して歌にしたり、ライヴでパフォーマンスしたり。で、それに触れた人たちがカッコいいと思ってくれたら、結果的に僕がカッコいいと思っていたものを認めてもらえたことにも繋がると思うし」
自己肯定にも繋がるってことか。
「そうです。それこそ今回、ミクスチャー・フロアという前例のないものにチャレンジして成功を収めたこともそうですけど、どんなに気持ちが落ち込むことが途中あったとしても、〈俺のアイディアやヴィジョンは絶対に間違ってない〉と自分に言い聞かせられる素材になるじゃないですか。そういう成功体験の積み重ねが自己肯定にも繋がってるというか。だから今回のツアー中も不安になったり落ち込む時もありましたけど、〈絶対大丈夫〉と心のどこかで思えていたんだと思います」
改めて今回のツアーは、Coreくんにとってどんなものになりましたか?
「希望ですね、ひと言で言うと。とくにファイナルのミクスチャーフロアというのは、ファンとの共同実験であり、大きなプレゼンテーションでもあったんですけど、それが成功したというのは、プレゼンターとしてとても嬉しいことでもあるし、ほんとOUTERみんなのおかげでもあるなと思っていて。OUTERも含めたワンチームで作り上げたツアーだったんだなっていうのを改めて痛感したし、5年、10年という長いタームで見た時に、今後の成長に繋がる大きな一歩になったと思いますね」

そして秋には、今回以上に細かく全国を廻わる新たなツアー〈BLACK TiE TOUR 2026〉が始まりますが、現時点で、どういうものにしたいと考えていますか?
「秋のツアーは、今の時点で、僕たちに足りていないピースをちゃんとはめていくようなものにしていきたいと考えてます。バンドが少しビルドアップされると思うし、セットリストもだいぶ面白いものになるんじゃないかな」
初日は、福岡在住の3ピースバンド、muqueを迎えての対バン形式で行われます。
「彼らとは世代もわりと近くて、僕が思うミクスチャーにすごくハマっているバンドなんで、どんな化学反応が起きるのかすごく楽しみです。たぶん今回のツアー以上にチャレンジングな内容になるはずなので、僕自身、どうなるのかまだ正直想像がついてないんですけど、ほんと次のツアーも楽しみにしてもらえたらと思います」
これは個人的な希望ですけど、ツアー初日に宣言された5年後の東京ドームライヴの前に、アリーナをオールスタンディングにした形で、もう一度武道館をやってほしいなと。これは豊洲のファイナルを観て思ったことでもあるんですけど。
「いや、実はそれ、僕もイメージはしていて。ただ武道館は規定がすんごい厳しいので、どこまで僕のやりたいことをやらせてもらえるのかわからないですけど、今回豊洲でやったようなことが武道館で試せるなら、すごく面白いだろうなって思うし、チャレンジできるのならしてみたいなっていうのはあります。あと、ゆくゆくはNovel Core主催のフェスとかできたらいいなと思っていて」
おお、それはぜひ実現してほしいです。
「はい。来年以降に向けて、いろんなトライをするべく、すでに水面下で動いてるものもあって。それらをきちんと形にするべくめちゃくちゃ頑張るんで、今後も楽しみにしてもらえたらと思います!」
文=平林道子
写真=ハタサトシ
〈BLACK TiE TOUR 2026〉
10月15日(木)渋谷 WWW X ※2MAN SHOW /With “muque”
10月16日(金)渋谷 WWW X
10月18日(日)広島 CLUB QUATTRO
10月23日(金)長野 CLUB JUNK BOX
10月24日(土)岐阜 club-G
11月4日(水)梅田 CLUB QUATTRO
11月22日(日)渋谷 clubasia (DAY – ??? / NIGHT – ???) ※詳細は後日解禁
チケット一般発売:9月4日(金)10:00〜
7/26(日)23:59まで、オフィシャル先行(抽選)受付中!
受付URL:https://eplus.jp/novelcore/
