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怒髪天の愛されドラマー、坂詰克彦がこの日の主役! 終始笑顔に満ちた還暦記念ライヴをレポート

text by 石井恵梨子
2026年8月21日


〈LIVE REPORT〉
怒髪天 還暦上等!生涯現役スタミナ街道〈Just a sixty “中空見つめて60年”〉
2026.08.18 at 東京・荻窪TOP BEAT CLUB



メンバーそれぞれが還暦を迎える2026〜2027年。しっかり60本となる企画ライヴシリーズ〈還暦上等!生涯現役スタミナ街道〉は現在も続行中だが、中でも特別な日となるのはメンバーの誕生日。8月18日にそれを迎えるのは、界隈随一の愛されドラマー、坂さんこと坂詰克彦である。


定番SE「男祭」は〈誕生日〜、誕生日祭だよ〜〉と歌詞が入れ替わっていた。60の数字を模した赤い眼鏡、〈本日の主役〉と書かれたタスキ、赤の蝶ネクタイを装着した坂詰が登場し、「ハッピー バースデイ マン」「酒燃料爆進曲」などの宴会ソングが始まっていく。フロアはすっかり、やんややんや、めでためでたの空気。ここまでは4月に見た増子直純の誕生日ライヴと変わらない。


いや、スタートが同じだからこそ、なんだか嫌な予感があった。基本的にボケ担当というのか、増子のツッコミが入ることで初めて笑いになるツッコまれ担当の坂詰なのだ。彼ひとりを主役にすると、どう受け止めていいのかわからない微妙なトークが続く、もしくは幻のソロ曲「今夜も始まっているだろう」がおもむろに流れ出す様子しかイメージできない。それはつまり、景気よく始まったライブがグダグダになっていくだけの予想図である。……とても嫌だ。


しかし結果、そうはならなかった。やはり冴えるのは増子の名調子であり、「我が怒髪天の名ドラマー、坂詰克彦の誕生日です」から始まったMCで「一生に一回しかない還暦の日だからね!」「そんな日に、奥様とお嬢様たち、19時に羽田に着くから今日は来られないんだって。さすがだなと思った!」とイジリ倒す様子に会場は大爆笑。今日のセトリには坂詰のリクエスト曲もいくつか入っていることを解説したのち、すぐに楽曲へ。通常モードは崩れないままだ。


そんな坂詰リクエスト曲のひとつが「無職透明」。復活して間もない2003年の楽曲で、軽やかなブギに乗って無職男の気ままな生活を歌うものだ。悔しさに拳を握るわけでも、敵に向けて中指を立てるわけでもない。とりあえずなんとかなると笑って生きる。これがもしかすると坂さんの人生哲学かもしれない。続く「泣いてばっかのオマエに」や「あえて荒野をゆく君へ」も深刻ぶらずに笑い飛ばす同じトーンの楽曲。ハードコアパンクから演歌まで恐ろしく幅の広いバンドであるが、この日の怒髪天は笑顔の似合うリラックス・モードといえる。大規模なフェス出演が続く季節、100%ファンしかいない、住み慣れた街のハコでやっている安心感もあるのだろう。


だからこそ遊びもふんだんに出てくる。ド根性行進曲「アストロ球団応援歌」では、坂詰が〈飛べ!不死鳥〜!〉と決めゼリフをかましてみせる。さらにはブルースハープをクールに吹きまくり、続いても坂詰のコーラスを合図に「バガディ・ガッタ!」へと突入するのだ。なるほど、定位置から動けないドラマーをこうして主役に仕立てていくのか。坂さん主役=ボケもしくはソロ歌唱と考えていた自分を少し恥じた。怒髪天はいつものバンドセットのまま、ちゃんと坂詰に華を持たせ、しかしグダグダにならない一線をキープしている。メンバー、スタッフも込みで、長年のチームワークがなせる技である。


ファンの一体感、コーラスや振り付けまでをチームワークと言うのなら、後半に飛び出した「オトナノススメ〜還暦上等!〜」は16年前よりも今のほうがよっぽど仕上がっている名曲である。さらにバラード「ひともしごろ」がストリングスの同期を入れたスペシャル・バージョンになっていたのも聴きどころ。ただ、涙を誘うような演出は特にない。理由はおそらく、上原子友康のMCに集約されているのだろう。「ほら、増子ちゃんの時は、あぁついに還暦かぁと思ったけど。坂さんってなんか年齢とか関係ないところで生きてるから、そんなグッと来ないんだよね(笑)」


つまりはキャラの問題。還暦に向かうテーマソング「リローデッド」のあとはフロント3名が袖に消え、坂詰ドラムソロへ。せっかくの晴れ舞台、ドヤ顔でテク自慢に走ってもいいところだが、途中から本人歌唱つきでクイーンの「We Will Rock You」、さらにクラッシュの「I Fought the Law」などがワンフレーズずつ飛び出していく。こんな大ネタを使うドラムソロは聴いたことがないが、これも常にツッコまれ担当であろうとする坂さんのチャームポイントなのだろう。そこから始まるは「ヘイ!Mr.ジョーク」。コロナでなかなか会えない時期に、明らかな坂さん成分の不足を感じた増子が〈あのしょうもない冗談きかせてよ〉と歌詞を書き上げた、まさに坂詰のためのラヴソングである。


曲の途中に挿入された坂さんの〈とっておきジョーク〉は本当にしょうもなかったので割愛するが、そこから暗転、バースデイソングと共におむすび(!)で作られたケーキが登場、愛娘からのメッセージボイスが流れ出すのはちょっとした感動シーンだった。ただ、どんな環境下で録音したのか、いいことを話しているであろうその声が風の音にかき消されてよく聞こえなかった、というのも最高のツッコミどころであった。とりあえずなんとかなる。笑い飛ばして進む。そんな人生哲学をキープしたままフィナーレを迎えたこの日。後夜祭にあたる翌日公演は、ただ坂さんが好きな曲を流すDJタイム、カラオケ、テレキャス弾き語り、さらには4人アカペラから始まる怒髪天ライヴなどテンコ盛りの様子だったらしいが、ともあれ、坂詰誕生日は〈ただのオチ〉ではなく〈いいパス〉として次に繋がった。最後は来年2月、いよいよ上原子友康のバースデイ公演となる。



文=石井恵梨子


【SET LIST】

  1. ハッピー バースデイ マン
  2. 酒燃料爆進曲
  3. エリア1020
  4. 無職透明
  5. 泣いてばっかのオマエに...
  6. 無敗伝説
  7. あえて荒野をゆく君へ
  8. ビール・オア・ダイ
  9. アストロ球団応援歌
  10. 遠くの君から
  11. バカディ・ガッタ!
  12. 令和(狂)哀歌
  13. オトナノススメ〜還暦上等!〜
  14. 夕焼け町3丁目
  15. 曇りガラスのむこうに
  16. ひともしごろ
  17. ザ・リローテッド
  18. ドラムソロ 〜 ヘイ!Mr.ジョーク
  19. セバ・ナ・セバーナ




〈怒髪天 presents BAKA CLASICO 2026横浜なんちゅうか、本中華、珍中華〉
8月21日(金)神奈川県・F.A.D YOKOHAMA(ワンマン)※SOLD OUT
8月22日(土)神奈川県・F.A.D YOKOHAMA w/柳家睦とラットボーンズ(BAND SET)


〈怒髪天&フラワーカンパニーズ presents ジャンピング乾杯TOUR 2026 "オレたち足腰お達者くらぶ"〉
9月5日(土)滋賀県・U☆STONE
9月6日(日)三重県・伊勢RHYTHM
9月12日(土)青森県・弘前KEEP THE BEAT
9月13日(日)秋田県・Club SWINDLE


〈カムバック・サーモンTOUR 2026 還暦故郷遡上編~ホッチャレ歌まつり~〉
9月19日(土)北海道・留萌市中央公民館 講堂
9月20日(日)北海道・小樽 ヲタル座
9月22日(火/祝)北海道・札幌 モエレ沼公園 ガラスのピラミッド
※全公演アコースティックワンマン


〈怒髪天 presents 中京イズバーニング 2026×名古屋CLUB UPSET21周年 池下DE還暦祝ってもらいまSHOW〉
10月17日(土)愛知県・名古屋CLUB UPSET w/ピーズ ※SOLD OUT
10月18日(日)愛知県・名古屋CLUB UPSET w/ THE BOYS&GIRLS


〈ドハツの日(10・20)特別公演 2/3の純情な還暦〉
10月20日(火)愛知県・名古屋CLUB QUATTRO


〈還暦上等!生涯現役スタミナ街道 還暦RIOT "MORE FUTURE TOUR"〉
10月8日(木)東京都・町田 Live & BAR Nutty's
10月24日(土)新潟県・ GOLDEN PIGS BLACK
10月25日(日)群馬県・高崎Club JAMMER’S
10月31日(土)香川県・高松 DIME
11月1日(日)広島県・広島セカンド・クラッチ
11月3日(火/祝)福岡県・LIVE HOUSE CB
11月5日(木)兵庫県・神戸VARIT.
11月14日(土)茨城県・水戸LIGHT HOUSE
11月21日(土)宮城県・仙台darwin
to be continued…


〈怒髪天 presents 響都ノ宴 京都DE還暦祝ってもらいまSHOW〉
12月3日(木)京都府・京都磔磔(ワンマン)
12月5日(土)京都府・京都磔磔 w/柳家睦とラットボーンズ
12月6日(日)京都府・京都磔磔(ワンマン)


怒髪天 オフィシャルサイト

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