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【Archive/Interview】西川弘剛(GRAPEVINE)/音楽と人2001年8月号

text by 清水浩司
2026年7月9日


GRAPEVINEの4枚目のアルバム『Circulator』。2001年にリリースされてから今年で25周年を迎えたことを記念して、2枚組CD『Circulator + NAKED SONGS』と映像作品『GRAPEVINE LIVE 2001 “NAKED FILM and MORE”』が発売されたばかり。そして、同作の再現ツアー〈GRAPEVINE IN A LIFETIME CIRCULATOR tour〉が8月1日よりスタート。ということで『音楽と人.com』では、アルバム『Circulator』リリース前に行われた亀井亨(ドラム)、西川弘剛(ギター)のインタビューを再掲載します。今回は西川の記事をどうぞ。

(これは音楽と人2001年8月号に掲載された記事です)


西原誠の病気休養により、3人での活動を余儀なくされたグレイプバイン。一体どうなるんだ?とヤキモキしてた矢先、ついに届いたのが、彼らの新しいスタンダードになりそうな〈素〉のシングル「風待ち」、そしてニュー・アルバム『Circulator』だ。まずタイトルの感触からして、これまでと全然違う。『Lifetime』『Here』といった真摯な姿勢を軽くいなして、猛烈にアクセルを踏み込むような疾走感=サーキュレーター。なにかタガの外れたような印象。冷静さを振りきるように撒き散らされた熱量。ヴォリューム満点かつ味わいは濃厚だが、それは念の強さゆえか? やはり、という想いと共に、彼らはカオスの中にいた。カオスの中に自分たちを投げ込み、溺れてみようと試みた。

3号連続パーソナル・インタビュー、中盤戦はギタリスト・西川弘剛。のらりくらりとした言葉尻は、誠実さからくる慎重さの表れと承知の助。問題はその断面。アガリ切れない運動体の、止められないあがきの側面が垣間見える。



ついにアルバム完成しましたね。どんなもんですか?


「(前号の亀井亨インタビューを読みながら)面白いものができたなぁーと思いますね」


口裏あわせなくてもいいですっ!!


「(しかし平静→)いや、でも率直な感想ですよ。いろいろバリエーションを出したつもりで作ったし。一言で言えと言われると困るんですけど、いろんな音楽が混在してるっていうのはやりたかったことですから。ま、どっちにしても演ってるのはグレイプバインなんで、グレイプバインの枠の中のものにはなってると思いますけど」


うん、ただその枠は広がった感じですね。


「やりたいことがまた見つかって、やってる感じですか?」


まあ、このアルバムが完成するまでには、かつてないレベルでいろんなことが起こったと思うんです。例えばリーダー(西原誠)の休養であったりとか。西川さんはリーダー休養に関してはどういう意見だったんですか?


「僕は休むべきではないと思ってたんです。〈バンドを止めたくない〉っていうより〈西原くん的に休まない方がいいだろう〉っていう。休んでいる時もツラいだろうし、戻ってきてからも多分ツラいだろうから、僕はムリしてでもこのままやってった方がいいと思ったんです。ただツアーやるのも大変そうだったんで……休むっていう結論になったんですけど」


〈決まったら決まったでやるしかない〉わけですよね。それが関係しているのかどうかはわからないけど、「ふれていたい」の頃からグレイプバインって外向きモードに突入してたと思うんですが。


「まあ、西原くんの件も絡んでるでしょう。新しいことをやりたいって気持ちは常にあったんで、これをきっかけにして――っていうと悪いかもしれないけど、あまり考えを偏らせず、また白紙から始めようってところはありましたよ」


ただ〈白紙〉っていっても、「ふれていたい」以降の変化ってこれまでの動きとは違いますよね。今回は未知の領域に攻め込む感じじゃないですか。


「そういう意味では〈ふれていたい〉ってすごくいい出だしを与えてくれた曲だと思いますね。僕、デモの段階ではこの曲をシングルとして出すことに反対だったんです。だけどシングルにするって決まったんで、シングルのつもりでギター弾いて『これでいきましょう』と――」


ちなみに〈シングルのつもり〉って西川さんの中ではどんな感じなんですか??


「別に気分的なものなんですけど……アテブリがしやすいとか(爆笑)。ウソですよ、ウソ!」


キッズの夢をぶち壊す発言はやめてください……。で、その頃のライヴで西川さんがグイグイ前でギター弾いてるのを観て、僕は「おや?」って思ったんです。当時、西川さん的には心中期するものがあったような気がするんですが。


「どうなんですかね? ……あれは(1年間)で2回目のツアーだったから『何か変えなきゃ』って気持ちがあったかもしれない。同じことをしたくないって気持ちはありますから」


「何か変えなきゃ」っていうのは、具体的にどういうふうに変えたかった感じなんですか?


「前のツアーと同じ気分でこのツアーを終えたくないっていう。何かを試してみたかった……のかもしれないですね」


何を試したかったんでしょう?


「あの時は結構自由に弾くことを考えて演ってましたね。初めて鍵盤が入って僕のパートをサポートしてくれるから、その上でどれくらい自由でいられるかっていう――でも最初は考えてたけど、最後には忘れてましたよ。ははははは」


最後をアヤフヤにするのはやめてくださいっ! で、その時にバンド全体で「外に行きたい」って気分があったと思うんですけど、西川さんは感じてました?


「そんなに………………」


ん~、アヤフヤだなぁ……。まあ、グレイプバインって話し合って「次はこうしよう」って決めるバンドじゃないとは思うんです。各自がプレイで今の気持ちをアピールするというか、良く言えば奥ゆかしくてシャイというか――。


「地味なバンドですよねぇ。でも(外向きの方向提示は)明確にはなかったですよ。なんとなく肌で感じるというか、それに巻き込まれるというか」


気分が伝染する感じですか? じゃあ「もっと殻を壊していきたい!」って気持ちはありました?


「壊していこうっていうか……僕はただ音楽に引っ張られてるだけなんです。あんまり外から見てウチがどう見えるかってことは考えない。考えろって言われたら考えますけど、どちらかっていうとあまり考えたくない方だし……」


客観的にバンドを眺めるのは自分の役割ではない、と。


「いや……見ろと言われれば、やりますよ!」


だって見てないじゃん!(怒)。


「『見てください!』って言われれば、情報収集から分析からやりますよ」


じゃあ見てください!


「えっ(焦)……今ですよね……ギターバンドとしては稀な存在かもしれないですね。ギターバンド自体も稀だし、でもこんなバンドがいてもいいと思うし、むしろ残っていた方がいいとも思うし」


ちゃんと考えてるじゃないですか。そんな視点も持ってるのに、西川さんは田中さんなりのヤル気に〈乗っかっていく〉感じでプレイされてますよね。そこで自分的に「こっちに行きたい」って気持ちはなかったんですか?


「いやー、それほどないですよ。そのまま自分も乗っかっていこうかなっていう(笑)。曲を出す時とかは幾分ありますけど、それは枠を広げていきたいって感覚だし」


おっ! 枠を広げていきたいって気持ちはあるんじゃないですか! それは以前と比べて強くなってません?


「あー、そうですね。その速度は速くなってるかも。自由になったとは思いますよ。それはもう4枚目だからなのかもしれないし、過渡期だからかもしれないし――」


おおっ! 今、過渡期って言いましたね! 僕もこのアルバムは過渡期のアルバムだと思ったんです!!


「僕は過渡期かどうかわからないですけどね(アッサリ)」


あれ?


「それは次の作品を見ないとわからないですから。でも僕、過渡期のバンドのアルバムって好きなんですよ。だから僕らが今過渡期にいるのなら、これは大好きなアルバムになりますね。過渡期って――いろんなものが混在してるじゃないですか? どっちに転ぶのかわからない曲が入ってたり、突飛なものが入ってたり、仲がいいんだか悪いんだかよくわからない感じもあったり(笑)」


そういう空気って、このアルバムにもありますよ。いわゆる名盤と言われるようなカッチリした作品じゃないけど、バンド中の体温が生々しく出ちゃってるというか。


「成長してるんだか解散するんだかよくわからない、みたいなね」


過渡期っていうことは、とにかく動こうとしてるってことだと思うんです。タガが外れたというか、あっちこっちにエネルギーが飛び散ってるというか――。


「そういう意味ではロックっぽいアルバムなのかも」


うんうん。計算して作ったんじゃなくて、やってる行為自体がガムシャラで熱が伝わってくる感じですよね。


「ま、元々アルバム・トータルのコンセプトとか立てないバンドなんで、そういった雰囲気はあったんでしょうけど、今回はより増した気はしますね。底が抜けたというか」


まさに〈底抜けアルバム〉だ!


「底抜けアルバムかぁ……困ったなぁ(苦笑)」


アルバム3枚作ってひと段落して、「このバンドの底を抜いちゃってもいいかな」って気分はあったんですかね?


「いや、それは毎回あったんです。毎回ひと段落ついた気分はあるんですけど……ん~……今回とくに変わったと言われれば変わったような気もするし、変わってないのかもしれないし(苦笑)」


またまたアヤフヤかよっ!! でもこれまでのアルバムが半歩踏み出した感じだとしたら、今回は大股で一歩踏み出した感触はあったんじゃないですか?(←にじり寄り)。


「まあ、それはありますね。それがメンバーの雰囲気だったんでしょう。特に『新しいことをやろう』ってつもりでもなかったんだけど、僕もその影響を受けてると思うし」


その変化の裏には、リーダーの教養っていうのが大きな影を落としてるんですかね?


「いや、いてもこういう方向に来たんじゃないですか?」


ですよね。「ふれていたい」からの流れを見ると、僕もこうなったのは必然のような気がするんです。


「ちょっと形は違うでしょうけどね。西原くんもとんがった曲書いてたからトンガリ具合が違っただけかもしれないし。ただ僕は別に変わってもいいやと思ってたんですよ。逆にこれ(リーダーの休養)で変わってくれればいいんじゃないかなっていう。いないならいないで別の音楽になってしまっても、それはラッキーといえばラッキーだと思うし――」


へぇー! それをラッキーと取るんだ!


「ま、きっかけとしてね。なかなか他のベーシストと知りあえる機会もないわけですから」


うん、だから西原さんの休養を前向きなきっかけととらえて、バンドの枠を広げていく意志をさらに加速できたからこそ今回の音になってる気はするんです。


「それは間違いないでしょう。今回はゲストもいっぱい入れてるし。もしかしたら西原くんが嫌がるようなこともやってるかもしれないけど、また西原くんが帰ってきて別物になれれば、それはそれでいいと思うんですよ」


新しいタイプの楽曲も増えてますよ。今回のシングルの「風待ち」なんて、これまでない程、素直で優しい感じだし。


「これはシングルにするつもりじゃなかったんですけどね。録ってみて良かったんで『シングルにしないか?』って話をもらって。僕がこの曲を新しいと思ったのは、シングルにするつもりじゃなく作った点。だから素直だし、あまり装飾がないんです。気楽な感じで演ってる空気が出てると思うし、もしこれをシングルとして意識してたら--」


アテブリのことも考えただろうし(笑)。


「アテブリはできないとね!(←軽妙)」


ははははは! でもそんな素の部分を出せるようになったことも含め、今のグレイプバインからは余裕と攻撃性の両方を感じますよ。そして改めてマジメだと思いますね。「いかに新しい領域に踏み込めるか」ってことを、バランス考慮しつつ常に考えてたわけだし。


「うん、マジメだと思いますよ、音楽に対しては。今は気楽にやれるようになってきてるし、すごくいいんじゃないですかね? そっちの方がクリエイティヴだと思うし、まだやれそうな気がするし。もっともっとぶっ壊れたものがあってもいいと思いますよ」


なんといっても今回は〈底抜けアルバム〉だし!


「いや、僕はもっと広げたかったと思うんです。正直、今回のアルバムができあがってみて、『思いのほかグレイプバインだったな』って印象があって。だからこの先、まわりの人が『エーッ! これもやっちゃうの!?』って言うぐらいまでやるかもしれないですよ」


え、これで案外できてみたら大人しかったって印象?


「最初はもっととっ散らかるかなって思ってたんです。でもやっぱり長いことやってるだけあって同じ匂いが入ってて。今後はそれすら消すかもしれないですね」


へぇ~! それは「消してもいい」と思ってる?


「ぜんぜん消えてもいいと思ってますよ」


むむむ、やっぱ力強いしスコーンって抜けてますね。では最後に、西川さんから見て今のグレイプバインってどういう状態だと思います?


「んー……すごくラフなんじゃないですか。みんな好き勝手やってると思うし、好き勝手言うてると思うし。それが音に反映されてると思いますよ。すごく新鮮な感じはあるし」


さっき「まだやれそうな気がする」って言っておられたけど。


「まだまだできる感じはしますね。まだやってないことはたくさんあるし。今回やったことで(まだやってないことは)余計広がったようにも思うし。それはいいことだと思いますけど、大変だとも思いますね…………困りましたよ」


それはもう死ぬ気で頑張ってください(←冷酷)。


「『ありゃー、抜けなきゃよかった』っていうね(笑)」

文=清水浩司



〈GRAPEVINE IN A LIFETIME CIRCULATOR tour〉

8月1日(土)岡山 CRAZYMAMA KINGDOM
8月2日(日)広島 クラブクアトロ
8月8日(土)熊本 B.9 V1
8月9日(日)福岡 DRUM LOGOS
8月11日(火・祝)松山 W studio RED
8月22日(土)京都 磔磔
8月23日(日)Live House 浜松 窓枠
8月29日(土)金沢 EIGHT HALL
8月30日(日)長野 CLUB JUNK BOX
9月6日(日)札幌 ペニーレーン24
9月12日(土)新潟 LOTS
9月13日(日)仙台 Rensa
9月18日(金)東京 EX THEATER ROPPONGI
9月19日(土)東京 EX THEATER ROPPONGI
9月22日(火・祝)なんば Hatch
9月23日(水・祝)名古屋 ダイアモンドホール


金戸覚 還暦記念〈金やん還暦サマーファイトシリーズ〉

8月14日(金)渋谷クラブクアトロ
GRAPEVINE vs THE GROOVERS

8月25日(火)恵比寿LIQUIDROOM
GRAPEVINE vs The Birthday



GRAPEVINE オフィシャルサイト

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