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【Archive/Interview】亀井亨(GRAPEVINE)/音楽と人2001年7月号

text by 清水浩司
2026年7月8日


GRAPEVINEの4枚目のアルバム『Circulator』。2001年にリリースされてから今年で25周年を迎えたことを記念して、2枚組CD『Circulator + NAKED SONGS』と映像作品『GRAPEVINE LIVE 2001 “NAKED FILM and MORE”』が発売されたばかり。そして、同作の再現ツアー〈GRAPEVINE IN A LIFETIME CIRCULATOR tour〉が8月1日よりスタート。ということで『音楽と人.com』では、アルバム『Circulator』リリース前に行われた亀井亨(ドラム)、西川弘剛(ギター)のインタビューを再掲載します。まずは亀井から。当時は、リーダー・西原誠の休養を受け、3人体制での活動をスタートさせたばかりの彼ら。のちに『Circulator』へとつながっていく過渡期に、彼が何を思い、何を語っていたのか。その言葉をあらためてお届けします。

(以下は音楽と人2001年7月号に掲載された記事です)


リーダー・西原誠、腱鞘炎の悪化のため一時休養――このニュースを聞いた時、僕は事の重大さにしばし呆然とした。グレイプバインは珍しく〈4人の顔が見える〉バンドである。誰がフロントで誰が裏方という役割分担なく、4人が等分のバランスで成り立っている集団である。そのワン・ピースが欠けるということが、どれほどの非常事態であることか。また今の状況が状況である。「ふれていたい」「Our Song」とアグレッシヴな外向きモードに踏み込みはじめた矢先のアクシデント。一体これからのグレイプバインはどこへ向かうのか? ……僕だけでなく、多くのファンはそんな不安を抱いたことだろう。

彼らはリーダー復帰まで3人で活動することを選択した。その一発目としてシングル「discord」発表。本誌では正念場を迎えた3人を1人ずつ追うことで、バンドの現状を報告しようと思う。まず亀井亨(ドラム)は何を想ったか?



いろいろ訊かれてるだろうけど、今回はリーダー(西原誠)の休養が決まって3人体制に入った現在のグレイプバインについての話を訊きたいんです。まず、リーダーが休養に入った経緯っていうのは、どういうものだったんだろう?


「えーっと、もう2年ぐらい前ですかね、リーダーが腱鞘炎をわずらいまして。腱鞘炎ってしばらく休んだりすると治るらしいんですけど、ちょっと違う症状も出てきちゃって。それで結局治らず悪化していって、それでも腕をだましだましやってたんだけど――」


うんうん。


「まぁ、去年の年末のツアーとかかなり辛そうで。その前にもちょくちょく『休んだほうがいいんじゃないか?』って話はしてたんだけど、でも『どのタイミングで休むのか?』っていうので延ばし延ばしやってて。だけどさすがに限界が来てたみたいで。ベース弾かなくてもレコーディングに参加することはできたんだけど、西原さん、肉体的っていうより精神的に参ってはったみたいなんですよ。そういう関わり方をする方が逆にストレスになるっていう」


精神的なストレスっていうのは、どういうこと?


「うーん……本人は楽器を弾きたいけど、実際は弾けないわけじゃないですか。曲を作るにしてもギターなり何なりを弾かないとできないわけであって。で、曲ができないと他のメンバーの持ってくる曲に対しても口は出せないっていう――そういうストレスがあったんじゃないですかね」


ベース弾けないし、曲も作れない状態でバンド活動に参加することがストレスになっちゃうというか。


「本人も『休みたい』って言ってましたし。どうせ休むんなら音楽からまったく離れて休むのがいいだろう、と」


〈リーダー完全休養〉っていうのは、亀井さんとしてもそれがいいんじゃないかなって意見だったの?


「そうですね。選択肢として西原さんだけが休むっていうのもあるし、バンド自体が休むっていうのもあったと思うんですけど……それで僕らまで休むと、西原さんが責任感じるところもあると思うんです。『自分のせいでみんなの活動まで止めてしまって』って。なので『俺は休むけど、残りの3人でちゃんと作ってくれ』と言い残して……逝きましたね」


(笑)ま、惜しい人でしたけどね。


「ははははははは!」


そのへんはバンド内で話し合いはあったんですか?


「うん、何回かありましたね」


ほら、グレイプバインって話し合いをこまめにやるバンドじゃないじゃないですか。でも今回に関しては――。


「さすがにね(笑)」


今の話聞くと、みんな気を遣い合ってた感じですよね。西原さんは西原さんで、自分がバンド止めてしまうことに関してすまないと思ってるし、残りの3人は3人で西原さんがそうやって責任をしょいこむことを避けようとしてるし。


「…………いい話ですよね(照)」


亀井さん自身は、その決定に対してどう思ったのかな?


「うん、まぁ、西原さんにとってそれが一番いいことだとは思いつつ、バンドで1人欠けるのは大変なことですから。3人でやっていくことに対しての不安はありましたよ」


その〈3人体制〉はどうやって進んでいったんですか?


「まず、リハーサルを3人ではじめて。田中(和将:ヴォーカル&ギター)くんとか西川(弘剛:ギター)さんの、どっちかがベース演ったりしてやってみたんです。一時は『3人だけでレコーディングもしてしまおう!』みたいな話になったんですけど、リハでベースを弾いてみてわかったのは『ベーシストはすごいな』ってことで。ベース自体弾くことは弾けるんですけど、やっぱりベーシストの弾くベースではないんです。おもろないんですね。それで結局、根岸(孝旨:共同プロデューサー)さんに弾いてもらうことにして」


それが決まって今回の「discord」のレコーディングに入りますよね。雰囲気はどうだったんですか?


「レコーディングに入ってしまえば割といつもどおりでしたよ。根岸さんは技術的にめちゃ上手い人ですし、音楽的にも僕らのことよくわかってくれてるし。ただその、なんやろ? 西原さんのベースを求めたものは作らないようにしました」


あー、それは最初から意図して?


「うん、『西原さんぽいこと弾いてください』とか『西原さんやったらこうするやろな』っていうのは全部排除していきましたね。だから別モンと考えてやったっていうか」


作業の進み方も当然これまでと違うわけでしょ?


「まぁ、違いますよね。弾いてる人が違うっていうのは。でも西原さんには申し訳ないんですけども、それはそれですごく楽しかったんですよ。違う人とやるっていうのは。逆にそういうふうに楽しんだ方がいいもんできる気もしたし」


「もう事実を受け止めて、やってくしかねーな」っていうか、ある種の開き直りがあったんだ。


「そうですね。もうやること山積みでしたからね。切り替えてやらないと追いつかないですよ」


今回のシングルって3曲中2曲が亀井さんの曲なんだけど、それはリーダーの件が絡んでたりするんですか? 「俺もちょっと頑張らんとあかんかな」みたいな。


「うーん、まぁ、そういうのも多少はありましたけど、それはあんまり意識せずに普段どおり持っていきましたね」


曲調もこれまでの亀井スタイルから少し変わってきてる気がしたんだけど。


「あー、そうですね。他の人が持ってきた曲も割とそうですよ。なんか変化していく時期なのかもしれませんね。僕としては『こういう曲作ってなかったな』っていうのを作ってみたぐらいなんですけど」


ヘンな感じの曲ですよね。アッパーなのかダウナーなのかよくわからないし、ナゾにグルーヴが力強いし。


「へへへへへへ(←意味深笑)」


あとリーダー不在でレコーディングして気付いたことってあります? リーダーの存在感に改めて気付いたとか。


「あー、どうなんかな? ……まぁ意見がひとつ少なくなった分だけ、まとまんのが早くなったぐらいかな。うちのバンドは西原さんが音楽的に仕切ってるとか、誰かが仕切ってるとかってわけじゃないんでね。うん、そう考えるとそんなに支障はきたしてないですね(笑)」


はははははは。リーダーの存在感ってそんなものかよ!


「ま、弾いてないってことが一番デカいですよ。あと遅刻してくる人が1人減ったから、集まりも良くなった(笑)」


一体リーダーってどういうポジションなんですか??


「演奏する立場としては僕らとそんなに変わらないですね。ただ、大事なのは場に対してツッコんだりとか、デカい声で笑ったりとか(笑)」


それぐらいかよ!(笑)。やっぱりグレイプバインってバンドは、プレイヤーの部分で繋がってるトコが大きいんだろうね。〈仕切り係〉〈バンマス係〉〈曲作り係〉みたいに役割分担されてるというより、全員で四等分というか――。


「そうですね、ここ最近は特にそうじゃないスかね」


じゃあ、そのリーダーがいないレコーディングに臨むにあたり亀井さんが意識したことって何かあったりします?


「『3人になったからクオリティが下がった』とか『パワーダウンした』とかっていうふうに、できた作品を聴いて思われたくないなっていうのはありましたね」


残ってやるほうの意地として。


「うん。そうせなあかんなとは思ってましたけど、そんなに気負ってはいなかったな。3人でも全然いいモノができるだろうって勝手に思ってましたからね」


その恥ずかしいもの作っちゃいけないって気持ちは、リスナーに対して? それとも西原さんに対して?


「どっちもですよね。自分達もヤですし。3人でやることには僕らも納得したわけですから、いいもの作らないと」


じゃあレコーディング入った時点でもう、気持ちはすっきりしてたわけだ。


「そうですね。絶対いいものができるハズっていう根拠の無い自信はありましたね」


なんかグレイプバインって、意外と楽天的なところあるよね。前に田中くんも「この4人でいたら、なぜだか負ける気がしない」みたいなことを言ってたけど。


「根拠の無い自信は常に持ってますね(笑)」


そういう『何とかなるやろ』って自信は、亀井さんの中でいつ頃から出てきたものなのかな?


「まぁ、徐々にですけど、アルバムで言うと去年の『Here』とか、ツアーで言うと〈SouthBound〉とか。あの辺になると音楽的にも自信でてきてるし。〈SouthBound〉が終わってちょっと節目っていうか、ひと段落ついたところは気持ち的にありますね」


でも今回の事態ってバンドにとって大きなアクシデントじゃないですか。それってその〈根拠の無い自信〉が試される試練でもあると思うんです。これぐらい大きな事件って、今までバンドの歴史ではなかったことですよね?


「この4人になってからは一回もないですね」


今回の転機って亀井さんの中では、どれくらい大きなものとしてとらえられてます? 例えば〈上京〉とか〈デビュー〉とか、そういう出来事と比べてみて、どう?


「あぁー、でもまぁ、これまでで一番ショッキングなんじゃないですかね。デカいですよ、一時的にでも一人抜けるっていうのは。バンドの存続に関わることでもあったわけですからね。それはかなり……ヘタしたらバンドがなくなるかもしれんぐらいの出来事ですからね……」


「バンドがなくなるかもしれん」って想いは、ちょっとは頭をよぎったんだ……。


「うーん……そういうことは考えてしまいがちですよね」


これまで多少のピンチはあっても、そこまで差し迫ったバンドの危機ってなかったわけですもんね。


「まったくないですね。あ! でも大阪にいる時に西原さんがなぜだか一度就職してしまったことがあって、あの時もバンド的にはピンチでしたけど」


また原因はリーダーかよ! でもその時の危機感と今の危機感っていうのは、重み的にも全然違うもんでしょ。


「全然違いますよね。そん時は別に『これでなくなったら、それまでのもんやな』ぐらいのことですからね。さすがにこんだけやって……ていうのはありますよ」


それは亀井さんだけが感じてた状態なのかな? それともバンド全体が危機感を感じてた状態なのかな?


「うん……今回の決定に至るまでに、ちょくちょくそういう話にはなってたんですよ。そん時にすごく考えさせられましたね。話し合いの雰囲気もダウナー……かなりのダウナーでしたから。まぁ、それでも前向きには考えましたけど」


みなさん薄々気付いてたとは思うんですよ、いつかはこういう事態が来るってことは。それが直面せざるを得ない状況に今回なって、バンド内の関係性とか変わってきました?


「西原さんがいないぶんツッコむ人がいなくなったので……ま、ちょっと淋しいですね(笑)」


淋しいだけかよ! 意気込みよ意気込み!!


「意気込みですか? ……うーん……ま、ちゃんと帰ってこれる場所を作っておこうとは思いますけどね」


〈帰れる場所を作っておく〉とは具体的にいうと?


「バンドが存続しているってことでしょうね。そんだけですよ。西原さんは『俺がおらんうちにバカ売れしとけ』って言い残してましたけど。帰ってきた時ラクなように(笑)」


その捨て台詞もリーダーぽいよなぁ。西原さん、どっか強がりで〈カッコつけたがりぃ〉なとこありますよね。


「うははははh!」


でも実際のハナシ、今リーダーと話すことってあるんですか? 電話かかってきたりとか。


「いや全然ないです。ていうか、もともと電話とかする仲じゃないですからね。噂はチラチラ聞きますけど」


どんな噂?


「ちょっと前聞いた時では金髪になったとか、あと合宿免許取りに行ったとか(笑)。楽しそうですよ。生き生きしてるらしいですし。それはそれでいいと思うんですよね」


じゃあ……そんな照れ屋のグレイプバインのために、この場でリーダーにメッセージを伝えてもらいましょう!


「え、メッセージですか!?(焦)…………えー、免許取ったらしいですけど、横に乗るのはカンベンだ!(笑)」


相変わらず、強がりばっかの人ですねぇ……。


「まぁ早く戻ってきてほしいですよ。淋しいですからね」

文=清水浩司



〈GRAPEVINE IN A LIFETIME CIRCULATOR tour〉

8月1日(土)岡山 CRAZYMAMA KINGDOM
8月2日(日)広島 クラブクアトロ
8月8日(土)熊本 B.9 V1
8月9日(日)福岡 DRUM LOGOS
8月11日(火・祝)松山 W studio RED
8月22日(土)京都 磔磔
8月23日(日)Live House 浜松 窓枠
8月29日(土)金沢 EIGHT HALL
8月30日(日)長野 CLUB JUNK BOX
9月6日(日)札幌 ペニーレーン24
9月12日(土)新潟 LOTS
9月13日(日)仙台 Rensa
9月18日(金)東京 EX THEATER ROPPONGI
9月19日(土)東京 EX THEATER ROPPONGI
9月22日(火・祝)なんば Hatch
9月23日(水・祝)名古屋 ダイアモンドホール


金戸覚 還暦記念〈金やん還暦サマーファイトシリーズ〉

8月14日(金)渋谷クラブクアトロ
GRAPEVINE vs THE GROOVERS

8月25日(火)恵比寿LIQUIDROOM
GRAPEVINE vs The Birthday


GRAPEVINE オフィシャルサイト

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