【LIVE REPORT】
〈jo0ji tour 2026「よあけまえ」〉
2026.05.22 at Zepp Haneda
圧巻のライヴだった。Zepp Hanedaは日本で一番大きなライヴハウスではあるけれど、容易にそれよりも大きなホールやアリーナでパフォーマンスする様が想像できるほどに、jo0jiというアーティストの可能性を感じさせるステージが目の前で繰り広げられていた。
今回のツアーで肝になるのが新曲「よあけのうた」であることはツアータイトルからも明白だった。TVアニメ『呪術廻戦』のエンディングテーマとして書き下ろされたこの曲でjo0jiを知った人も、その楽曲をライヴで聴きたい、と期待していた人も多かっただろう。これまで以上にダークで壮大な「よあけのうた」を、どうセットリストに組み込むのか、どんなふうに聴かせるのか、あまり想像ができないまま会場へ向かった。
最初にすべてを説明してしまうと、ライヴは「よあけのうた」のアニメサイズをjo0jiがひとりで弾き語りするシーンからスタート。人との関係に悩み傷ついていた頃に作った「≒」へ移り、さまざまな場面を経て、傷ついていたあの頃の気持ちを肯定する「onajimi」へ至る。ここで大団円かと思った中、アウトロがカオティックに変貌。『呪術廻戦』のエンディング映像を彷彿させる赤いステンドグラスが背景に映し出され、「よあけのうた」へなだれ込み、フルヴァージョンをバンドとともに披露して終幕という構成になっていた。

作り込まれていたのはセットリストだけではなかった。舞台上には階段がついた2階建てのステージセットが組まれ、曲によって上の階と下の階を移動。背景には巨大なLEDスクリーンがあり、VJが曲の世界観を広げ、さらにはVJや照明がjo0jiの動きとシンクロする場面も多く見られた。たとえば冒頭の「よあけのうた」。上階に置かれたピアノで弾き語りをしたあと、暗転した次の瞬間に階段の中腹へとjo0jiが移動し、その背景にロゴがドーンと表示されるという演出。ちょうどjo0jiの「0」の前に本人が構える形になっていて、マイナスからゼロへ向かう様子を描いた「よあけのうた」ともリンクする完璧な幕開けだった。渋谷WWW Xで行われた初ワンマンライヴでもVJは入っていたが、ここまで他の演出と連動しているのは初めて。ある程度の決まった導線などがあったはずだが、その場面でも抜かりなく対応していた。そして、そういった演出が上滑りすることがないほど、歌やバンドの演奏が仕上がっていたことも大きい。演出もパフォーマンスも、すべてがきちんと絡み合い、まるで映画を見ているような気持ちになるほど高揚し、没入させられた。

そんなふうに完璧に作り込まれたステージで、エンターテイナー然として振る舞いながらも、MCになれば友達と会ったかのようにくだけた口調で語り始めるjo0ji。「駄叉」「cuz」「不屈に花」では、曲を作るきっかけとなった友人や家族について語り、身近な人の話を友達に教えるように穏やかに伝えていた。その様子は、さっきまでステージを掌握していた彼とは対照的。とくに印象的だったのは亡くなったおばあちゃんのことを思って作られた「cuz」を弾き語りする前。おばあちゃんが自分をたくさん褒めてくれたから音楽をやり始めた時もやれると思えた、と彼は言い、客席に背中を向けてピアノを弾き出した。根っから自信満々なタイプではなく、周りの人たちがくれた優しさがあるから彼は優しくいられるし、求められたり褒められたら頑張れる。そんなjo0jiの人柄が垣間見える場面だった。

だからこそ、彼がここまで大掛かりなステージや演出をやってみせたことはやっぱり意外でもあった。インタビューをしていても、自由で飾らないし、決まりごとは苦手そうにも思えたから、なおさらだ。おそらく周りからの勧めや期待を背負って、この神輿に上がる覚悟を決めたのだろう。「onajimi」から「よあけのうた」が始まる瞬間は、目を引く演出に鳥肌が立つほどで、さらに「よあけのうた」の主人公が抱える絶望やもがきながらも光に向かおうとする様を表現する歌もバンドの演奏も照明もあまりにもドラマチックで、圧巻のラストだった。エンターテイナーとしてライヴを魅せることを引き受け、そして見事にやり遂げた瞬間に拍手が鳴り止まなかった。

どれほどの思いを持ってこのツアーに臨んだのかを想像しながら、熱狂が残る空っぽのステージに拍手を送っていた。そして、アンコールに呼ばれて再登場したjo0jiは、ツアー前に感じていたという気持ちをまたくだけた口調で話し始めた。それは、『呪術廻戦』という大型アニメのタイアップがあり、周囲の期待を鬱陶しく感じていたこと。大掛かりな舞台セットにも最初は乗り気ではなく、さまざまな意見をつけていたこと。初日の名古屋公演が始まっても、その気持ちが晴れていなかったこと。しかし、「≒」で客席が明るく照らされると同時に、自分のことを待っていてくれたたくさんの人の存在に気づき、気持ちが吹っ切れたこと。本人は気持ちが上がらなかった時期のことを「5月病」だと冗談のように言い、大阪公演が終わってから作ったという新曲の「東風」をギター1本で披露した。その曲は〈僕はこの日々を愛している〉というフレーズが印象的で、アコギとjo0jiの温かく柔らかい歌声がそっと心の中を吹き抜けるような優しい曲だった。

「よあけのうた」のインタビューで語っているとおり、デビューしたことで周囲の自分に対する反応が変わったり、背負うべきものが生まれたことを彼は理解している。しかしそれすらも引き受けて進んでいく覚悟を決めたから、「onajimi」や「よあけのうた」が生まれた。この先も、アーティストとしてさらに進んでいこうとすれば、大きな挑戦に立ち向かうことも、抱えるのが困難な荷物を持たざるを得ないこともあるかもしれない。ショーマンである以前にひとりの人間なのだから、そこで揺れ動く気持ちを無視することもできない。でも、身近な人たちがくれたものや、待っていてくれる人の存在が彼の足を前へと進めてくれるし、そうやってひとつずつ乗り越えて、新しい景色を見せてくれるのだろう。〈この日々を愛している〉とは、悩みながらも進み続けていく覚悟のように聴こえた。家に帰って「東風」について調べたら、古典文学や俳句で〈新たな始まり〉を告げる季語としても使われていると知った。この日のライヴは、jo0jiというミュージシャンの〈よあけまえ〉であり、〈新しい始まり〉でもあったのだ。
きっとさらに大きなステージが彼を待っているだろう。時代を象徴するようなアーティストになり得る存在感や表現力も十分ある。でもその根っこは、人を楽しませることが好きで、優しくて、少し自分勝手で、ちゃんと悩みもする、人間らしいjo0jiがいた。だからこれだけ圧巻のライヴをやっても、どこか親近感を持てるのだ。きっと彼のその部分はこれからも変わることがない。jo0jiというミュージシャン、そしてひとりの人間のことをさらに好きになるライヴだった。
文=竹内陽香
写真=小杉歩

【SETLIST】
- よあけのうた(Anime size Piano ver.)
- ≒
- 明見
- 言焉
- 謳う
- 駄叉
- BAE
- ゑ喪
- escaper
- cuz
- わかれのうた
- 条司
- Nukui
- 眼差し
- 雨酔い
- 不屈に花
- onajimi
- よあけのうた
ENCORE
- 東風(未発表曲)
- ひかりのうた
