心を揺さぶられたり、座右の銘となっている漫画、映画、小説などの1フレーズが誰しもあるはず。自身の中で名言となっている言葉をもとに、その作品について熱く語ってもらう連載コラム『言の葉クローバー』。今回は、4月29日にニューアルバム『MOTHERLAND』をリリースしたBIGMAMAのギタリスト、柿沼広也が登場。ジャズを題材にした音楽漫画の名作に出てくるセリフを紹介します。
(これは音楽と人2026年6月号に掲載された記事です)
『BLUE GIANT EXPLORER』
理由がないってことは、アナタは本気ってこと
作品紹介
『BLUE GIANT EXPLORER 2巻』 石塚真一
〈音が聴こえる漫画〉と言われる音楽漫画。ジャズサックスの世界NO.1プレイヤーを目指す主人公・宮本大の成長ストーリが描かれている。2013年より『ビッグコミック』にて連載中。
『BLUE GIANT』は、今、第4部が連載されているんですけど、第1部からずっと追いかけている作品で、この言葉は、第3部『BLUE GIANT EXPLORER』に出てくるものですね。
第3部はアメリカが舞台で。ジャズサックスの世界NO.1プレイヤーを目指す主人公の大が、単身アメリカに渡るんです。現地のカフェの店員と仲良くなって、ご飯を食べに行くんですね。そこでアメリカに来た理由を聞かれて、「自分は世界NO.1のジャズサックスプレイヤーになりに来たんだ」って答えるんですけど、そしたら、カフェの店員、シェリルっていうんですけど、彼女に「どうしてあなたはNO.1になりたいの?」って言われて、「まったく理由がわからない。理由はない」って大は困惑するんですよ。その姿を見て彼女が言ったのがこの言葉で。そのあと「そして、本当に音楽が好きってこと」ってセリフが続くんですけど、すごい真理をついてる言葉だなと思って。
テナーサックス1本持って海外まで来てるわけだし、もっともらしい理由を自分の中で作っていてもおかしくないじゃないですか。でも頭の中で論理的に考える必要がないくらい、もはや当たり前のことになっているから理由が浮かばない。ある意味、本能的というか。だからこそ、それが本気であることの証明になっていて。
自分自身も、大学卒業して周りが就職するタイミングで、BIGMAMAで生きていくことを決めて。周りから、なんでバンドやることを選んだの?って言われることもあったし、その時々で理由らしいことを言ったりはしましたけど、でもほんとは純粋に〈これを続けたいんだ〉って思っただけで。とくに理由はなかったんですよね。ただそれを大手を振って言えないというか、就職もせずバンドを続けることに対して、それなりの理由を求められてるような気がしてたんですよね。でもこの言葉によって、あの頃の自分を肯定されたような、そんな気もしました。
この作品には、技術力だけじゃない〈上手いプレイヤーとは何か〉ってことであったり、チームで仕事をする中でのすれ違いや、あの時の選択が結果よかったみたいなことが、主人公の成長とともにいろんなエピソードやシーンで描かれているんですけど、自分に重なるところが多いんですよね。
今回、このコラムにあたって改めて読み返したんですけど、最初に読んだ時は気に留めてなかったようなシーンや言葉が刺さったりして。それはやっぱ当時と今ではバンドの形も少し変わったり、自分も変化してるからだと思うんですけど、こうやって読むたびにいろんな発見や刺激をもらえる、そんな作品ですね、『BLUE GIANT』は。
NEW ALBUM
『MOTHERLAND』
2026.04.29 RELEASE

- Welcome to Motherland
- 旋律迷宮
- フリー・フォール
- High-Spin Coffee-Cup
- The Dinosaur Diner
- Sink or Swim
- SUBMARINE ERA
- 観覧車の上で僕らは
- Mirror World
- The Parade
- Time is like a Jet coaster (2025.05.11 Zepp DiverCity(TOKYO))
- Merry-Go-Round (2025.05.11 Zepp DiverCity(TOKYO))
