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CLAN QUEENがステージで描く人間模様。そして反転するドラマが見せた3人のリアル

text by 樋口靖幸
2026年5月31日


【LIVE REPORT】
CLAN QUEEN "Grand Hotel MONOPOLY Tour" 2026
2026.05.15 at Zepp DiverCity(TOKYO)



ひたすら規格外な演出と圧倒的な演奏力がフロアの興奮を飲み込んでいく。すでに彼らとオーディエンスの間には相思相愛の関係が成立していて、こんなやり取りを東京だけでなくツアー各地でしてきたことを想像すると、12月に予定している東京ガーデンシアターなんて今すぐやってもソールドアウトするんじゃないか?と思うほどの熱狂ぶりだ。初めて彼らのワンマンを観にきた立場としては完全に置いてけぼりを食らった気分だが、でも不思議なことにそんなエモーショナルな空間を作り上げているにもかかわらず、ライヴの主役はステージの彼らではなく、終始〈Grand Hotel MONOPOLY〉という場所で繰り広げられる人間ドラマのために存在していた。ただ実際のところはそんな役回りに留まっていられない3人であることもわかり、さらに彼らのことが好きになった。


五大都市を巡るワンマンツアー。これまで彼らのライヴには必須だったという映像を背負った演出から一転、会場に入るとまずはホテルのロビーを模したセットが迎えてくれる。そして男女比率ほぼ同じと思しきフロアを見て驚いたのは、物販Tシャツ着用率の高さだ。どれだけこの日を心待ちにしているのか、その期待の大きさが開演前から感じられた。


演劇の舞台を思わせるSEや特効とともに「Whitoxin」で幕を開けたライヴ。暴れたり叫んだりするノリの曲でもないのに、いきなりフロアのボルテージはマックスだ。そんな目の前の状況に煽られることなく、ステージの3人は各々の持ち場で歌と演奏に徹している。ピンスポは控えめに当たっているものの、キャップを目深に被ったyowa(ヴォーカル)の表情を窺い知ることはできない。さらにライヴが進むにつれ明らかになったのは、彼女だけでなくAOi(ギター)とマイ(ベース)もこれみよがしに自我を主張するようなプレイやパフォーマンスに傾倒しないことだった。時折フロアを煽ったり前列のお客さんと触れ合うような場面もあるものの、あくまでもホテルを舞台にした物語の語り部として、彼らはその役割に徹しているのだ。ホテルのロビーという設定や目まぐるしく動き回る照明と同じように、自らエンターテインメントの要素として存在することで音楽の純度を保とうとしているのだろう。その一方でMCになるとAOiが親しみを持った口調でツアーが終わることを惜しんだり、マイがファンとの接近遭遇のエピソードを披露したりと、フロアに対して惜しみなく素の自分を晒す。そこにはファンサービスというよりも彼ら自身がそういう距離感で繋がりたい、という思いがあるように感じられた。


まったりしたMCも終わりライヴが再開されると、再び舞台モードとなってその世界に没頭する。そんな彼らが次々と繰り出す楽曲は、ホテルのロビーを行き交う人々みたいに多種多様かつドラマチックだ。そういえばAOiが先日のインタビューで「人間を理解するために人格をデータだと仮定しようとした」と言っていたのを思い出す。それを音楽にすることで、彼は他人との関わりを成立させようとしていたという話も。でも実際には人間はデータでもな完全に理解できる存在じゃないってことに最近気づいたとも語っていた。であるとしたら、今ここで進行しているドラマは急展開を迎えるはずだ。誰かのことを理解したいのなら、まずは自分を理解してもらう必要があるのだから。


予想通りそれは「Eden」のタイミングだった。さっきまでyowaがいたステージの真ん中で、ソファに座り込んだままAOiが投げやりな様子で唄いだす。その仕草は少しだけ芝居がかっていたけど、彼が歌で吐き出したのは怒りに染まったリアルで生々しい感情だった。もはやそこはホテルのロビーでもなければ人間模様を描くキャンバスでもなく、コントロール不能の感情が、筋書きのないドラマとして屹立していた。そしてそんな彼の露わになった感情を合図に、3人はエンターテインメントからドキュメンタリーへとステージを反転させる。「APPLE」ではyowaと2人で「ガッデム!」と叫び、さらに「自白」ではAOiの人間に対する絶望や諦念を3人で分かち合うように鳴らしていたのだ。


すっかり変貌を遂げた彼らのステージで、AOiがMCでメンバーとの繋がりに触れてから披露した「Dirty Little Secrets」が特に素晴らしかった。この曲はAOiがメンバーへの思いを綴った歌で、それを3人がアイコンタクトしながら奏でる様子はこの日一番の名場面だと思った。そんな3人のひだまりのような温度がじわじわとフロアにまで広がって、ライヴがスタートしてから終始彼らの存在を激しく求め続けていたオーディエンスも、そんな彼らの優しさに絡め取られているようだった。もちろん自分もその1人だったが、そんな夢心地の気分を「PSIREN」で断ち切るツンデレなエンディングも痛快である。CLAN QUEENの音楽は単なるゼロイチのデータではなく、血の通った有機体の賜物であることが証明されたライヴだった。



文=樋口靖幸
写真=エドソウタ


【SETLIST】

  1. Whitoxin
  2. HARU
  3. MONOPOLY
  4. サーチライト
  5. 踊楽園
  6. アリスの嘘
  7. 無花果
  8. PLAYER01
  9. インベイダー
  10. 求世主
  11. 天使と悪魔
  12. Tokyo Mood
  13. ヘルファイアクラブ
  14. Eden
  15. APPLE
  16. 自白
  17. SPEED
  18. プルートー
  19. Dirty Little Secrets
  20. チェックメイト
  21. ゲルニカ
  22. PSIREN


CLAN QUEEN オフィシャルサイト

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