【LIVE REPORT】
〈Chevon ONE MAN TOUR 2026『三者山羊』〉
2026.09.13 at 神奈川・横浜アリーナ
北海道発の3ピースバンド、Chevonが、結成から5年3ヵ月というスピードで横浜アリーナの舞台に立った。メジャー・ファーストアルバム『三者山羊』のツアーの一環として開催された、初のアリーナワンマンである。
宇宙空間を駆け巡るような映像と照明の演出を経て、谷絹 茉優(ヴォーカル)、Ktjm(ギター)、オオノタツヤ(ベース)が登場。谷絹のシャウトを合図に、1曲目の「B.O.A.T.」が始まった。結成当初からつねに目標を掲げ、そこに見合う実力を積み上げることでステップアップしてきたChevon。『三者山羊』に収録されたこの曲はアリーナを見据えて制作されたロックアンセムで、力強いバンドサウンドに観客の歌声が重なる光景は、狙い通りの答え合わせを見ているかのようだった。

大観衆を沸かせる3人の背後で燃える真っ赤な炎。束の間の静寂とともに訪れる暗闇。そのコントラストを見ながら、『音楽と人』2026年5月号で実施したソロインタビューの内容を思い出した。バンド活動とは不安定なもので、未来も見えず、不安が尽きない。それでもChevonが「B.O.A.T.」で〈不思議と怖くは無い〉と唄えるのはなぜかと尋ねると、3人は異口同音に「バンドだから」と答えた。互いの個性を信じ、背中を委ね合う彼らは、もはや三位一体であり一蓮托生。彼らの言う〈怖くは無い〉とは、一人だったら押しつぶされそうな不安も、3人でなら乗り越えられるという意味なのだろう。がっちりと噛み合った演奏を前に、そんなことを思った。
この日Chevonは、サポートに中村“マーボー”真行(ドラム)、Ryo'Lefty'Miyata(キーボード、シンセサイザー、ギター、コーラス)を迎えた特別編成で、過去最多となる25曲を披露。レーザーやスモーク、VJを駆使した演出にも負けない堂々たるパフォーマンスで、満員の観客を沸かせる姿が頼もしかった。



ロックバンドとしての気迫を漲らせ、一切怯まずにステージに立ち続けた3人だからこそ、ここまで辿り着けたのだろう。一方でこの日は、彼らのピュアな部分がいつも以上に表に出ていた。「菫」の〈どうか一秒でも長く私を好きなままでいてくれますように〉というフレーズを唄う谷絹の声はどこか切実に響き、観客の大合唱を受け止める3人の表情はいつになく穏やかだった。オオノがMCで初めて声を発した時、少し震えているように聞こえたのも印象に残っている。
そんな3人の等身大の姿が、何度も垣間見えたこの日。谷絹がMCで語ったのは、一人で音楽活動を行っていた頃に見た夢の話だった。上手くいかないことばかりだったが、ある日、自分が大勢の前で楽しそうに唄っている夢を見たことで、「人生やめないぞ」と踏ん張ることができたという。一つ不思議だったのは、その夢の中では自分以外にも何人かステージに立っていたこと。やがて谷絹はKtjmやオオノと出会い、Chevonを結成することになるわけだが、アリーナまでやってきた今、目の前の光景を視界に収めながら、あどけない表情でこう言った。「私、唄いながらその夢のこと思い出して。それって、今日のことだったんじゃないかと思うの」。


谷絹がいつかの夢を思い出したのは、ここまでずっと気を張り、緊張の連続のような日々を走り抜けてきた自分を、ようやく少しだけ認めてあげられたからではないだろうか。「あの頃のどうしようもない私が、この光景を見てるわけ。だから盛り上がってくれないと、あの頃の私の心が折れて、Chevonが消えちゃいます!」と言ったあと、谷絹はこみあげるものを堪えながら上を向き「ここで泣くわけにはいかないんですよ。武道館もあるし! 」と観客を煽る。一方、Ktjmは、いまだにこの状況を現実と思えていないらしく、「俺は逆に、こっちの世界を夢と呼んでる」と語る。特に夏フェス出演時に自分の汗で視界がぼやけた際に、夢が覚めるんじゃないかと思った……というKtjmの話を、オオノが「どうでもいい(笑)」と容赦なく切り捨てるシーン含め、2人のマイペースな姿に谷絹が「わっはっは!」と豪快に笑う様子は、初めてインタビューをさせてもらった時と何も変わらなかった。3人はこの感じのまま、どこまでも進んでいくのだろう。
しかし、今の充実感が大きいほど、いつかそれを失うかもしれないという恐れもまた大きくなる。幸せであることにすら怯えてしまう谷絹の感覚は、この日披露された新曲「クライネ」にも通じていた。和の雰囲気を纏った旋律に乗せて唄われるのは、大切な人の存在が胸を温めてくれる感覚と、もうその人がここにいないという悲しみ。曲の後半、サウンドが激しさを増していく展開は、幸せな記憶と喪失の痛みの間で引き裂かれた心の叫びが、抑えきれず音になっていくようだった。

年末の日本武道館2デイズは即完し、来年9月にはKアリーナ横浜に立つことも決まっているChevon。会場の規模は拡大し続けているが、谷絹は、キャパを広げるのは人が入りきらないからであり、Chevonのライヴを求めてくれる人たちのおかげなのだと感謝を伝えた。そして「今日が最後って人もいるかもしれない。今日だけはChevonが大好きなみんなでしょ?」と続けた。永遠に愛される保証なんてない。それでも、今ここで自分たちを見てくれている人のことだけは信じられる。とはいえ、明日も同じように好きでいてくれるとは限らないから、今この瞬間に全てを捧げるしかない。その切実さが、彼らを次のステージへと駆り立ててきたのだろう。そしてそれは、きっとこれからも変わらない。谷絹が「もっとデカいところでやろうぜ! ここじゃキャパ足りねえからよ!」と投げかけると、客席から大きな歓声が上がった。彼らはこれからも、満たされないまま――いや、満たされないからこそ、前へ進んでいけるのだ。
文=蜂須賀ちなみ
写真=タカギユウスケ

【SET LIST】
- B.O.A.T.
- DUA•RHYTHM
- Lamipus
- 銃電中
- ノックブーツ
- 菫
- サクラループ
- 大行侵
- Banquet
- 光ってろ正義
- るてん
- さよならになりました
- デイジー
- 薄明光線
- さよなら、アイリーン
- クライネ(新曲)
- 春の亡霊
- 冥冥
- 六ノ輪
- Capretto
- FLASH BACK!!!!!!!!
- No.4
- セメテモノダンス
- B612
- ダンス・デカダンス
NEW DIGITAL SINGLE
「クライネ」
2026.09.16 RELEASE

配信リンク https://Chevon.lnk.to/Bonbon
5月13日(木) Niterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
5月22日(土) 福岡サンパレス
6月26日(土) レクザムホール
〈Chevon ONE MAN TOUR 2027〉
5月8日(土) 千葉・市川市文化会館
5月13日(木) 愛知・Niterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
5月15日(土) 石川・本多の森 北電ホール
5月20日(木) 広島・広島文化学園HBGホール
5月22日(土) 福岡・福岡サンパレス
6月3日(木) 北海道・札幌文化芸術劇場hitaru
6月6日(日) 仙台・仙台サンプラザホール
6月13日(日)、 14日(月) 大阪・フェスティバルホール
6月19日(土) 新潟・新潟県民会館
6月26日(土) 香川・レクザムホール
9月23日(木) 神奈川・Kアリーナ横浜
Chevon オフィシャルサイト https://www.chevon.biz/
