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  • #THE YELLOW MONKEY
  • #吉井和哉

吉井和哉ドキュメンタリー映画『みらいのうた』。そこで描かれる人生の残り時間について

text by 青木優
2025年12月9日


残された時間は少ない。そういうことだと思う。


いや、これは近年、自分の頭の中に浮かんでいることではあったのだけれども。このドキュメンタリー映画を観終えてから、吉井和哉と同世代の僕はそのことをいっそう考えている。あと何年頑張れるだろう。あと何年生きられるだろうか。それまでに何がしたくて、何をすべきなのか。何を諦めたほうがいいのか。
そのうちに、この作品の英語タイトルが『Time Limit』とされていることを知った。それで今度は違う話を思い出した。吉井は話してくれていたのだ。今年の夏、THE YELLOW MONKEYの4人インタビューの席で、現在の自分(たち)は〈時間〉がキーワードであると。そのことはおそらく、この映画の内容と地続きなのだろう。

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タイムリミット、時間制限。歳を重ねていくと意識せざるをえないのは、やがて来る死についてである。どうしてもここから先の人生の時間が短いであろうという事実を考えなければいけない。
先週、友人から、不摂生で体調を崩したよというメールが届いた。若い頃にはそんなのは何てことない話だったのが、この年齢ではヒヤリとしてしまう。「体にはどうか気をつけて」と返信をした。が、そんな歳だけに、一方では生きることへの意識もまた強くなる。身体を悪くした人は、なおのことそうではないかと思う。


映画『みらいのうた』の撮影期間は2022年の4月から2025年3月までの、ほぼ3年間。吉井が55歳から58歳までの記録ということになる(今年の10月で59歳になっている)。ただ、はるか昔の写真や映像もフィーチャーされているので、彼をはじめ、ほかに出てくる人たちの容姿の変化や年齢の重なりも感じながら映像が進んでいく。
この期間の吉井は、咽頭がんに苛まれていた。ただ、本ドキュメンタリーの撮影が始まった当初は、ポリープによる喉の不調はあったものの、がんの発症までは予測されていなかった。彼は今年の『音楽と人』11月号のインタビューで「ポリープとかは関係なく、自分の次のアルバムのためにね。ドキュメンタリーを撮って、それにBGMをつけるようにアルバム作ってみようかなと思ったの」と話している。なお、結局この2022年当時に制作に入ったソロのアルバムはまだ形になっておらず、今も曲作りの最中。その際にベーシックを作っていたのが最新シングルの「甘い吐息を震わせて」である。


病状が進行する中でのドキュメンタリーの撮影となっただけに、吉井が医師の診断を聞いたり、治療に向き合ったりする場面も収められている。それもあって彼がノーメイク、かつ、普段着姿の局面もある。ファンならばオフに近い時の映像とか、何かの番組の密着企画などでさほどメイクをしていない風貌を見たことはあると思うが、ここまで何も着飾らない吉井和哉が大写しになるのは初めてだろう。そのぐらいカメラはすぐそばで彼の横顔を捉えている。


吉井以外の出演では、まずはもうひとりの主役として、彼をロックの世界に導いたERO(高林英彦)という人物が登場する。それから、吉井の母親。さらに静岡では中学時代の同級生や、EROが通う教会の牧師といった方々も。東京が舞台の時は、THE YELLOW MONKEYのメンバーはもちろん、事務所スタッフをはじめとした仕事周りの人々、それにラストシングルのプロデュースを吉井に依頼したBiSHなどなど、音楽業界の人たちが中心になる。


このEROについては、それなりの補足が必要だろう。THE YELLOW MONKEY以前の吉井がURGH POLICE(アーグポリス)というバンドのベーシストだったことは熱心なファンなら知っていると思う。このバンドが〈静岡のモトリー・クルー〉の異名をとっていたことは、僕も吉井へのインタビューの場で話をしたことが幾度かあるほどだ。EROはこのバンドの中心人物で、吉井より6歳ほど年上。何よりロビン(LOVIN)というニックネームを授けたのはこの人で、吉井は彼に誘われてバンドのローディーを務め、やがて二代目のベーシストに任命された。
EROは35年以上も同じ部屋に住み続けていて、そこにはモトリー・クルーやハノイ・ロックスのアナログレコードが今も所有されている。80年代に隆盛を誇ったバッドボーイズ・ロックというムーヴメントのバンドたちだ。そのコレクションと一緒に、吉井在籍時のアーグポリスのアルバム『URGH!』のLP盤も出てくる。


この流れで、80年代の終わりにアーグポリスが解散したのはEROが上京を拒んだのが理由の一端だったことや、その後の彼がカントリーを唄うシンガーに転身したことなどが語られる。EROの部屋の壁ではカルト映画『ラスベガスをやっつけろ』(原作は伝説的なジャーナリスト、ハンター・S・トンプソン)のポスターが目立っていて、他にカントリー歌手のドワイト・ヨーカムのものも確認できる。そして室内にはカントリー風のギターや衣装も飾られている。
映像からも並々ならぬオーラが伝わってくるERO。僕がこの映画のおおよその筋を知った時に気になったのは、吉井とこのアーグポリスの元ヴォーカリストとの関係は今までどんなふうに続いてきたのだろう、ということだった。なにせ同じバンドにいたのは30何年も前で、しかもEROは静岡から出ることなく住み続けているのなら、関係が遠のいたこともあったのでは?とか。それから、失礼ながら音楽の世界で商業的に成功したわけでもないEROは果たしてどんな暮らしをしてきたのか?とか。本編ではこのあたりのことも語られていて、それとともにEROという人物の存在感に、徐々に引き込まれていく。

楽ではない日常に生と死のイメージが交錯しながら、時を刻んでいく

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