• HOME
  • RANKING
  • NEWS
  • INTERVIEW
  • COLUMN
  • QLAP!
  • MAGAZINES
  • BOOKS
  • ABOUT
  • HOME
  • RANKING
  • NEWS
  • INTERVIEW
  • COLUMN
  • QLAP!
  • MAGAZINES
  • BOOKS
  • ABOUT
COLUMN
  • #ヤバイTシャツ屋さん
  • #ライヴレポート

ヤバイTシャツ屋さん、「低スペック」配信ライヴで垣間見せたブレない姿勢

text by 樋口靖幸

【LIVE REPORT】
〈無料だから許して!低画質!低音質!5曲だけライブ!!!〉
2020.07.29(無観客スタジオライヴ)



世の中がどんな状況であろうとも、バンドの芯は1ミリたりともブレずにいることを世間に知らしめた60分だった。


YouTubeから生配信による無観客ライヴ。〈無料だから許して!低音質!低画質!5曲だけライブ!!!〉というタイトルからしてすでにヤバTらしさが全開だ。「無料」「低音質」「低画質」「5曲」というそのワードすべてが、現在エンタメ界で主流となりつつある配信ライヴの流れと逆行している。そして動画の告知画面にデカデカとある「超重大発表あり!」という文字から、この配信ライヴがその発表のために企てた告知動画でもあることがうかがい知れる。YouTubeにおける動画配信が日常生活に溶け込んだ今となっては、もはやこういった告知が当たり前のことではあるが。

オンタイムに画面が切り替わると、スタジオらしき空間にいる3人が。こやまたくや(ギター&ヴォーカル)がツイッターで配信の告知をツイートするところから配信はスタートする。彼の顔がいきなりアップだったこともあり、コロナ太りなのか顔の輪郭がずいぶん丸くなっているのがわかる。その背後にいるしばたありぼぼ(ベース&ヴォーカル)ともりもりもと(ドラム&コーラス)の見た目に変化は特に感じられないが、とにかく3人とも元気そうだ。ちなみに3人を映すカメラは正面からの固定が一台のみで、音声もどうやらそのカメラで拾っている模様。最近はチャンネルを開設したてのYouTuberでももう少し見せ方に凝っているものだが、公演名になぞらえて、あえて低スペックでお届けしたいのだろう。さらに彼らはいきなりライヴをやらず、まずはベクトルの定まらないトークを展開していく。その様子はいつものライヴのMCと同じように、お客さんそっちのけだ。その中で特に声を出して笑ったのが、クイズとして出題されたもりもとの謎の動き。答えは瑛人の「香水」のMVに登場するコンテポラリーダンサーの踊りのモノマネだった。前回のインタビューでも話題に出たが、もりもとはお笑いのクオリティが格段に上がっているようだ。


いよいよ「あつまれ!パーティーピーポー」で始まったライヴ。もちろんカメラは固定のまま一台、マイクもそのままだ。なので自宅のモニターから出る音はビッキビキに割れまくっている。もちろん低音なんてものを感じることはできない。これが有料配信だったらクレーム必須だろう。でも、カメラ一台の荒い映像も割れまくったバンドサウンドも、やけに生々しく彼らの演奏を伝えてくるのだ。それはスタジオで鳴らされている音そのものが、いつものライヴと同じようにしっかりとセッティングされているからだと思うが、あえてそこを低音質、低画質で届けることにバンドのリアリティがあることを、彼ら自身が知っているのだろう。そういえば音源でもライヴでも彼らのサウンドの良し悪しを意識したことはあまりない。それを上回る過剰なものが、つねにヤバTの音楽には内包されているからだ。


3人で音を出すのが半年ぶりだという彼らはこの日、本番を迎えるまでひたすらリハーサルを繰り返していたという。3月末に予定していたバンド史上最大規模のワンマンライヴが中止となってしまったことを思えば、どんな形にせよライヴができるのは彼らにとって悲願でもあったことだろう。普通はその想いの強さゆえに過剰な演出やスペックの高いサウンドを求めるものだが、彼らはあえて真逆に舵を切った。それは彼ら自身、ヤバイTシャツ屋さんというバンドをなぜやっているのか、という根本的な理由から目を逸らさずにコロナ禍を耐え忍んできたからに違いない。


計3曲を演奏したところで視聴者数が6万人を超え、ツイッターのタグがトレンド1位になる事態にメンバー自身が驚きながらも、超重大発表であるアルバムのリリース告知を行う彼ら。「(アルバム)聴いて泣きそうになった。ギリ泣いてないけど(笑)」とニヤけるこやまを始め、アンコール含め計6曲をやり切った彼らは、コロナ以前の彼らと何も変わらない、ヤバTが今なおサークルバンド原理主義であることを、60分の配信ライヴの中で証明したのだった。


この半年で環境は激変した。ライヴハウスを拠点としていた我々の日常が戻るのはずっと先になることから、今は新たな音楽を伝える手段の模索を始め、音楽活動そのもののあり方が問われている。そんな中での今回の配信ライヴは、彼らの芯にあるものを見つめ直し、芯の部分だけをリアルに伝えるためのゲリラ戦であった。ハイクオリティを追求し始めた動画配信ライヴの奔流に対するアンチテーゼ、という捉え方は極端かもしれないが、バンドが市民権を獲得するような存在になっても、その居心地の悪さや違和感は拭えずにいるのは間違いない。そしてそんなバンドの配信ライヴの視聴者数が7万人であったこと、そして実際のライヴと変わらない彼らの音楽の楽しさや興奮を画面越しでも伝えられることを証明したことは、2020年のエンタメ業界における重大事件のひとつであるのではないだろうか。


文=樋口靖幸


【SET LIST】
01 あつまれ!パーティーピーポー
02 Tank-top of the world
03 かわE
04 癒着☆NIGHT
05 ハッピーウェディング前ソング

ENCORE
01 無線LANばり便利


NEW ALBUM『You need the Tank-top』
2020.09.30 RELEASE

・癒着☆NIGHT
・sweet memories
・泡 Our Music
・はたちのうた
その他、全13曲収録

〈初回限定盤付属DVD〉
「2019.6.9 ヤバイTシャツ屋さん Tank top Festival in JAPAN TOUR 2019 in サンリオピューロランド」から選りすぐりライヴ映像とメンバーによるおもしろ解説を収録


『You need the Tank-top』特設サイト http://yabaitshirtsyasan.com/news/3310/
ヤバイTシャツ屋さん オフィシャルサイト http://yabaitshirtsyasan.com/

SHARE
RECOMMEND
RECOMMEND
CURRENT ISSUE

GRAPEVINEに出会えた喜び。最新アルバムの発売を記念して、田中和将のインタビューを公開!

#GRAPEVINE

音楽と人7月号の表紙は大森元貴。ソロ名義の楽曲リリースについて、その理由を語る

#大森元貴
CURRENT ISSUE

和田唱が語るTRICERATOPSの活動休止とバンドへの憧れ

加藤ひさし(THE COLLECTORS)自伝『イギリスカブレ』重版記念、トークライヴ開催!

#THE COLLECTORS

【連載】言の葉クローバー/兼丸(the shes gone)が『コーダ あいのうた』のセリフから受け取ったもの

#the shes gone , #言の葉クローバー
LOAD MORE

© 株式会社音楽と人

FOLLOW US
タグ一覧
ライヴレポート / 最新号 / WEBオリジナル / アーカイヴ / 編集部通信 / BUCK-TICK / 怒髪天 / 映画 / 小室ぺいの自由研究 / DEZERT / NITRODAY / 言の葉クローバー / 僕たちプロ野球大好きミュージシャンです! / GRAPEVINE / 音楽と人LIVE / PHY / 9mm Parabellum Bullet / MUCC / THE COLLECTORS / フジファブリック / 中田裕二 / a flood of circle / noodles / go!go!vanillas / the pillows / SixTONES / 銀杏BOYZ / THE BACK HORN / Mrs. GREEN APPLE / The Birthday / 後輩ノススメ! / BRAHMAN / ヤバイTシャツ屋さん / SUPER BEAVER / ENDRECHERI / UNISON SQUARE GARDEN / 吉井和哉 / KinKi Kids / ストレイテナー / 2019年プレイバック&MY BEST MUSIC / 忘れらんねえよ / The Songbardsの描写探訪 / The Songbards / THE YELLOW MONKEY / 山崎まさよし / aiko / ポルノグラフィティ / メリー / 社歌を作ろう! / THE NOVEMBERS