すべてが終わる瞬間に「生きててよかった」って言えるかもしれない。それがこのバンドの芯にあるもの
さて。セカンド・シングル「GUIDE」の話をしましょうか(笑)。
「お。ようやく(笑)」
このシングルの1曲目に「ディスタンス」が再録されて入ってますけど、おそらくいろんな気持ちが込められているんでしょうね。
「〈GUIDE〉って、道しるべっていう意味があるんですけど、もともとこの4曲は、全部個人的な曲なんです。〈ディレイ〉が一番わかりやすいんですけど、死んだ友達が僕のためにやってくれたこと……もしかしたら僕のためじゃなかったかもしれないけど、感謝しているから一生忘れないよ、って曲なんですよね」
その友達はカワノくんにとってどんな人でしたか?
「僕が上京してきて、バンドも組めず、ライヴハウスからも出演を断られ、高円寺で弾き語りしてる時、たまたま観に来てたヤツです。すっげえ怖い風貌だし、入れ墨いっぱい入ってて、ピアスもじゃらじゃら。そいつがいつも真剣に聴いてくれて。週に2回やってた弾き語りに毎回来るんですよ。場所も言ってないのにいつもいるから、不思議に思って話してみたら、家が近所で、お前の声がうるさくて寝れないと(笑)」
ははははは。
「駅前とか商店街でやれ、って(笑)。そこから仲良くなったんですけど、初代スタッフみたいな存在で。集金を手伝ったり、そのまま呑みに行ったりしてて。すごく変なヤツでした。親からは絶縁されてるし、言えないようなこともいっぱいやってた。でも不思議とウマが合って、俺がバンドを組むのを応援してくれてたんですよ。でも、いざバンドのメンバーが揃ってきた頃、彼の中で人生に絶望することがあったらしくて。詳しくは知らないんですけど『俺は疲れた。自分が見たいものを見てから死ぬ』って言い残して、海外に行っちゃって。ちょうどその頃〈#2〉を作って。吉祥寺でPK Shampooと2マンしたんですけど、その時に彼のお姉ちゃんから連絡があって。もう荼毘に付したって聞いて……。〈ディレイ〉はその時初めてやったアレンジのまま収録してるんです。弾き語りの頃からやってて、あいつはこの曲、大嫌いだったんですけどね(笑)。でも俺にとっては大切な曲になっちゃったから」
「ディスタンス」を入れたのは何で?
「そもそも〈#2〉のラストに〈ディスタンス〉が入ってて。あの5曲は、ほんとやけっぱちで、逆ギレに近い感じで作ったんですけど、さっきの話と同じで、俺はしょせん落伍者でカスなんだから、それを表明しないと、全部ウソくさくなると思ってたんですね。僕もインスタで日記書いてますけど、あそこではいいことも悪いことも書いて、時には軽蔑すらしてもらいたいんです」
要するに、本当の自分をちゃんとわかってくれ、と。
「そう。こんなウンコ野郎ですけどそれでもよければ、という気持ちと同時に、そういう部分を表明しておかないと、人として薄っぺらく思えちゃうというか。人と殴り合いになった。金を払わず逃げた。カスに嵌められた。人を傷つけてしまった。謝れないまま会えなくなった。そんな時に感じる後悔や寂しさ、悲しさ……俺みたいなやつにしか唄えないことが、そこにあるような気がするんですよ」
なるほどね。
「で、そういう時に、俺、死ななくてよかったな、ここで生きててよかったな、って思えるんです。ライヴの時もそうだけど、ロマンを感じるんです。そしてそういう瞬間は、生きてたら訪れるかもしれないものだから、それまで生きててもいいんじゃないか、って」
ウンコだ愚痴だって言ってた自分の歌が、人に対して向いたというか。
「そうですね……1年前だったかな。初めて自主企画を組んで、下北沢デイジーバーでリリース・パーティーをやったんですね。その頃、ライヴやっても動員は10人くらいだったから、40人も来たら御の字だなと思ってたら、対バンの解禁前に、200件以上予約が来たんですよ。ギチギチまで人入れてやったんですけど、その前日、めっちゃメールが来たんですね。いろんな子たちが、いろんな気持ちを抱えてライヴに来るんだなって……正直、ステージ立つまでは何も思ってなかったけど、それがステージに立って、フロアのほうを見たら、みんな泣いてたんですよ。何が嬉しかったのか、胸に来たのかはわかんないけど、抱えてたいろんな気持ちがひとりひとりから溢れ出てたのがわかって。俺〈ねえ、泣かないでよ〉って思ったんです」
うん。
「それと同時に、俺、生まれてきても生きててもどうでもよかったけど、死ななくてよかったな、って思えて。何かが胸にこみ上げてきて。その時の1曲目が〈ディスタンス〉だったんです。あの日初めて、自分がバンドをやる意味がはっきり見えたような気がして」
どうしようもないダメな自分だけど、誰だって生きてて良かったって思える、そんな一瞬があるんだ、と。
「そう。あの日に俺が感じた、死ななくてよかった、ここにいてよかったって気持ちを、みんな持てるんだぜって。それがあれば、もうすべてが終わる瞬間に『生きててよかった』って言えるかもしれない。それがこのバンドのテーマっていうか、芯としてあるものだって言い切れるから、〈ディスタンス〉は自主レーベル一発目のリリースの1曲目にしたかったんです」
いい話でした。
「だから今は早くライヴやりたいです!」
文=金光裕史
NEW SINGLE「GUIDE」
※ライブ会場・CRYAMY公式通販限定
01 ディスタンス
02 誰そ彼
03 delay
04 戦争(cheap ver.)
通信販売ページ https://cryamyshop.theshop.jp/
CRYAMY オフィシャルサイト http://cryamy.tokyo/