3月に発表した「よあけのうた」は、TVアニメ『呪術廻戦』「死滅回游 前編」のエンディングテーマというトピックも相まり、jo0jiの名前がさらに広がるきっかけとなった。そして、その楽曲を引っ提げて行われたツアー〈よあけまえ〉では、ステージに立つ人間の覚悟のようなものが滲む、素晴らしいライヴだった。そんな中で届いたニューシングル「I-BULL」。TVアニメ『BLEACH 千年血戦篇‐禍進譚‐』のオープニングテーマに書き下ろした表題曲は、さまざまな要素が絡み合うカオティックで勢いに溢れた一曲で、そこでもjo0jiは力強く頼もしい言葉を掲げている。いよいよ本格的に、多くの人の期待を飲み込む活動になるのかと思い、本人に話を聞いてみたところ、彼はどこまでも自分らしく、その足を前へ進めようとしていた。自分の気持ちに素直であろうとするjo0jiだからこそ、彼の作る音楽はやっぱり信頼できる。
(これは音楽と人2026年9月号に掲載された記事です)
〈よあけまえ〉のツアー、どんな手応えでしたか?
「やってよかったなって思えました、本当に」
大掛かりなステージセットが組まれていて、最初は乗り気じゃなかった、とアンコールの時に話してましたけど。
「そうですね。その時期、ライヴだけじゃなくて、いろんなことが上の空だったんですよ。『呪術廻戦』のエンディングをやらせてもらって、『注目度が上がってる』って周りから言われても、実感はまったくなくて。自分はなんも変わんないのに、周りだけが変わっていってる、みたいな。そういう中で大掛かりなステージプランを提案されて、〈どこに向かってるんだっけ?〉〈はたしてこれは俺に見合ってるのかな?〉って気持ちが生まれてきちゃって」
周りの状況に気持ちが追いつかなかったというか。
「自分だけ置いてけぼりを食らってる感じがあったのかもしれないです。みんなが思い描くjo0ji像と本来の自分があまりにも違う感じがしちゃって。〈そうじゃねぇんだけど〉みたいなことに、これからなっていきそうだな、っていうのをボヤ~っと見てましたね」
完全に他人事ですね。それだけ上の空だったと。
「対岸の火事を見るような感じでした。でも本番に向けてリハは過不足なくやれたし、嫌なことはやってないんで。やる気を出すのに時間がかかっちゃったんですよね」
どうしてそんなにやる気を持てなかったんですか?
「なんでしょうね? MCでも言ったと思うんですけど、やっぱり人からあまり期待をかけられて育ってないんで、ほっといてくれっていうのが、自分の中ではデカくあるんです。周りから気にかけてもらえばもらうほど、ありがたいことなんですけど、どんどん鬱陶しくなっちゃう性格で(笑)」
そっとしておいてくれよ、と。
「みんなプレッシャーをかけようとしてるわけじゃなくて、むしろ褒めるつもりで言ってくれてただけなんで、悪気はないんですけど。ただ、人が言葉を増やせば増やすほど、自分のやる気が削がれていって」
その期待に応えましょう、とはならない?
「期待されるのはうれしいけど、〈jo0jiならこんなこともしてくれるだろう〉って、その人の理想のjo0ji像に当てはめられてる感じがしちゃうんですよね。あまのじゃくだから、それに流されたくない気持ちがあるのかもしれないです」

でも実際にライヴをやって、「やってよかったな」と言える結果になったわけで。
「うん。すごい楽しかったです(笑)。本当にやってよかった。自分ひとりでやってたら、たぶんあんなことをやろうなんて一生思わないし、そういうのを提案してくれる人がいてよかったし、なんだかんだ意見を聞いてよかったなとも思います」
ライヴを観ながら、ステージに立つことに対して、腹を括ったというか、覚悟のようなものを感じたんですよね。
「そうですね。自分を晒し上げる覚悟ができたというか(笑)。これまで〈自分はこうじゃないとよくない〉とか、〈自分の好きだったアーティストはこんなことやらない〉とか、そういうものに雁字搦めになってたけど、もう何でもやりゃいいなと。エンターテイナーになりたいわけではないけど、自分が嫌じゃなければやればいいし、結果的にそれがエンタメになるなら、まあそれもいいかって。自分で全部を操作しようとしなくなった。そういう腹の括り方はしたかもしれないですね」
自分は楽しくやるから、あとは好きに料理してください、みたいな。
「それにケチはつけますけどね(笑)。でも、最終的に自分が楽しめていれば、見てる人にもそれが伝わるだろうから」
そうですね。で、この「I-BULL」も、さらに一歩先へ向かうようなエネルギッシュさを感じまして。
「新しい扉をこじ開けた感じはありますね、この曲も。『BLEACH』はもともと大好きな作品だったし、自分が『BLEACH』に対して思うもの、音も言葉もメンタルも、すべてを詰め込みたいなと思ったんです」
ライナーノーツには〈勇気とは何か〉を提示する曲にしようと思った、とあります。
「タイアップの話をいただいてから漫画を読み返したんですけど。『ジャンプ』の作品って、向こう見ずな主人公が多いじゃないですか。なりふり構わず突っ込んでいく主人公を見て、読んでる少年たちも熱くなる、みたいな。でも『BLEACH』の中で、浦原喜助という人物が『死ににいく理由に他人を使うなよ』って言う場面があって。黒崎一護がルキアを助けに行こうと熱くなってる時に言われるセリフなんですけど。それがすごく刺さったんですよね。なんの算段もなしに突っ込むのって、無謀なだけで勇気じゃない。そこで失敗したら誰も幸せにならないわけで。で、俺にとっての勇気の出し方は、無鉄砲と冷静さや臆病の間にあるんじゃないか?っていうところに落ち着いて、歌詞を書いていきましたね」
それまで、向こう見ずな姿勢や無鉄砲でいることが勇気ある姿勢だし、そういうのが大事だという考えだった?
「いや、むしろそういう無鉄砲なものに対して、自分は冷ややかな目で見てたんですよ。だから熱くなること自体が少なかったんです。わーっと盛り上がる体育会系のノリもあんまり好きじゃなかったし。大人になってからそれがさらに加速して、熱くなる機会もどんどん減っていたけど、それが人生を面白くなくしてるんじゃないかって思うようになって」

情熱や熱量で突っ走る、みたいなものを冷ややかな目で見てしまうのは、自分のどういうところから来てたと思います?
「それこそ、期待をかけられたくないってところにもつながると思うんですけど、一生懸命頑張ることを強要されるのが昔からイヤだったんですよ。〈みんながやってるからやる〉とか、〈汗水垂らしてやることが美徳〉、みたいなノリがすごい嫌いで。学校とかって、みんなで汗水垂らして頑張って、負けたら泣いてっていうのが〈いいもの〉みたいに扱われるじゃないですか」
一致団結とか。
「そういうのが気持ち悪いなって、子供の頃から思ってたんです。だから冷笑サイドにずっといたんですよ。かといって、一生懸命なことを全否定する気もなくて。俺の中にも一生懸命頑張りたい気持ちや瞬間は当然あるし、そういう部分を持ってなきゃ生きづらいぞっていうのもわかってるんで。ただ、自分が冷笑サイドにいたのは、結局周りについていけなくて、そうしないとやってられないところも絶対あったからで」
自分を守るためでもあったと。
「そうそう。だから、一生懸命頑張るやつがいてもいいし、その輪に入れないやつがいてもいいじゃんっていう。俺だって曲を作る時に、ちょっとした熱さや純粋さを思い出して曲がよくなることもあったし。で、そういう自分の中にある小さな炎は燃え上がらせるべきだなと今回は思ったから、普段は冷笑サイドの俺みたいな人間が、あえて〈燻ってんじゃねえぞ〉って、ど真ん中のクソ熱いものを、この曲で思いっきりやろうとしたって感じですね」
それで〈貴方の手を握って明日を拓く/全部任せて!〉と、珍しくまっすぐ力強い言葉を使っているわけですか。
「よく、『頑張ってる人に頑張れって言うのはよくない』って言うじゃないですか。でも関係ねえって思うんですよ。気を遣われて、距離を測られるほうが、逆に人との距離を感じて寂しくなったりする気がしてて。だからちょっとバカなふりして、無理やりにでも引っ張ってみる。その強引さも時にはあっていいんじゃないかなと。それで救われる人もたぶんいると思うんですよね。実際、俺がそうなんで」
普通に「頑張れ」とか、それこそ「期待してる」って言われたら、きっとへそ曲げるタイプですよね?(笑)。
「うん(笑)。でも、鳥取で何もしてなかった俺をいろんな人が無理やりステージの上に引っ張り出して、ライト当てられて唄うことになって。だけどそれが本当に嫌かって言われたら別に嫌じゃないから、こうやって楽しく音楽やれてるわけなんで」
この前のツアーの時もそうだったし。
「だから、冷笑してる自分もどっかで本当は引っ張ってほしいっていうか、待ってる自分がいるんですよね。で、実際にやってみたら楽しいこともたくさんある。それってひとりじゃ気づけない気がするから」
なるほど。〈全部任せて!〉の歌詞を見た時、ツアーと同様、いろんなものを背負う覚悟を決めたんだな、と思ったんですよ。でも、こんな自分だから唄えるものというスタンスは変わってない。今回も、冷笑してしまう自分と似たような人のために、強引に引っ張り上げる熱いものを作りたかった、と。
「そうですね。それがすごく救いになることがわかってるので。この曲は強引さがテーマでもあったんです。相手に遠慮して、可能性が狭まる世の中になってほしくないし、それこそ人前に立たせてもらうようになった今の自分だからこそ書ける曲ができたかなと思います」

今の話を聴いて、ありのままの自分で行くぜ、という姿勢を唄った「YOROSHIKU!!!」がカップリングに入ってるのも納得しました。
「これは、最初に話したような、誰かの思い描いた自分でいなきゃいけないって抱えてたストレスを全部手放すことを唄った曲ですね。イメージは『男はつらいよ』の寅さんです。それで、『恐惶万端引き立ってよろしくお頼ん申します』っていう言葉を借用してるんですけど。寅さんって、みんなから好かれてる粋なおじさんのイメージだったんですけど、何作か観たら、けっこうダメ親父というか」
どうしようもない大人、って感じですよね(笑)。
「どうしようもねぇけど、なんか憎めねえな、このおやっさんっていう。その感じがめちゃくちゃよかったんですよね。だからこの曲の主人公は、そういう厄介野郎です(笑)。お前らの意思とか関係ねえから、っていう俺の怒りでもある」
でも「YOROSHIKU!!!」って言うことで、そんな自分も許してね、みたいな愛嬌があって。
「そうそう。俺みたいな人間は、みんながやる気を出してやってくれてるのに、『やる気出ねえ』とか平気で言っちゃう。周りからしたら、うぜえなって瞬間がめちゃくちゃあると思うんですけど、そういうのもご愛嬌じゃない?って、自分に都合よく言ってるところもありますね(笑)。でも、そういうやつがいることも誰かの救いになる気もするんですよ。品行方正を求められる世の中だけど、素直でいるほうがいい気がするので」
みんな素直でいたいけど、それができないから、周りに合わせたり、無理して頑張ったりするわけで。
「無理して合わせるのも悪いことじゃないですよ。みんなが好き勝手にやってたら、世の中どうにもならなくなっちゃうんで。ただ、素直になれる瞬間もあったほうがいいと思うから、そういう時の手助けに、この曲がなれたらいいなと」
「YOROSHIKU!!!」には〈目的地は定めない〉とありますけど、今後どんな景色が待ってると思います?
「本当に何も考えてないっていうのが正直なところですね。たぶん周りの人は考えてるんでしょうけど。俺の中ではもう夢も叶えたいこともないんですよ。しいて言うなら、武道館をやりたいくらい。それくらい今が幸せなので。ロードマップとかブランディングがどうとか、あるじゃないですか。そういうの、俺には向いてないんですよ。それはチームのみんながやってくれて、俺は乗っかるだけでいいかなって。音楽仲間と一緒に遊んでる今がすごく楽しいから、この幸せをどうにか続けていけたらいいなってことだけ思ってます」
文=竹内陽香
撮影=野村佐紀子
ヘアメイク=高草木剛
スタイリング=渕上カン
NEW SINGLE
「I-BULL」
2026.09.02 RELEASE

- I-BULL
- YOROSHIKU!!!
- zokkou
- I-BULL Anime size
- I-BULL Anime size -instrumental-
〈jo0ji one-man tour 2026 「いかり」〉
11月1日(日)神奈川県 KT Zepp Yokohama
11月3日(火・祝)石川県 金沢EIGHT HALL
11月8日(日)大阪府 Zepp Namba(OSAKA)
11月14日(土)香川県 高松festhalle
11月15日(日)広島県 BLUE LIVE HIROSHIMA
11月22日(日)北海道 Zepp Sapporo
11月28日(土)福岡県 Zepp Fukuoka
12月5日(土)愛知県 Zepp Nagoya
12月13日(日)東京都 Zepp DiverCity(TOKYO)
12月19日(土)宮城県 SENDAI GIGS
