ネクライトーキーの新作「煙とブルー e.p.」は、バンドの充実っぷりが伝わる作品だ。TVアニメ『ヤニねこ』のエンディングテーマとして書き下ろした表題曲を始め、ネガティヴやブルーな気持ちをポジティヴに昇華してくれるような、ネクライトーキーらしいポップ/ロックな4曲を収録。昨年、メジャーデビュー5周年を迎え、来年には結成10周年となるが、バンドのアンサンブルはますます強固になり、もっさ(ヴォーカル&ギター)の歌声もさらに伸び伸びしているように感じられる。
本誌の連載『ネクライトーキーもっさの弱肉強食サバンナライフ』では、些細なことであたふたする彼女の日常が伺えるが、そんなもっさにも心境の変化が訪れている様子。フロントマンとして少しずつ頼もしくなっている彼女の現在を、このインタビューから感じてもらいたい。
去年はメジャーデビュー5周年イヤーでEPリリースや主催フェスなど、企画が盛りだくさんでしたが、今年はどんな1年にしたいと思って始まりましたか?
「そうですね、5周年が終わったからといってそれでこと切れることはなく、今度は結成10周年がもう来年に迫っていることに気づいて。そっちもすごいなと。よくわからない5人が集まって、10年も一緒に音楽をやってきたことも大きな節目ではあるので、今は10周年に向けていい音源を作ろうという、うっすらとした気合いを感じてます」
うっすら(笑)。来年に向けての助走期間みたいな。
「はい。私、『TORCH』(2024年リリースのアルバム)の時にものすごく張り詰めていたので、5周年はお祝い事を楽しむモチベーションでいたんですね」
『TORCH』のインタビューの時に、成長したい、殻を破りたいという話をしてましたね。
「そうなんです。でも自分の性格的にずっと張り詰めてるとしんどくて、5周年はちょっと気楽に楽しむモードで過ごして。そしたら揺り戻しじゃないですけど、終わってから、また〈成長したい!〉って気持ちが出てきてて。もう一段階上に行ける場所が少し見えた気がしたので、自分なりにそこを目指したいな、というのがあります」
もう一段階上とは?
「なんて言うんですかね……いい意味で、自分にはできないことと、できることを選別できた気がして。自分にできないことを求めすぎてもしょうがないので、いいところを伸ばしていきたい、みたいな」
これまでは、できなくても無理して頑張ろうとしていたところがあったと。
「そう、なれない自分の理想像があったんです。いわゆる強いロックバンド像をイメージして、自分の性格に合わないのに誰かを鼓舞するようなMCをしてみたりして。それがたまに〈ちょっと今のは無理して言っちゃったな〉ってことがあるから、そういう違和感を流さないようにしたいなと」
これまではそういう違和感を受け流していたんですか?
「うーん、違和感にすら気づいてなかったかもしれないです。フロントマンとしてこういうことをしていくべきだ、って考えてたので。でも無理しちゃったなっていうのを放置すると、本当に違うものになっちゃいそうな気がしたんですよね。見栄を張っちゃったなとか、ちょっと強く見せたいと思っちゃったなとか、そういうものを違和感としてちゃんと捉えられたほうが、自分らしく強くなれそうだなと思うようになった、みたいな感じです」
それ、だいぶ大きな変化じゃないですか。これまでのもっささんって、自分の中の理想像を追いかけてるところがすごくあったと思うので。
「そうかもしれないです。いろんな強いバンドを見て、こうなりたいとか、ああならないと、っていうのはあったので。でも今は自分らしく本領発揮できることを目指したいなって思ってます」

5周年が充実していたからこそ、素直に自分を受け入れられるモードになっているところもありますか。
「たしかに。5周年は本当にいろんなことをやって、とくに〈オーキートーキーフェスティバル2025〉(9組のゲストを招いた主催フェス/昨年11月開催)でもらった刺激はだいぶ大きかったですね。自分たちが大好きなカッコいいバンドに出てもらって、みんなから愛をいっぱい受け取って。そういう中で、〈自分らしくいてもいいんじゃないか〉って気持ちが大きくなっていったところはあると思います」
今回のEPを聴いても、もっささんはもちろん、バンドとしても今すごく充実している時期なんだろうなと感じました。
「このEP、すごくよくないですか? めちゃくちゃお気に入りで。さっき『自分らしく』って言いましたけど、曲もそうなっている気がしてるんです。ポップですけど、ちょっと渋めな仕上がりになっているといいますか」
渋いかな?(笑)。
「ネクライトーキー基準で言うと、です(笑)。ちょっとだけ落ち着いている感じがするというか。どっしりしているみたいな」
ああ、確かにそれはわかります。重心がしっかりしているというか。
「〈煙とブルー〉や〈エレキの気持ち〉はシンセのポップな音も入ってて、ネクライトーキーのおもちゃ箱感はあるんですけど、それに頼っている感じがしなくて。ロックバンドとしてしっかりした基盤がありつつ、それを装飾として入れて遊べている。全体のどっしり感が、今のテンションにすごく合ってる気がしてます」
バンドとしての力強さや余裕のようなものを感じますね。
「(小さい声で)これが30代ってことですか?」
なぜ小声で言う(笑)。
「はははは。全員30代になったんですけど、みんな落ち着いたのかなって。わかんないですけど(笑)」
もっささん自身、昔とは違った落ち着きのようなものを自分でも感じていますか?
「それは実際あって。余裕という言葉が正しいかわかんないですけど、焦らずにしっかりやれてますね。歌もすごく気持ちよく唄えてて。最近、朝日さん(ギター)が作る曲の歌のレンジが少し下がってきてるんですよ。あまりキーが高くないというか。落ち着いたテンションの声を使うことが多いので、それも今の自分にすごくハマっていて」
それこそ、自分らしく唄える、みたいな。
「そうなんです! そういう声を出してこなかったわけじゃないんですけど、より低い部分が前に出てて、それが今の自分と矛盾がないから、すごく気持ちいいです」
朝日さんが書いた歌詞を見ても、焦燥感のようなものが薄まって、ちょっと自信が出てきたというか、そのままの自分を受け入れられる感覚が強くなっているのかなと思いました。
「ああ、どうなんですかね。自信がなかったわけじゃないと思うんですけど、確かに〈今どうにかしなきゃいけない〉って感じは少なくなったかも。怒りや焦りよりかは、ちょっと達観してきたというか。どうしようもないことに対して思うことはあるけど、それをただ見てる、みたいな感覚なんですかね」
