NITRODAYのヴォーカル&ギター小室ぺいが、自身が気になったものを独自の視点で調査&分析し、文章に綴っていくWEB連載。第五回は、ぐるぐる連なっていく人生の出来事について。
#5「らせん」
ねぎまが……美味しい、ピアノ曲が……胸に染みる、自転車で走り回るのが……楽しい。最近よく、子供時代は大して分からなかったものの良さを再発見する。その当時から今まで色んな体験をして、僕は感じ方をちょうど木の根っこみたく伸ばしながら変化させてきたってわけだ。それでもまだ分からないものはたくさんあるし、きっとこれから先も同じように成長を繰り返していくんだろう。このことは別に心配することじゃなく、ただタイミングに合わせて知らない世界を知っていくっていうそれだけのことなのだ。
だけどここでふと思い起こされるのは、何ともなく過ごしていた小さい頃の記憶、もっぱら中学校に上がるまでのことだ。東京から大阪に引っ越してすぐお父さんが出て行った家で暮らし、学校では特別仲のいい友達はいなくて(別に友達がいなかったわけじゃない)、毎週土日は野球の練習で遊びにも行けない。夜中起きてきて家族に隠れてこっそり見ていた推理ドラマ、死んじゃった飼い猫、クラスの子としたささいな喧嘩、短かった髪、汗、砂、筋肉痛。はっきりと覚えてるのに遠くにあって、懐かしいけどやりきれなくて、取り戻したいような蓋をしてしまいたいような。なんでこんな変な気持ち? 未練がましい生き物? タイムスリップしてやり直せば気は済む? でもあの時こうしておけばっていう絶対のものがあるわけじゃない、どうせまた同じこと。よくわからない、もうわからない。この性格のせいか、く……。それならいっそ全く違う環境に生まれてきて僕という人間丸ごと違ったふうに育ってくればよかったのか。
ってわけじゃないんだけど、この頃は映画を見たり、小説・漫画を読んだりという時間がどんどん増えてきていて、登場人物に自分を重ねては一喜一憂を繰り返しているのだ。こんな作品の楽しみ方だって昔は知らなかった、ように思える。全ては木の根っこ。わけもわからずぐるぐる回るらせんの日々は2019夏にさしかかる。今度こそ、今度こそ、今度こそ……。
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Information
新作ミニアルバム(タイトル未定)を10月23日にリリース。
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