来年2月にデビューから30年を迎えるTHEE MICHELLE GUN ELEPHANT。バンドのデビュー30周年の節目に始動したプロジェクト〈THEE 30TH〉に呼応した『音楽と人』2025年11月号の表紙巻頭特集に続き、本サイトでも彼らの歩みを振り返ります。今回は、4thアルバム『ギヤ・ブルーズ』リリース時に表紙巻頭で特集した際の4人インタビューを再掲載。この原稿でも少し触れられていますが、アルバムツアーのファイナルは、オールスタンディングで行われた横浜アリーナ公演でした。



(これは『音楽と人』1999年1月号に掲載された記事です)
ついに世に放たれた超ド級のロックンロール・アルバム『ギヤ・ブルーズ』!おそらく今頃は、ミッシェルのドスの利いたガレージ・サウンドが日本中で力強く響き渡っていることでしょう。そしてこのアルバムを耳にしたリスナーの中には「やっぱりミッシェル最高!」と思ったファンもいれば、「いったいどんなやつらなんだ?」と感じた人もいるに違いありません。そこで本誌では今だからこそ、あえて強引なインタビューを敢行! 今さら本人たちに訊けない基本的なことから、意外と知られていない事実、ちょっと怖くて訊けない謎まで彼らにぶつけ、ビギナーからマニアまで、ミーハーからオヤジまでが楽しめる取材を企画してみました。これであなたも、人間性も含めたミッシェルの魅力に打ちのめされることうけあいです。会話の中から4人の飾らない人柄と強い友情と熱い男気と音楽への思いを感じ取ってもらえたら幸いであります。
「振り返らず
錆びた風は続くだろう
ざらつくダニー
かき鳴らしていくんだろう」
そう、永遠に続いていくであろう4人のブルーズを感じながら、さあいってみよう、ミッシェルさんのすべて!
今回はミッシェルに関するさまざまな謎を考えてきたんですよ。このアルバムで、新しく興味を持つ人も多いのではと思って。
ウエノ「何? デビューした頃のインタビューみたいなもん?」
クハラ「再確認してもらおうということ?」
そういうこと。「またかよ」って質問もあるかもしれないけど、そこは一つよろしく。
クハラ「はい」
まずは〈基礎編〉からです。「バンド名の由来を教えてください」。
クハラ「はい、チバから言います」
チバ「『マシンガン・エチケット』」
『マシンガン・エチケット』ってダムドの?(注/ダムド=イギリスのパンク・バンド。『マジンガン~』は78年発表のアルバム)
アベ「うん、ダムド」
……を?
クハラ「棒読み」
チバ「間違えて〈ミッシェル・ガン・エレファント〉って読んだ奴がいて。〈それ、いいじゃん〉って」
クハラ「昔はインチキ言ってたんだよね、みんなして」
アベ「〈ポットの名前だ〉とかさ」
ポット……あ、象印ってことか(笑)。
ウエノ「ソ連軍の飛行機の名前だとかさ」
チバ「しかもソ連だよ!? ロシアじゃねえんだからな(笑)」
クハラ「冷蔵庫の名前だとか(笑)」
今思うと〈ガン〉という濁音が入ってるのが、すごくいいなぁと思うけどね。
チバ「うん……僕らはね、もう……長いから」
わかりました。えっと、「〈THE〉にもう1個〈E〉が付いてるのは何でですか?」
チバ「あれはヘッドコーツとマイティ・シーザーズの……影響。まあなんか〈THEE〉っていうのは古語みたいな感じらしいんだけど(注/ヘッドコーツ、マイティ・シーザーズ=いずれもイギリスのガレージ・バンド。ちなみにチバはヘッドコーツの日本編集のベストCDの選曲をしている)」
ああ、イギリスのほうの?
チバ「うん。で、なんかちょっと古くさいっていうニュアンスが……あるらしい」
ヘッドコーツの人とは会ったことあるんだよね?
チバ「うん」
ウエノ「向こう(ロンドン)で」
あれは「ルーシー」(=「ゲット・アップ・ルーシー」、97年8月発売のシングル)のレコーディングの時か。
チバ「この間演った時、ウチのライヴにも来てたよ」
ウエノ「ロンドンでね」
どんな人たちなんすかね?
チバ「ビリー・チャイルデッシュは、ただの頑固オヤジ」
アベ「で、ドラムは陽気なおじさん」
チバ「ベースもただの酔っぱらい(笑)」
クハラ「その頑固オヤジにつきあってるいい人たちって感じかな(笑)」
はい。「自分たちのバンドを〈ミッシェルさん〉と呼ぶのは何でですか?」
クハラ「わかんない、いつ頃からだろ?」
ウエノ「っつうか、もう最近、言わないんじゃないの?」
チバ「うん」
チバ「誰も〈ミッシェルさん〉って言ってないと思うんだよ(笑)。青木さんだけなんじゃないの?」
でもデビュー当時は、まだ名残りがあった覚えがあるんだよね(笑)。
チバ「まあ何かでポロッと言ったんだよね」
ウエノ「まあ名前、長いからね」
次です。「メンバーにキーボードを入れるつもりはありませんでしたか?」。
チバ「ありません(←即答)」
入れようと思ったこともない?
チバ「ない。でも1st(96年3月発売の1stアルバム『cult grass stars』)ではハモンドを弾くオヤジに弾いてもらったけど」
そうだね。で、ガレージ・バンドでも鍵盤入れてるバンドはあるじゃない? でもギターだけでやるのは何でだったの?
チバ「……誰も弾けなかったから(笑)」
(笑)つうか、鍵盤弾ける奴呼んでくりゃいいってことになるじゃん、それなら。
チバ「必要ない(笑)」
クハラ「4人が限度。何事も」
ウエノ「いなかったしね、あんまね。周りに弾ける人」
そうすか。「『ギヤ・ブルーズ』のジャケットもですが、黒のスーツで揃えるという発想はどんなところから出てきたのですか?」。
ウエノ「自然と」
クハラ「黒だから、おのずとみんな(服を)作りやすいんだよね」
最初の頃は違う衣装でやってたの?
ウエノ「『cult~』の時はみんなあれじゃん、灰色。今年になって灰色流行ってきてるでしょ? 俺ら先取りだから、2年も(笑)」
クハラ「ライヴん時とかツアーとかでは、みんな色とかバラバラだったりするし」
じゃあ揃えるというのは、なんとなくだったりするんですか?
チバ「なんとなくじゃないかなあ」
クハラ「まあなんか、〈みんな持ってるから黒にすっかあ〉ぐらいの?感じ(笑)」
ウエノ「黒が一番バシッとしてるしね」
はい。〈基礎編〉はこんなところで、続いて〈パーソナル編〉。「メンバー名がカタカナなのは何でですか」。
クハラ「……頭、悪いから(笑)」
(全員微笑)
クハラ「のちに漢字書けなくなったりするんですよ、そうすると」
チバ「ほら、ピート・タウンゼント(60年代以降、イギリスで活躍したビード・バンド、ザ・フーのギタリスト)とかだったら、絶対カタカナじゃん?」
(全員失笑)
外国人気取りだ?
チバ「そう、まぁね。最初はね」
でもナカグロ(・)がないよね。
ウエノ「ナカグロ!? それいいねえ(笑)」
クハラ「これからナカグロだね(笑)。だったらもうクハラ☆カズユキにする(笑)」
ウエノ「ダイアモンド☆ユカイみたいにね」
チバ「でも何でカタカナにしたんだろ? 何か理由あったのかなあ……。まあ読みやすいしさあ……いいじゃん」
ウエノ「漢字だと読めないよ。普通の上野駅のウエノじゃないからね」
あ、ほんと?
ウエノ「うん……っていうことにしといて」
(全員苦笑)
ウエノ「もうクハラなんか絶っ対読めないよ。難しい! 古語だから」
(笑)「本名がどんな漢字なのかは教えてもらえませんか?」。
ウエノ「教えられないね、これが芸名だから。載っけないんだったら教えるよ、もちろん」
それじゃ意味ないので(笑)。キュウちゃんのアダ名は本名と関係あるの?
クハラ「そうだね、うん」
はい。えー、「メイクをしたことはありますか?」。
チバ「ある。ビデオでね」
アベ「(目の周りの)クマ」
あ、「バードメン」(97年10月発売のシングル)?
ウエノ「うん。でもビデオぐらいかなあ」
チバ「あれ? ……何であのビデオ、クマ作ったんだっけ?」
ウエノ「なんか座って、〈お願いします〉って(←メイクされるポーズ)」
アベ「書かれてさ」
チバ「何かがあったよねえ? ……あ、ジャケの撮影ん時に!」
ウエノ「『チキン・ゾンビーズ』(97年11月発売の3rdアルバム)のジャケットでクマを作って、そん時に」
アベ「ああ、そうだそうだそうだ」
ウエノ「クマっつうか……不健康そうな人」
クハラ「最近はメイクしなくても、自然にクマができるようになりました(笑)」
