オオスカ(ヴォーカル&ギター)がほぼメインヴォーカルを担うファーストアルバム『public melodies』と、マナミオーガキ(ヴォーカル&ベース)が全曲でメインを張るセカンドアルバム『fragile Report』。2枚の作品が揃うことでようやく、Nikoんはメンバー2人が対等にフロントマンを務めるバンドである、という事実が見えてきた。そして昨年のメジャーデビュー前後から常時続いた全国ツアーが、バンドの骨格にしなやかな筋肉をもたらした。とくに印象深かったのは今年2月に行われた〈アウトストアで47〉の最終日。披露されたのはすべてマナミ・ヴォーカルの楽曲で、とことんタフに、どこか楽しそうな表情さえ浮かべて唄う彼女の隣で、オオスカは「このツアーを廻って自信がついた。俺じゃなくて、バンドに」と語っていたのだ。
もっとも〈アウトストアで47〉は並走するツアーのひとつに過ぎず、Nikoんはまだまだハードな全国行脚の真っ最中。すべてが収斂していく千秋楽は、3月21日、バンド史上最大キャパのO-EASTワンマンとなる。いわゆる小バコをメインに、ひとりひとりと直接向き合うことを信条としてきた彼らが、O-EASTを目指した理由。そこで見せる今のNikoんとは。
現在、複数のツアーが並走中ですが、なんでこんなに忙しいことになってるんですか?
マナミオーガキ「……なんでだろう?(笑)」
オオスカ「まぁでも一応コンセプトがそれぞれあって。CD買った人が来れる47都道府県ツアー〈アウトストアで47〉が今終わったところなんですよ。で、同時にやってた各地方シリーズの〈Re:TOUR〉は、CD買ってなくても観に行ける、まぁそこでCD買ってくれたら嬉しいっていうのも含めたツアーで。あと今やってる〈fragile Reportツアー〉はほんと正真正銘のアルバムリリースツアー。個人的にはちょっと物語的というか、自分たちで作った伏線を各地で回収できたら嬉しいな、みたいな形になってますね」


今ってCD買うのもハードル高いじゃないですか。ファンそれぞれの熱量を試す意味もありますか。
オオスカ「ある。あるし、CD買ってくれる時点で熱量は高いんだけど、そういうお客さんをさらにライヴハウスに連れて行く目的もあった。それこそハタチくらいの人もいれば、初めてライヴハウス来たって言ってる40歳くらいの人とかもいたり」
マナミ「うん。みんなCDを買う習慣ってもうなくなってたりするけど、でもこの仕掛けを楽しんでくれてる印象がすごくあって。CD買わないと来れない、CD買わないと行けないことを面白がってくれてる。『久しぶりにCD買って、CDプレイヤーまで買っちゃいました』って話してくれるお客さんも、思ってたよりいっぱいいましたね」
ただ、どう考えても「今CDが最高だぜ」って言うのが目的ではないと思うんです。この仕掛けでNikoんが目指したものって何になりますか。
オオスカ「もちろんCD媒体が最高だって言いたいわけじゃなくて。もっと手間をかけてほしい。一個手間をかけたものって自分の中で記憶に残るじゃないですか。めっちゃ高い山に苦労して登ったらずっと覚えてると思うし。そういうふうに俺たちは音楽を作ってるから、同じように音楽を買って聴いてくれる人がいたら平等になれる気がする。今、サブスクで30秒だけ聴いて『あ、アルバムよかったっす』って言われる可能性もゼロではないですよね(笑)。でもCD買ったなら一回は全部聴くと思うんです。それがあると俺たちもちゃんと感謝できるし、心からありがとうって言える。そう言いたいがためにこういうツアーをやってるところはあるかもしれないですね。ちゃんと全曲に向き合ったうえで、良かった、悪かったって言われたい」

はい。そして2月15日、渋谷WWWで見た〈アウトストアで47〉のファイナルは全曲マナミさんの歌唱曲で統一されていました。
オオスカ「あの日だけですね。あの日の内容はO-EASTのワンマンで、ライヴアルバムとして発表するんですけど、ツアーでぺやんぐ(マナミの愛称)が全部吸収したもの、得たものをちゃんと作品に変えてほしかったところはあって。そこに俺の楽曲はなくていいと思った。自分の楽曲だけやって、いいも悪いも自分で決めちゃう日があってもいいなって。だからぺやんぐメインで廻ったツアーの集大成的な感じになりましたね」
ほんと、〈マナミ超かっけぇ!〉って思うライヴでした。たとえば「とぅ〜ばっど」のロック的な大胆さ、あとは「グバマイ!!」の明るさとか、音源よりも今のほうが強くなっています。
マナミ「あ、自分でもその感触はありますね。その2曲はとくにライヴ映えするというか、楽曲の魅力とか持ち味が一番ダイレクトに伝わるのかな。自分でも音源より気持ちが入ってる。ライヴ盤のほうが楽曲として仕上がってる感じになってると思います」
オオスカ「結局このツアーで一番楽しかったし大変だったのが、ぺやんぐがどういうライヴをしたいか、だったんですよ。毎回『どういうライヴをやりたい?』『どういう歌を唄いたい?』っていうことを話したかもしれない。そこに対して俺とサポートドラムも、自分たちのアイデンティティとか、〈ぺやんぐのバックバンドじゃねぇぞ〉っていうところを見せていく感じもあって。でも起点になるのは、〈ぺやんぐがどう思うか〉だった」
出てきた答えって何でした? マナミさんはどうありたいのか。
マナミ「……なんだろう? 今現状で思うのは、フロントマンが2人になったってちゃんと言えるようにしたいなってことで」


もともとマナミさん、Nikoん以前はフロントマンをやったことがないですもんね。フロントマンに必要な気持ち、覚悟って何でしょうか。
マナミ「えっと……暴君になることかな」
オオスカ「いいっすね(笑)。わかってきたっすね」
マナミ「言い方はアレですけど、でもブレないことでもあると思うから。少なくとも自分が唄う時はいかにブレないか。今はそれだけ考えていればいいんだなって思いましたね。これは〈アウトストアで47〉のファイナルが終わった以降の出来事ですけど、自分が全然納得する演奏ができない日があって。今までだったら自分の中に原因を探してたんですよ。自分が合ってないのかな?とか。でもその日は初めて〈……これって自分が悪いの?〉って、初っ端からメンバーを疑ってる自分が出てきて(笑)。変な話ですけど、その時に初めてアウトストア・ツアーで得た成長を実感したというか」
オオスカ「大事なものが自分の中にできたんじゃないですか? ライヴならこれをまず大事にしたい、みたいなもの。前はなかったから、何かあったら原因は自分にあると思っちゃって。そこがまず変わったし、まだまだもっとできるところだと思ってる」
そのようにバンドを導いたのはオオスカくんだった。
オオスカ「うん。ライヴってこなれてしまうとナァナァになっていくし、これをやれば客が盛り上がる、みたいな固定観念が生まれてしまう。その枠組みを疑い続けることをぺやんぐができるなら、こいつは無敵になるだろうなって思ってたんですよ。でも、それをやり続けてるうちに、俺が思ってた〈ぺやんぐ、こういうフロントマンになればいいなぁ〉を簡単に超えてきて。今は想像以上というか、俺が考えてた以上に彼女は考えられるようになってる。これだけの歌をバーンとカマされたら、俺もロクでもないギター弾いてらんないし、なんなら食われないように頑張んなきゃいけなくて。俺はもう下がらなくていいし、下がってる場合じゃねぇって思う」
それがバンドの自信に繋がった。
オオスカ「そうです。今の俺ら、って胸張って言えるものができてますね」
