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赤い公園の歴史に絶え間ない拍手を――〈赤い公園 THE LAST LIVE 「THE PARK」〉によせて

音楽は呼吸し続け、時に人と人をつなげる。そんな眩しい未来を思い浮かべながら、赤い公園の歴史に絶え間ない拍手を送ろう



10月19日。朝から冷たい雨が降っていたあの日、津野米咲の訃報が届いた。


そう書いたところで文字を打つ手がどうしても止まってしまう。最高に敬愛する音楽家であり大切な友人でもある米咲が死んでしまったという事実を、どう捉えていいのか。今もさっぱりわからない。しばらくはずっと呆然としていたし、彼女の生気をそこら中に感じられるような日々が続いた。悲しいというよりも虚無感に苛まれ、その先に悔しいという感情があった。


亡くなる数日前にコンタクトをとっていたが、あの時米咲は赤い公園の未来を語っていた。こういう曲を作って、こういうライヴをしてみたいというイメージを描いていた。メンバーの心配はしていたけれど、それはいつものことだったし、石野がハタチを迎える誕生日をメンバーで祝い、4人で酒を呑めるのが楽しみだとも言っていたのだ。僕は、その日がすぐにやってくることを信じて疑わなかった。


米咲の逝去から約1ヵ月後に赤い公園のニューシングル「オレンジ/pray」がリリースされた。あの日誓い合った約束と、その果てに訪れた別れが描かれた「オレンジ」。〈君の旅が どうか美しくありますように〉という最後のフレーズや米咲目線で観るとあまりに切ないMVが存在する「pray」。そこにどうしようもない重みを感じざるを得ないのは事実だが、一方でこの2曲からは、米咲が今の赤い公園でシンプルなギターロックやグッドソングを鳴らしたいという意思も、たしかに感じられる。だからこそ、余計にやるせないというのもある。そうやって、今も堂々巡りになってしまう。でも、ずっとそうやって米咲のことを考え続けられたらそれでいいとも思っている。


2020年末。米咲を喪ってしまった赤い公園は、米咲と友人関係にもあった小出祐介(Base Ball Bear)をサポートに迎え、〈COUNTDOWN JAPAN〉への出演を決めるが、これもコロナの影響で中止となってしまった。


それからしばらくの時が流れた、2021年3月1日。赤い公園は5月28日の中野サンプラザ公演をもって解散することを発表した。すでにレコーディングを終えた未発表曲もあるはずだ。しかし、遺された3人は、それをリリースすることも、ツアーを廻ることもなく、一回限りのライヴで赤い公園に幕を閉じることを選んだ。津野米咲がいなければ、赤い公園ではない。その思いは、歌川、藤本、石野が下した決断に何より表れていた。


米咲にとって憧れの会場でもあった中野サンプラザで迎えた解散ライヴ当日。開演前の会場には米咲のルーツを形成する楽曲群が並べられたプレイリストが流れていた。ステージに立ったのは、赤い公園のメンバー3人の他に、ギターの小出祐介とキダモティフォ(tricot)、キーボードの堀向彦輝(a.k.a hico)の6人。いずれのサポートメンバーも同業のアーティストとして赤い公園を深く愛してきたアーティストたちだ。


得も言われぬ緊張感が張り詰めた中で始まったライヴは、序盤こそ米咲の不在を突きつけられるような空気が流れていたがしかし、徐々に〈これはツアー初日なのではないか?〉と錯覚するほど初々しく、フレッシュな趣が際立っていった。どこまでも音楽を楽しみ、音楽に生かされてきた赤い公園の光輝を体現したい。米咲のために、実施された生配信の視聴者も含めてこのライヴを目撃するすべてのオーディエンスのために。そんなメンバーの思いが痛いほど伝わってきた。そして、あらためてこのバンドはこんなにも名曲ばかりを生み続けてきたのだと、思い知らされた。MCで石野はこう言った。


「楽しい話もしたいところなんですけど、大事なことをしっかり私たちの口から伝えます。私たち赤い公園は、本日5月28日をもって解散することになりました。米咲さんが亡くなって、3人とも本当にたくさんいろんなことを考えたんですね。いろんな案を出し合って、スタッフの方ともいろんな話をして、自分の将来のことも考えたけど──でも、やっぱりそもそも赤い公園は津野米咲という存在がいないとダメだ、意味がない。結局はみんなが納得するところはそこだった。みんなの総意で解散することにしました。それでも私たちはライヴをすることが大好きなので、みなさんにはこの場が楽しかったと思ってもらえたら、それだけですごくうれしいです」


石野は最後の最後まで立派に赤い公園の顔としての責務をまっとうした。米咲をバンドに誘った藤本は最後の最後まで赤い公園のムードメーカーとして、あるいはこのバンドに灯された衝動を象徴するように歪んだ音を鳴らすベーシストとしてステージに立った。歌川は誰よりも感極まりながらしかし、最後の最後までしっかりアンサンブルのボトムを支えていた。もし米咲がこのライヴを観ていたら、「私がいなくてもこんなにいいライヴができるようになっちゃって」と、3人の頭を撫でていただろう。


『白盤』に収録されている初期の「ランドリー」に始まり、新生・赤い公園の第一声として配信リリースした「凜々爛々」で終わった全29曲。この日披露されたセットリストは吟味に吟味を重ねて構築されたものであることは承知の上で、まだまだ聴きたかった曲は数え切れないほどあった。


「じゃあみんな解散で! 解散!」
最後に石野は吹っ切れた様子でこう叫び、歌川、藤本と笑顔でステージを去った。


ああ、本当に赤い公園は終わってしまったんだという喪失感を覚えると同時に、前述したようにツアー初日のような趣さえあったライヴの様相もしかり、あらゆる面で未完のまま終わった赤い公園らしさに不可思議な光明を見たところもある。

写真=岸田哲平


終演後、もう10年以上連絡をとっていなかった友人から連絡がきた。
「おひさしぶりです。今日、赤い公園のライヴで見かけたかもしれないです。赤いキャップ被ってた?」
それは僕ではなかったのだが、彼女が赤い公園のファンであることを知らなかったから、まず何よりそのことに驚いた。聞けば、この数年で大ファンになったという。知り合った頃の彼女は大手自動車メーカーの会社員だった。その後、結婚を機に退社。3人の子どもを生んだあと、一昨年40歳で東京藝術大学の大学院に入り直したという。大学院では映画専攻・脚本領域を専攻し、プロの脚本家としてデビューを果たしたというのだから、輪をかけて驚いた。まさか赤い公園が最後にこんな縁をくれるとは。


こうやって人生にはたまに不思議なことが起こる。音楽は呼吸し続け、時に人と人をつなげる。津野米咲が、赤い公園が、生み落とした楽曲に影響を受けた新しい才能だってこれから世に出てくるはずだ。そんな眩しい未来を思い浮かべながら、赤い公園の11年半弱の歴史に絶え間ない拍手を送る。


津野米咲、ありがとう。そして、歌川菜穂、藤本ひかり、石野理子、佐藤千明のこれからの人生に幸多からんことを、心から願っている。



文=三宅正一
写真=岸田哲平、鳥居洋介

写真=岸田哲平

Blu-ray『赤い公園 THE LAST LIVE 「THE PARK」』
2021.09.29 RELEASE


■初回生産限定盤(2Blu-ray+1CD)
■通常盤(Blu-rayのみ)


〈収録内容〉 ※通常盤はDisc 1のみ
◆Disc 1:2021.05.28 at 中野サンプラザ 赤い公園 THE LAST LIVE 「THE PARK」
ランドリー / 消えない / ジャンキー / Mutant / 紺に花 / Canvas / 絶対的な関係 / 絶対零度 / ショートホープ / 風が知ってる / 透明 / 交信 / pray / 衛星 / Highway Cabriolet  / Yo-Ho / 〈メドレー〉今更~のぞき穴~西東京~ナンバーシックス~闇夜に提灯 / KOIKI / NOW ON AIR / yumeutsutsu / 夜の公園 / オレンジ / 〈Encore〉 KILT OF MANTRA / 黄色い花 / 凛々爛々

◆Disc 2:
〈2019.07.04 at TUPPENCE HOUSE I’S STUDIO -broadcast edition-〉
衛星 / Beautiful / 未来 / ソナチネ / 夜の公園
〈2019.11.27 at 下北沢GARAGE -broadcast edition-〉
石 / おそろい / Unite / Highway Cabriolet / 輝き
〈2020.08.29 at立川BABEL 「SHOKA TOUR 2020 “THE PARK” ~0日目~」〉
ソナチネ / Mutant / 絶対的な関係 / 絶対零度 / Beautiful / KILT OF MANTRA / 交信 / Yo-Ho /消えない / ジャンキー / 最後の花 / 夜の公園 / chiffon girl feat. Pecori / オレンジ / 凛々爛々/ yumeutsutsu
〈Music Video〉
消えない / Highway Cabriolet / 凛々爛々 / 絶対零度 / yumeutsutsu / 夜の公園 Lyric Video / ジャンキー / オレンジ / pray

◆Disc 3(CD):津野米咲 demo collection
オーベイベー! / MUSK / さらけ出す / EDEN


購入はこちら

赤い公園 オフィシャルサイト

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