【LIVE REPORT】
フレンズワンマンツアー “UNO!”
2021.6.5 at 渋谷duo MUSIC EXCHANGE(第1部)
「フレンズのモットーは、みんなに寄り添って〈明日も頑張ろう〉って思える曲を作ること。だけど、あの発表のあとはバンドとしてしばらく何もできなくて不安だったし、早く楽しいものを届けたいって気持ちでいっぱいだった」
フレンズが4人体制として初めて行ったワンマンツアー〈フレンズワンマンツアー “UNO!” 〉。その東京公演・第1部の終盤、えみそん(ヴォーカル)はこのように吐露していた。あの発表とは、バンド結成時から共に活動してきたメンバー・ひろせひろせの脱退だ。
ひろせの脱退が発表されたのは、今年の4月30日。昨年末に活動休止の発表はされていたが、それはあくまで活休。しかし、脱退となれば話は大きく変わってくる。もともとフレンズの楽曲の大半は彼が手掛けていたし、ライヴでもMCを含めて彼の存在感はあまりにも大きかった。ひろせがいないフレンズ――そこに不安を感じたファンも多かったのか、脱退発表直後は今後のフレンズを不安視する声も少なからずあった。正直なところ、私だって不安を感じたうちの一人である。しかし、そんなマイナスな感情を完全に吹き飛ばしてくれたのがこの日の公演だった。
コロナ禍ということで感染対策を徹底しながらも、会場は新生フレンズを一目見ようと駆け付けたファンでしっかりと埋まっていた。心なしか、観客が纏う空気にも緊張感が滲んでいるようにも見えたが、序盤から4人は〈その緊張感や不安感は必要ないよ。私たちは大丈夫だから思いっきり楽しもう!〉と観客に語りかけているような、頼もしさのある演奏と振る舞いを見せてくれたのだ。
特筆すべきは三浦太郎(ギター&ヴォーカル)の歌声である。ひろせが抜けて、彼が唄う割合は大幅に増えた。しかし、えみそんとの掛け合いで何の違和感も感じないどころか、彼の朗らかな人柄がそのまま投影されたような歌声は、フレンズのこれまでの楽曲に想像以上にハマっていた。喩えるなら、薪ストーブとかキャンドルのよう。決して人工的なものではなくて、本物の温かさが感じられるのだ。彼の歌声が加わることで、このバンド特有のホーム感や親しみやすさはいっそう増した気もする。相変わらず情感たっぷりな、えみそんの歌声の美しさは言わずもがな、そして2人を支える長島涼平(ベース&コーラス)と関口塁(ドラム&コーラス)のリズム隊の力強さも良かった。彼らがいるからこそ、メインヴォーカル2人が、伸びやかに、何も恐れず唄うことができているのではないだろうか。互いを認め、支え合う。そんなバンドの今のモードがパフォーマンスにも表れているようで、明るめの楽曲を披露している時であろうと思わずグッときた。
そしてセットリストはと言うと、新旧入り混じったスペシャルな内容。「夜にダンス」や「iをyou」、映画『花束みたいな恋をした』の劇中で主人公カップルが唄い、再び話題になった「NIGHT TOWN」など、バンドにとって代名詞的な曲が会場の熱を上げていく。その一方で、4人体制としての新曲もとても良かった。先日配信リリースされた「急上昇あたしの人生」では、〈急展開 あり得ないって/掴み損ねたくない〉〈最後まで/目を逸らすなよ〉というフレーズが、新体制としても力強く歩んでいくバンドの姿勢とリンクしていて痺れたし、何より終盤で披露された「東京今夜」が素晴らしい。〈東京の夜〉を舞台に揺れ動く感情をみずみずしい言葉で切り取ったシティポップ調の楽曲で、ときめきに溢れていて、どこかドラマティック。えみそんが書いたこの曲に対し、曲を試聴した直後に三浦が「これは売れる」と開口一番零したことにも納得が行くし、4人で生み出していく楽曲にもいい意味で期待を裏切られそうだな、と予感せずにはいられなかった。
ここまで新体制のフレンズをべた褒めしっぱなしだが、故意にそうしているわけではない。素直にそう思えるくらい、ステージ上の4人は終始頼もしかった。けれど、彼らは決して空元気だったり、無理に明るさを繕っている様子でもなかった。言ってしまえば、結成5周年という節目のタイミングで事が起きたのだから、彼らのショックは相当なものだったのだろうし、新体制としてのスタートを切るまでに一番つらい思いをしてきたのは、紛れもなく4人だったはず。にもかかわらず、どうして4人はここまで明るく居られるのだろう。何が彼らを強くしているのだろう。そう疑問に感じていたタイミングで、冒頭で綴ったえみそんのMCがあった。続けて彼女の口から語られたのは、「フレンズって4人だけじゃない。みんながいて成立するんだなって思った」という言葉。憶測ではあるけれど、これによって合点が行った気がした。彼らは窮地に立たされたことで、フレンズを構成するすべての人たちの存在、その人たちに対しての尊さや愛情を今まで以上に強く認識したことで、バンドとしての役目――〈聴く人の心を照らすこと〉を、何があっても全うしようと腹を括れたんじゃないだろうか。
しみじみとそう思いながら感動しつつ、えみそんの言葉にそのまま耳を傾けていると、「みんなの応援に励まされたインターネットでした」という締め方に思わずズッコケた。ネット上で見たファンのメッセージに勇気をもらった、というエピソードなので間違ってはいないが、「インターネットでした」という独特な言葉のチョイスで会場を瞬時に和ませてしまうのは流石としか言いようがない。横で聞いていた長島に至っては、〈あちゃ~〉という感じで顔を手で覆っている。こんなふうに、楽曲だけでなくMCも含めて心を温かくさせてくれるのは、フレンズならではだなぁと再認識した。
「影があるから光がある」という言葉があるけれど、痛みや苦しみに直面した4人だからこそ、彼らが放つ明るさはより強固なものになっていて、輝きが増したのではないだろうか。そんなことを考えていたところで、公演の終盤、ニューアルバムのリリースが発表された。タイトルは『SOLAR』。このタイトルには〈誰かを照らす太陽のような存在でいたい、近くで心を照らしていたい〉という思いが込められているそうだが、この日の公演で感じたことが伏線かと思うくらいに、今の彼らにピッタリとハマっている。きっと、いや絶対に、彼らは持ち前の明るさと強さでもって、これからもたくさんの人たちの心を灯していくはずだ。
文=宇佐美裕世
写真=TAKAHIRO TAKINAMI
【SET LIST】
01 ビビビ
02 夜にダンス
03 take a chance
04 雨のフライデー
05 急上昇あたしの人生
06 DIVER
07 NIGHT TOWN
08 約束
09 常夏ヴァカンス
10 いいんじゃない?
11 iをyou
12 東京今夜
13 地球を越えても
14 ベッドサイドミュージック
ENCORE
01 街
NEW ALBUM『SOLAR』
2021.8.4 RELEASE
■初回限定盤( CD+DVD )
■通常盤( CD )
〈CD〉 ※初回限定盤、通常盤共通
01 東京今夜
02 急上昇あたしの人生
03 FUTURE PEOPLE
04 Hey Boy Hey Girl
05 夢って
06 海のSHE
07 元気D.C.T〜No at all〜
08 いつものサタデー
09 iをyou
10 8月31日の行方
11 約束
12 あくびをすれば
13 楽しもう
14 ボルテージ!
15 いいんじゃない?
Special Rare Track
16 NIGHT TOWN(神泉Ver.)
〈DVD〉 ※初回生産限定盤のみ
01 ワンマンライブツアー「シチュエーション・コメディー season4」 at LINE CUBE SHIBUYA
02 「約束」発売記念生配信『Acoustic Night』 at 晴れたら空に豆まいて
— MUSIC VIDEO —
01 iをyou
02 楽しもう
03 take a chance
04 0:25
05 HEARTS GIRL
06 あくびをすれば
07 8月31日の行方
08 いいんじゃない?
09 約束
10 急上昇あたしの人生
フレンズ オフィシャルサイト https://friends-jpn.com/