【LIVE REPORT】
KEYTALK「4密サウンドでSUTEKI HOME ~甘い甘い蜜のよう~」2010-2014
2020.09.26 無観客有料配信ライヴ
あまりの通常運転っぷりに、感動を越えてもはや安心してしまった。いついかなる時も、観る者を明るい気持ちにさせてくれるKEYTALKのキャラクター性。それは、インディーズの頃からずっと変わらない彼らの魅力だ。
多くのアーティストが配信ライヴを開催している中、ついにKEYTALKも初の配信ワンマンライヴを9月26日に開催した。新型コロナウイルスの影響から8月22日、23日に開催予定だったワンマンライヴ〈KEYTALK 幕張メッセ2days 宇宙の果てまでレッツGO! 〜タイムトラベル漂流記〜〉が中止になったことで、開催が決まった今回の配信ライヴ――その名も〈「4密サウンドでSUTEKI HOME ~甘い甘い蜜のよう~」2010-2014〉。公演名にいろんな情報が渋滞していることに引っかかるのだが、何よりも気になったのは「無観客での開催」ということ。KEYTALKのライヴと言えば、観客が曲ごとに振付を踊ったり、MCでもメンバーと観客との掛け合いが見どころであったりと、4人の卓越したパフォーマンス力のみならず、観客の熱量が加わることで、これまでいくつもの興奮や感動を生み出してきたように思う。しかし、ライヴを作り上げる上で大切な観客が今回はいない。正直、盛り上がりに欠けるのではないか?なんて失礼なことを考えていた部分もあったのだが、それはとんだお門違いだった。物足りなさや寂しさなんて、微塵も感じない。むしろ、このバンドの魅力を4対1でダイレクトに感じられる濃密な時間となったのだ。
開演前、まず画面に流れたのは、過去の4人の映像を背景に使用したカウントダウンのテロップ。どうやら2010年にさかのぼる形で編集されたようだ。〈シングル「スターリングスター」の衣装、懐かしいな〉〈初の武道館公演はとにかく熱かったなぁ〉などとノスタルジックな気持ちに浸っていたところで、まず1曲目に鳴らされたのは、ライヴの定番曲「MONSTER DANCE」……ではなく、同シングルにカップリングとして収録されていた「FREEDOM」。普段なかなかライヴで披露されることの無いレア曲だ。歌謡曲テイストのメロディでありながらも疾走感があり、そこに寺中友将(ヴォーカル&ギター)と首藤義勝(ヴォーカル&ベース)のハーモニーが加わると、一気にKEYTALKの世界に誘われた気分になり、久しぶりの4人のステージにどうしようもなく胸が高鳴った。
そして2曲目は〈night focus〉。2010年にリリースされた1stミニアルバム『TIMES SQUARE』の収録曲で、こちらもレア曲であることに加えて、畳みかけるように4人それぞれがエモーショナルに音を鳴らす転調部分に、否応なしにテンションが上がってしまう。そもそもタイトルから察していた人も多いと思うが、今回のセットリストは2010年から2014年にリリースされた楽曲のみで構成されているようだ。しかし、今回のステージは公演名に〈密〉と入っているだけあって、ステージ上の4人の間隔が狭い。だからか、もちろんソロカットでメンバー1人1人が画面に抜かれることはあるが、4人全員が同時に映る瞬間が多かったように思う。それによって、この4人で歩んできた道のりだったり、今日までの時間の流れがいっそう尊いものに感じられた。
その後も〈フォーマルハウト〉や〈orange and cool sounds〉などインディーズ時代の曲が披露されていくが、どの曲も開演前に見ていた映像と同様に、つい当時の彼らに思いを馳せながら聴いてしまう。メジャーデビューが決まったことをはじめ、4年の間にバンドに起きたエトセトラはもちろんのこと、観客の中には自分自身とこのバンドとの間にある思い出をたどりながら、今の彼らが鳴らす音を堪能できる喜びを噛みしめていた人も多かったのではないだろうか。
そして改めて思うのは、このバンドには良い曲が多いということ。冒頭で述べたように、初期の曲はどこか歌謡曲テイストを感じるものが多い中、ダンスロック、ポップスなど、アルバムどころか曲単位で彼らは多彩な音を鳴らしていた。4人全員が曲を作れるということ、そして一つのジャンルに括り切れないその豊かなメロディセンスに、もはやこのバンドはKEYTALKというジャンルを確立しているのだ、と思うほどだった。歌詞も、今はスケールの大きくなったバンドの世界観や周りの人たちを想定しながら、壮大で背中を押してくれるような言葉が多く並んでいるのが印象的だが、当時の歌詞はどこか私小説的で、その違いがまた面白い。過去の曲に触れるたび、リリースから何年経っても感動が色褪せないことを実感したが、それはもともとの楽曲の良さがありながらも、4人の表現力にさらに磨きがかかっているからこそなのだろう。
特にグッと来たのは、作詞は首藤が手掛け、メロディは小野武正(ギター&コーラス&MC)が音楽大学在籍時に課題で作ったという「sympathy」。リリース当時から今も人気の高い曲だが、終盤のギターソロがアレンジされていて、それがあまりにも新鮮で思わず鳥肌が立った。楽曲に深みと刺激を加える小野のギターだけでなく、心の琴線に訴えかけてくる寺中の力強い美声も、歌詞の情景が目の前に浮かんでくるような表現力を備えた首藤の歌声も、八木優樹(ドラム&コーラス)のスキルもパフォーマンス中の表情作りも一切隙の無いドラム捌きも、すべてが確実に進化している。比較的演奏し慣れた最新曲やライヴの定番曲に頼ることなく過去曲だけで縛るのは、想像以上にバンドにとって挑戦なはず。4人の中に強い向上心と揺るぎない自信がなければ、きっと成立しなかっただろう。
そんなふうに改めてこのバンドの凄みを感じていた中で、彼らのバックにあるLEDパネルに映し出された、小野と八木の幼馴染み兼オリメンコンビによる「a picture book」の振り付け動画には思わず爆笑してしまった。リリース当時も2人による「振りを付けてみた動画」が公開され、正直その時の動画と比べるとキレがよろしくない……と一瞬思ってしまったのだが、本編終了後のMCでの種明かしによると、今回動画を撮り直すにあたり、なんと事前に振りを確認することはなく、記憶だけを頼りに1曲分を一発で踊り切ったのだという。それであの完成度はむしろ凄いし、2人のチャレンジ精神には感服してしまった。
振りを付けてみた動画
ライヴ本編だけで終わらないのがKEYTALKである。通常のライヴでは本編の合間にMCが挟まれるのだが、今回はトークパートを本編終了後に分けて行った。そして配信ならではの試みとして、この日ライヴを観ていた一部のファンとリモートで対話をすることに。KEYTALKのグッズを身に着けていたファンに感謝を伝えたり、音声トラブルが生じながらもハイペースで缶ビールを煽るファンに爆笑しながらツッコミを入れたりと、その和気藹々としたゆるやかな空気感は、いつものライヴのMCで感じるものと同じだった。たとえ同じ空間に観客がいないくても、いつまでも色褪せない名曲と、ファンとの繋がりを大切にしたいという思いが4人の中にある限り、彼らのライヴはいつだって、どこでだって楽しめることを証明してくれた。
以前、KEYTALKのメジャーデビュー5周年記念のライヴレポートの中で、私は「平凡な日常も明日には壊れてしまうかもしれない。だが、KEYTALKを見ていると、この4人だけはいつまでも変わらないのだろうと不思議と思えてくる」と綴ったことがあるが、今回の配信ライヴは、まさにそれの答え合わせのような時間だったと思う。気持ちが沈んでしまいがちなこのコロナ禍でも、ダークサイドに堕ちずに、変わらないスタンスで良い音楽と活力を届けてくれた4人。きっと、1人1人がこのバンドとしての使命感みたいなものを理解しているから、彼らはブレずに、音楽を通じて様々な角度から人々を楽しませることができるのだろう。過去と今が交差した不思議な時間の中、画面の向こうで楽しそうに談笑する彼らを見ながら、それは今後も変わらないはずだと改めて痛感した。やっぱり、この4人に関しては永遠を信じたい。
今後、KEYTALKはさらに増えていくであろう名曲を携えて、どんな物語を作っていくのだろうか? 想像したらキリがないが、ひとまずは10月31日に開催することが発表された配信ライヴ第2弾〈「4密サウンドでSUTEKI HOME ~甘い甘い蜜のよう~」2015-2020〉と、2021年1月9日~10日に行われる国立代々木競技場第一体育館での初となるワンマンライヴを楽しみに待ちたい。
文=宇佐美裕世
写真=後藤壮太郎
【SET LIST】
01 FREEDOM
02 night focus
03 フォーマルハウト
04 PASSION
05 orange and cool sounds
06 サイクル
07 MURASAKI
08 マキシマム ザ シリカ
09 fiction escape
10 トラベリング
11 sympathy
12 a picture book
13 バミューダアンドロメダ
14 blue moon light
15 コースター
16 MONSTER DANCE
配信ライヴ第2弾「4密サウンドでSUTEKI HOME ~甘い甘い蜜のよう~」2015-2020
2020年10月31日(土)
OPEN 19:30 / START 20:00
視聴チケット:¥3,000
■【特典付き】配信視聴チケット販売期間
10月1日(木)12:00〜10月18日(日)23:59迄
特典内容:「4密サウンドでSUTEKI HOME ~甘い甘い蜜のよう~」2010-2014未公開写真
■一般配信視聴チケット販売期間
10月19日(月)0:00〜10月31日(土)20:30迄
配信視聴チケットご購入はこちら
https://keytalk.spwn.jp/events/201031-4mitsu
・チケットご購入の方は、開場時間より視聴できますのでご準備をお願いします。
・本公演にはアーカイブはございませんのでご注意ください。
・配信内容は両チケット同じものとなります。
・特典付きチケット購入の方には、チケット購入サイトに登録しているメールアドレス宛に後日「4密サウンドでSUTEKI HOME ~甘い甘い蜜のよう~」2010-2014の未公開写真をお送りいたします。
その他チケット購入サイト記載の注意事項をご確認ください。
2021年1月9日~10日、国立代々木競技場第一体育館で初のワンマンライヴを開催!
続報はバンドのオフィシャルサイトをご確認ください。
KEYTALKオフィシャルサイト https://keytalkweb.com/