本日7月13日、AKABANE ReNY alpha OPENING SERIES〈A-RIOT〉で対バンするAA=とminus(-)。フリーペーパーFIX6月号に掲載された、上田剛士(AA=)と藤井麻輝(minus(-))の対談、そのロングヴァージョンを掲載します。出会いやアルバムの話も興味深いですが、ある部分でこの2人はとても似ているんだな、と改めて感じました。
剛士さんが藤井さんと初めてお会いしたのはいつでしたか?
上田「いつだろう……憶えてない。でもSOFT BALLETを観に行ったのは憶えてます。音がめちゃくちゃよかったんですよ。それで、このPAさんにお願いしたいな、と思って。結構強引にお願いして」
藤井「いつの間にか(笑)。ライヴの日程とか被ると大変だったよね」
上田「だからPAさんは最初渋ってたんだけど、そこを無理やり押し切った(笑)。あのぐらいの音出したい、って」
藤井「僕ほとんど記憶にないんだけど、スタジオでレコーディング中、剛士くんが、AKAIのMPCだっけ? 持って遊びに来たのは覚えてる。たぶん92年ぐらいかな」
SCHAFTのアルバムに上田さんが参加したのが94年、そして2016年の再始動時にもご一緒されています。
藤井「あれ、もうそんな前になるのか……もうちょっとやりたかったけど、一瞬で終わったから。気がついたら」
上田「ツアーは2週間ぐらいだもんね(笑)」
藤井「しかもほぼ東京近郊でしかやらなかったっていう」
上田「でも楽しかった。俺自身、ゲストで呼ばれてプレイすることがあまりないから」
藤井「そもそもゲストじゃないじゃん(笑)」
上田「まあね(笑)。でも、ベーシストとして呼ばれて行くってことがほとんどないんで。その立ち位置はすごく楽しかったです」
藤井「楽しいだろうね。弾かないでフラフラしてたし(笑)。あれ? なんで俺の横にいるの? なんでベース持ってないの?って」
上田「無責任な発言をずっとしていられるっていう楽な立ち位置でした(笑)」
藤井「でもSCHAFTでは、僕と剛士くんでけっこう時間かけてたんじゃない?」
上田「いや、とは言っても俺はベースのパートだけだから。〈藤井くん、ずっとやってるなあ……〉と思ってたよ」
剛士さんはminus(-)にはどんな印象を持っているんですか?
上田「藤井麻輝ワールド全開だな、と。特に最近……」
藤井「1匹になってからね(笑)」
上田「そこからスタンスがどんどん変わってきてることはすごく興味持ってますね。この人次は何をやるつもりなのかな?って。もともとステージでよーく目を凝らすと影がいる、みたいな人だったのが、いきなり前に出てきた時の驚きと感動たるや……俺、その日のライヴを観てるんだけど」
藤井「あ、そうか1回目だよね(註:2016年11月19日/恵比寿リキッドルーム。Jとの対バン)」
上田「感動して、うぉぉぉって声出たもん(笑)。自分がやってたスタンスを変えてやるっていうのは、相当な決意が必要で。自分も似たところがあるんだけど、基本、暗いスタジオのスピーカーの前で音出してるのが一番好きな人じゃない?」
藤井「ふふ、そうね」
上田「でもライヴは絶対に必要で。そこでひとりになった藤井くんはどうするのか、非常に興味深かったですね。またどんどん変わっていく感じがするんで」
藤井「そのうち浪曲やってたらどうする?」
上田「はははは。浪曲はわかんないけど、なんでもありが面白いと思ってる。長くやってるとどうしても予定調和になりがちなので。やってる側も飽きてくるから、そこをどう変えていくかって、アーティストにとってのテーマでもあるじゃないですか。自分も、ずっとベースをやってたバンドから、AA=になって唄うことが多くなったし。自分なりのストーリーはあるんだけど、見てる側としてはそれがわからないから、唐突に来る感じがパンチあった」
藤井さんはどうでしょうか?
藤井「なんだかんだ、一緒にやることが何年かおきにあったような気がするんだけど……」
上田「ちゃんと対バンしたのは、2年前のZepp DiverCityくらいだよ(註:R JAM '17)」
藤井「あれ? そうか」
上田「あの時、リハの時からminus(-)が音出すと、楽屋の扉が揺れたんですよ。どんだけ低音出してるんだよって。音聴こえなくても、その揺れで誰がやってるかわかる(笑)」
藤井「でも2016年、SCHAFTを一緒にやってから〈そのうちAA=と一緒にやりたいなあ〉と思って、ずっと声かけてたんですよ。AA=をやり始めた時も、すごく気になってて。ゲストヴォーカル入れてるんだ、と思ってたら、いつの間にかヴォーカル取ってる曲あるし」
上田「やっぱりminus(-)もそうだろうけど、自分がメインヴォーカルというか、自分が真ん中でやるとなると、ちょっと変わりますよね」
藤井「うん。変わる」
上田「やる人をイメージしながら作ってきてるので。プロデューサー的な目線でバンドを見ることが多いと思うんだけど。自分を中心に見ることをあんまりしたことない2人が、今フロントに立ってやってるのが面白いんじゃないかな」
上田さんは5月からツアーが始まりますね。
藤井「どこ行くの?」
上田「東名阪やって、秋口にツアーがある。アルバムツアー」
藤井「お、アルバム出るんだ」
上田「今絶賛作ってる(註:取材は4月に実施 /新作『#6』8月7日発売)。藤井くんは?」
藤井「1曲できた」
上田「前に出したのいつだっけ?」
藤井「えーと『R』になるから……」
約2年前ですね。
上田「2年で1曲! 俺、2年に1枚はアルバム出してるよ(笑)」
藤井「いや(汗)曲はできてるの! かなり前から。でもアレンジに時間がかかるの」
上田「誰かがやってたけど、新曲、ほぼ完成したらサブスクで公開して、どんどんアップデートしていったらいいんじゃない? ただ藤井くんの場合、それが10年くらい終わらない可能性があるけど(笑)」
藤井「そうだろうね。寝かせて寝かせて、毎日ちょこちょこアップデートして」
上田「最初のバージョン、今聴いておかなきゃ聴けなくなる、みたいなことにして」
藤井「minus(-)のライヴはそうだからな。最初のバージョンとかもうほとんど存在してなくて、どの曲も微妙にアップデートしてるから」
上田「いいじゃん。サブスクの曲はどんどんヴァージョン上げていって、同じアルバムなんだけど、最初のオリジナルとはヴァージョンが全然違う、とか(笑)」
藤井「それね、ずっと前からやりたいんだよ。だから僕の曲って、たまにバージョン0とか1ってついてるんだけど」
上田「楽屋でセットリスト見たら、ほとんどの曲に〈ver.2.0〉とか〈ver.1.2.1〉とかついてて」
藤井「小数点以下ね」
上田「藤井くんにしかわからないよね。あれ憶えてられるの?」
藤井「エンジニアのほうがわかってる。僕はだんだんわからなくなったりして(笑)」
上田「でも意外と新しくていいかも。バージョンアップしていく。ファンの人はきっと聴きたいから嬉しいですよね」
藤井「サブスクでバージョン違い。それけっこう夢だったんだよなぁ。同じものでちょっとずつ違うのを定期的に出すっていうのは。でもメーカーは必ず却下するんですよ」
まあ普通却下するでしょうね(笑)。
上田「これは作る側と売る側のスタンスの違いですよ(笑)」
藤井「でも毎月500円ぐらいの定額で、新バージョン毎月聴けるんだったらありかもしれないよね。コーヒー一杯我慢してもらって」
上田「藤井くんはアリじゃない? そういう変なことやって許される気がする」
藤井「たまに音源じゃなくて、クックパッド的な料理の手法公開とか、動画で入れようかな………そうか、アルバム作ってるのか」
上田「作ってます。追い越しますよ(笑)」
藤井「確実に抜かれるね(笑)。minus(-)は、2人でやってた頃は『はい、これやってくれ』『できたよー』ってやりとりしてたから、曲もボンボン作れてたんだけど、ひとりになったらエクスキューズきかないじゃん? だから時間かかるんだ(笑)。プレッシャーもすごいけどね、そのぶん」
上田「ま、俺も基本ひとりなんで、ひとりの面白いところもあれば難しいところありますよね」
藤井「ひとりだけでライヴってやったことあるの?」
上田「ひとりでライヴはないですね。でも、ひとりでパソコン広げて何かやるっていうのはやってみたいんですよ。今、ずっとバンド形式で音楽を作ってきているので、パソコンひとつで何かやるっていうのはずっとやりたいなって、長年言ってきてるんだけど」
藤井「それ面白いね。そのスタイルで対バンやろうよ(笑)」
上田「じゃあやろっか(笑)。考えようかな」
藤井「それ、ちょっと楽しみだなあ。ワークショップみたいなのをやってもいいよね。麻輝ちゃん剛士くんの打ち込みワークショップ(笑)。小学生限定でやったら楽しそう」
上田「その前にアルバム作ってくださいよ(笑)」
藤井「はははは、頑張ります」
インタビュー=林拓一郎