絶対に負けないぞっていう核の部分がちゃんと伝わってるなって、選ばれた曲を見て思います
ピアノ曲で言うと「Toneless Twilight」が入ってるのは個人的に嬉しかったですね。
「いつの間にか人気になってた曲ですね」
いつの間にかって？
「ライヴでやってもリアクションが見えづらい曲なんですよ。アッパーな曲だけどピアノで座って演奏するし、聴き入ってる人と盛り上がってる人がバラバラだし。だからこの曲に限らず一見してわかんないんですよね、ストレイテナーの曲って。どの曲が盛り上がるのか」
あとはライヴで定番っていう曲もたくさんあるけど、そうじゃない曲も入ってて。例えば「AGAINST THE WALL」とか、さっき言ってた「シンデレラソング」もそうだけど。
「〈AGAINST THE WALL〉が入ってくるのはわかりますよ。当時はここまで赤裸々に自分を投影したメッセージ性の強い歌詞は他に書いてなかったから。この曲に人生を重ねてくれたファンはたくさんいてもおかしくないと」
これはそうだね。当時のバンドの状況をストレートに唄った曲で、それが聴いた人の心に深く刺さったと。
「そういう意味でここに入るのはわかるんだけど、〈シンデレラソング〉はわかんない（笑）」
「シーグラス」はどうですかね。
「〈シーグラス〉は出した当初からバンド周りの人達からの反応が大きくて。特に若手のバンドマンに支持されたっていうのがありますね。いろんなバンドが広めてくれたのかなって」
トリビュートアルバムではback numberがカヴァーしてましたし。
「トリビュートでこの曲を知ってくれた人もいると思います」
そして投票1位が「REMINDER」っていうのはどう解釈してます？
「これは確かにそうだよなって思いました。〈Melodic Storm〉ほど毎回ライヴでやってる曲じゃないのと、古いファンから今のファンに至るまで、ストレイテナーの両面っていうか、メロウなところとアッパーなところが共存している曲なので、そういう意味でストレイテナーの代表的な曲なのかなっていう。だから納得です」
意外な選曲もありつつ、このベストに並んだ楽曲から見えてくることってありますか？
「そうですね……ストレイテナーらしいというか、自信のあるところが、ちゃんとファンに届いてるなって思います」
もうちょっと詳しく。
「毎回自分の中でホットなものを詰め込んだアルバムを作ることで、バンドの音楽性を更新しているつもりなんだけど、その中でもずっと変わらない核みたいなものってあるじゃないですか。バンドにおける核というか、メロディだったり歌詞の世界観みたいなもの。そこは絶対に負けないぞっていう核の部分がちゃんと伝わってるなって、選ばれた曲を見て思います。そうじゃなかったらもっと時代によって選曲が偏ると思うんです」
そうなんですよ。結果的に昔のも今のも満遍なく楽曲が選ばれてる。
「つまりバンドがまったく衰えていないってことでもあると思うし。あとこのベストには、バンドのロマンみたいなものも感じられると思ってます。バンド感みたいなものが強い。それこそ〈シンデレラソング〉なんて4人がぶつかり合ってケンカしながらなんとか形になったような曲だから（笑）」
それは初耳だ（笑）。これは俺が思ったことだけど、ストレイテナーのファンは、曲を通して4人のことを見ているというか。この曲が一番好き＝ホリエアツシのこういう部分が好き、みたいなところがあるんじゃないかって。
「それって僕らのパーソナルな部分が出てる曲に投票が集まってるってことですかね？」
そうですね。核の部分ってさっき言ったけど、20年の中でホリエアツシの変わった部分と変わらない部分、その両サイドを網羅してるというか。
「あぁ、それは言えてますね」
だから……ホリエくんはファンにとっても愛されてることがよくわかるベストと言いますか。
「……はははははは！ そうなのかな」
ちょっとこじつけに近いけど、でも本当にそう思った。
「どうなんだろう、どれくらいの人がこれを聴きながら〈この頃のホリエは〉って――」
や、そんな気持ちの悪い聴き方はしないと思うけど（笑）。
「それをやられたらヤバいっすね（笑）」
でも単に曲がいいとかお気に入りだからっていう理由で選ばれたら、こういうベストにはなってないと思うんですよ。それプラス、ファンの何かしらの思いが乗っかってるというか。
「それはそうですね。やっぱり曲それぞれに自分の変化だったり〈この時こういうこと考えてたからこの曲作ったんだったな〉とか、そういうことは自分でも思いますし。逆に言うと、そういう意味で〈他にも入れるべきだった〉っていう曲は思い浮かばないですね。もっと音楽的な感覚で作った曲はいっぱいあるけど」