20代は迷いの年だったんで。怯えて突っ張って、自分の中で殻を作ってましたけど、それを破った感じはありますね
でも武井さんここ数年で変わりましたよね。
「そうでしょ? さっきも言ったけど、悲しいとか悔しいで動いてないんで。昔は『チェコ聴いて幸せな気持ちになれます』とか言われると、〈何で?〉と思ってたんですよ(笑)。〈こんなに暗い俺が曲作ってるんだよ?〉みたいな。ディズニーランドとかキラキラしたものも好きだけど、同じくらいダンスミュージックとか、ガレージパンクとかクラブシーンも好きだったから、どっちとか選べないんですよね。キラキラして幸せな感じもいいけど、ものすごいエモいもので泣きたい日もあるじゃないですか」
衝動的な表現への憧れもすごくあったし。だからこそ、ハッピーとか幸せになれるって言われることに違和感があって。
「そうですね。でもそんなこと俺が勝手に思ってりゃいいことなんです。超エモーショナルにやってても『すごいハッピーでした』って言われることもあるけど、それはどっちも幸せじゃないですか。間違いじゃない。『これ観てエモくなってくれよ!』とは言っちゃいけないと思うんです」
昔はそういうふうに思ってほしかった?
「思ってほしかったというか、気づかれてないのかな?っていう。上辺だけで判断されているというか……」
それでステージ上でメンバー坊主にしたりしてね。
「っていう感じだったじゃないですか? くどい! そいつは。ご飯食べて『あー、美味しかった』って言って帰っていく客に対して〈この料理はこんだけ煮込んで出汁とってやってんのに『美味しかった』だけで帰るなよ〉って思ってる店主みたいなもんですよ。そんなの知らんし!っていう。だから、俺は頑固店主だったと思うんですよ、きっと」
ははははは。自分が好きなもの――パンクロックもチェコみたいなキラキラした曲も、その両方が好きな自分を理解してほしかったんですよね。
「そうっすね。だからやっぱり……寂しかったんです(照)」
そういうことを今素直に言える武井さんが、今回の歌詞に出てると思います。「Everything」の〈正しい未来なんていらない〉なんてフレーズ、昔じゃ出てこなかったと思うんですよ。
「前は失う怖さを唄ってたんですよ。時間が止まらないことへの恐怖も感じていたし。そこから解き放たれた感があるので。未来に向かってるけど、力入れ過ぎず自然体で、みたいな。あと、人生短いし楽しいこと探してやっていかないと本当にもったいないじゃないですか。20代は迷いの年だったんで。怯えて突っ張って、自分の中で殻を作ってましたけど、それを破った感じはありますね」
あと、このアルバムには「夢」っていうワードがすごくたくさん出てきますよね。
「え、そうなんだ?」
無意識ですか? 「STAR」では〈夢叶えたらいい〉、「Everything」では〈終わりなき夢見よう〉、「オデッセイ」では〈夢叶え 舞い上がって 行こう〉って出てきます。
「おお!」
『DREAMS』っていうアルバムも過去にありましたけど、その時とは夢の使い方が全然違いますよね。
「違いますね。『DREAMS』の時は現実逃避みたいな使い方だったと思うんで、淡い感じというか。今回も淡いけど……けっこうリアルというか」
うん、現実と向き合ってる。
「そうっすね。やっぱり夢を叶えたいんですよね。諦めたやつの音楽なんて聴きたくないっすもん。それはそれでいいブルースとか聴けそうだけど、俺らはそうじゃないだろうって。『僕たちなんてしょせんこんなもんです』っていうのも、もはや言いたくない。ちゃんと『僕たちいいんで、やっていきます』っていうことを言える状態なんで」
そういう熱いことも前は言おうとしなかったし。
「内心では思ってましたけどね。それにすげぇ恥ずかしいじゃないですか、夢とかチラつかせてギラギラ生きていくって」
30代とかになると、よりそうなりますよね。
「その大人は夢を見ちゃいけないっていう洗脳から解き放たれたんですよ、俺は。大人だって実はなんでもできる、みたいな感じを提示していきたいんですよね」
いろいろ経験してきたうえで今前向きに未来や夢を描けているのが、この作品のいいところだと思います。しかし人間ここまで変化するとは。
「昔の自分をだんだん忘れてきてる感じがするんですよ。こっちのモードで頑張ってると、すげぇ健康的なんで。もちろんしんどい時ありますけど、昔はずーっとしんどかったんで。本当によく死ななかったな、みたいな(笑)。今はすごくいい状態です!」
文=竹内陽香
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02 Everything
03 Wake Up!
04 オデッセイ
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