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INTERVIEW
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LAMP IN TERREN最新作に宿る人間味。自分の物語の中で逡巡してきたフロントマンの変化

text by 青木優

とてもメロウで、繊細で、心の芯にまで染み込んでくるような歌である。お互いの満たされぬ心を交わし合いながら、不格好であっても生きていくための何かをつかもうとしている、そんなアルバム。タイトルの『FRAGILE』――〈壊れやすい〉とは、そんな心情を抱えた者たちの総称だろう。LAMP IN TERRENが、松本 大(ヴォーカル&ギター&ピアノ)が、ここにきてこんな歌を唄うようになるとは、鮮やかな裏切り行為だ。
というのは、このバンドの歌は基本的に松本個人の強い自意識が膨張して成り立っていたもので、バンドはそんな葛藤や混沌を鳴らす集団だったからだ。しかしここでの彼らの歌はキズついた人を思いやり、負け犬のような心に同情を向けるような人間味さえ感じさせる。自分の物語の中で逡巡してきた松本に何が起こったのか? どこか吹っ切れたような話しぶりの彼は、頼もしさすら漂わせていた。

(これは『音楽と人』11月号に掲載された記事です)



ジャケットの話から聞きたいです。これは今までの作品と傾向が違いますよね。


「そうですね。あまり上手な絵にしたくなくて……落書きというか、子供の絵みたいなもの? 純粋な気持ちでペンを走らせた結果できるものがいいなと思って。何も考えずにバーッと描いていって、いいところに着地できたものを使ってます」


で、ここに書いてある言葉が……。


「頭の上に乗っかってるのが〈煩悩〉ですね。思いついたことを書いているんで……『FRAGILE』というタイトル含めて。今回の歌詞はわかりやすく書いたという自覚があったので、ジャケットはわかりづらいものにしたかったところがあります」


じゃあ〈FRAGILE〉という名前は、曲のほうが先にできたんですか? それともアルバムのほうが先ですか?


「アルバムタイトルが先ですね。もともとは全然違うアルバムを作ろうと思ってたんです。シャウトをしまくってる、ニルヴァーナ的なバンドになろうとしてたんですけど……この自粛期間の中で、怒りだったり焦燥感だったりを煽るアルバムは出すべきじゃないなと思い。今は寄り添えるものを作りたいな、というところからこのアルバムになっていって」


それで〈壊れやすい〉というタイトルも思い浮かんだと。


「うん。みんな、人に会ってないじゃないですか。僕はそもそもあまり外に出るタイプじゃなくて、友達に誘われると呑みに行くぐらいだったんですけど。ただ、周りの人間だったり、SNSやインターネットを眺めてると、誰にも会えないとか、ひとりでいるのがしんどいとか、自分だけの空間から発される言葉とかがものすごく散見されてて。そういう気持ちを音楽で救えないかな、って。それで僕自身も自分の生活を見直したというか」


んん? 自分の生活を見直した?


「はい。どういうふうに生活しているかとか、散歩する時にどんな気持ちだったかとか、自分が見てる世界のことを書いてみようと。僕は死生観というか、広いくくりで物事を唄ってきた感じがあって、だから抽象的だったと思うんですけど」


うん。それが今回の曲は、日常性が強いですよね。


「そう、日記みたいな感じで作っていったんで。今まで、それ、出せなかったんですけど……〈そんな話、誰も聞きたくないだろ〉と思ってたんで。でもこの期間だし、自分の話を思いっきりしてみるか、と。たぶん、ちょっとだけ自分に自信がついたから、こういうことが言えるようになったのかなと思います」


自信ですか。それって、どんな自信?


「そうですね……前作『The Naked Blues』は自分のことを認めるためにはどうすればいいか?ということを考えた作品で、そこについては到達できるものがあったんですよね。これは俺にしかやれないな、と。というのは、周りの……要は結果出してるアーティストはやっぱみんな努力しているし、才能がある。だから〈自分には才能なんてあるんだろうか?〉って思いながら生きてきたところがあったけど、そういうことじゃないんだなと思えたというか。だからアルバムを作るごとに自分を縛っていた固定観念からひとつずつ解放されていく感じがありますね。前作は理想から、今作は〈自分はこう生きなければいけない〉と固執してた現実から解放されたというか」


なるほど。で、たしかにわかりやすい言葉が多いですよね。しかもつながっていたい、つながっていられるはず、という感情がたくさん出ています。これは自然に出てきたものですか?


「ああ、自然なものだと思いますね。結局は願いだったりするので。ほんとにリアリストみたいな話をするならば、もっと別の言い方があったと思うんですけど……音楽なので。唄ってても聴いていても、希望がないとやっていけないんで。僕が〈こうあってほしい〉と思ってることだと思います、それは」


うん、わかります。で、その日常が描かれてる曲は「ワーカホリック」、「いつものこと」、「チョコレート」……。


「〈ワーカホリック〉は4年前の曲で、幼稚園からの親友がサラリーマンやってるんですけど、そいつのために作ったんです。真ちゃん(大屋真太郎/ギター)がアレンジしてきてくれて。あと〈風と船〉も4年前ですね。〈チョコレート〉は昨今のコロナ離婚について思うことですね。もし自分がワンルームとかに誰かとずっと一緒にいなきゃいけない状況になったらどうだろう?と。ケンカしたら仲直りできるように、という気持ちがあります。〈いつものこと〉は……自分の日記でしかなかったんで。書こうと思ったきっかけも覚えてないですね」


生々しいですよね。〈認めてほしいだけさ 愛してほしいだけさ〉って、松本 大そのままじゃないですか。


「そうなんですよね。これはそのまんまですね。だから話せることがない(笑)」


あと「ベランダ」も日常性が強いですね。


「そうですね。友達んちで、雨の日にビュンビュン車が走ってくのを見てて……ベランダという場所が好きなんですよね、僕。部屋の中だけど外、外だけど部屋の中、みたいな。どっちつかずな感じ。雨はしのげるけど部屋の中ほどのぬくもりはない感じとか。書いたのが冬だったんですけど、冬の寒さはベランダではしのげない、みたいな。それがすごくいいなと思って」


それが〈半端な僕にはよく似合う〉と。


「そう、めっちゃ似てるなー、俺こそがふさわしい場所だ、と思って。これはベランダで聴いてほしいですね(笑)」

最近の大きなテーマはそんなに自分を卑下するな、と。だって自分はずっと頑張ってるじゃないか、努力してるじゃないかって

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