【LIVE REPORT】
SUPER BEAVER〈都会のラクダSP〜ラクダビルディング&ビルディング〜〉
2020.10.03 at 日比谷野外大音楽堂(有観客配信ライヴ)
歌声の聴こえない客席。でも聴こえる気がした。それくらい気持ちが溢れていた。その見えない思いを受け取ろうと4人も必死だった。聴いてくれるあなたへ気持ちを伝えたり、あなたが伝える気持ちを受け取ったり、そういったやりとりから生まれる音楽。あらためてSUPER BEAVERの根っこにあるものを実感させられたライヴだった。
SUPER BEAVERが日比谷野外大音楽堂にて行った、有観客での生配信ライヴ。時間になり会場の様子が映し出される。隙間のある客席は、これから始まるライヴへの期待を感じさせながらも、やはりどこか寂しい。メンバーが登場しても、拍手の音だけが響く。ステージもフロアも、お互いに少し戸惑っているような雰囲気が画面からも伝わってくる。1曲目「ありがとう」のワンフレーズを唄い終えると、〈ふぅ〉とあらためて気合いを入れた渋谷。それ以降、戸惑いや緊張といったネガティヴな要素を一切感じさせなかったのは、さすが百戦錬磨のライヴバンドだ。
4人はいつも以上に〈伝える〉〈届ける〉ということを音や歌だけでなく、全身で表現していた。柳沢と上杉のコーラスは叫びに近いくらい声を張り上げていたし、渋谷はステージの端から端まで動き回り、少しでも聴き手のそばにいこうと手を伸ばす。藤原のドラムもいつもより熱っぽい。なにより彼はマイクがなくても誰よりもデカイ口で歌を口ずさんでいる。
ライヴ中、渋谷が野音の客席に呼びかけている時、柳沢はカメラのほうへ目線を送る、というような場面が多く見られた。それは逆もしかり、他のメンバーもしかり。今回の公演は〈生配信ライヴを有観客で行う〉と説明されていた。〈有観客ライヴを生配信する〉という言い方をしなかったのは、おまけで生配信を行うわけではなく、あくまでも画面の向こう側にいる人にも音楽をきちんと届ける、というバンドの姿勢の現れだろう。だからカメラに向かってマイクを向けたり、メンバー紹介では「配信をご覧のあなた」とも言っていた。観る場所がどこであろうと、自分たちのライヴにお金と時間を使ってくれる人に対する意識は変わらない。むしろ直接伝えられないぶん、その思いは強くも感じられた。
現場至上主義の彼らにとって配信ライヴはその流儀に反するだろう。でも7月に行ったライヴドキュメントの配信を経て、自分たちが楽しいと思えたこと、画面越しでも伝えられること、伝わってくるものを確認できたから今日がある。ツアーができないから生配信すればいい、感染防止対策をしてとりあえず東京だけでライヴすればいい。そういう、その場しのぎの決断をしないのは、時間がかかってでも、自分たちが納得できる答えを見つけようとする彼らの誠実さだ。何が正解で不正解か、正しいものがわかりづらい今の世の中だけど、〈あなたの自慢になりたい〉と穏やかなメロディで唄われた新曲「自慢になりたい」を聴きながら、ここに込められた真っ直ぐな思いは、一ミリも疑うことなく信じられると思った。
「ここからは、今まであなたがいなかったら絶対成り立たなかった曲を、今日のところはひとまず俺たちだけでぶち上げていくんで、よろしくお願いします!」と渋谷が宣誓し、「東京流星群」へ。普段であれば客席から大合唱が起きるこの曲も、もちろん歌声はない。しかし、全力の4人のパフォーマンスが少しずつステージと客席と画面の向こうを近づけていく。スタート直後こそ戸惑いを感じさせた客席も、いつの間にかブンブンと手を振り、頭の上で大きく手拍子をしている。声が出せないぶん、それ以外の方法で今の感情をステージにぶつけようとする。「美しい日」では、キャパ半分とは思えないほどデカイ手拍子が響いた。跳ねるリズムが印象的な「予感」では、ピョンピョン跳ねる客席の影に観ているこちらの心も躍った。その気持ちに応えるようにバンドの音はより一層躍動的になり、メンバーの笑顔がさらに大きくなる。「届いてるぞ」「伝わってますよ」と丁寧に返す渋谷。
そのあとの「秘密」は、間違いなく名場面だった。いつもなら渋谷の歌に続いて、客席から歌が返ってくるシーン。柳沢、上杉、藤原のコーラスを止めて、マスク姿の客席へ渋谷がレスポンスを求める。もちろん無音。しかし画面に映る客席を見ると、手をあげて、手拍子をして、マスクの下で心の中で、大きな声で唄っているのがわかる。配信画面のチャット欄はシンガロングの文字でいっぱい。手拍子の絵文字も溢れていた。目には見えない、声にならない思いが大きくうねって、ひとつの塊になる。全身でその思いを浴びた汗だくのメンバーは、この日いちばんいい表情をしていた。
「4人で成し遂げてきたことは、もしかしたら一個もないかもしれない。今でも誰かと一緒に音楽鳴らしてる気持ちでいます。だからこそ、一対一で目を見て……伝えよう、もそうだけど、受け取ろうと、今日は必死にやりました。あなたのおかげでこれからも音楽できそうだなと心から思いました」
そんなMCに続いてラストの「ひとりで生きていたならば」が演奏される。〈ひとりで生きていたならば こんな気持ちにならなかった〉〈原動力はずっとひとりで生きていないこと〉、飾らない歌詞を渋谷が感情的に唄いあげる。バンドと聴いているひとりひとりを優しく包み込むエバーグリーンなメロディ。伝えた思い、そして聴いてくれたあなたが伝えてくれた思い、さまざまな感情が曲の中で交差して生まれた温かい空気感が、画面をとおして伝わってくる。本気で誰かと向き合うから、心が動く。ひとりじゃないから悔しさもうれしさも大きくなる。誰かと一緒に過ごせることが当たり前じゃないとわかった今、この感覚は痛いほどよくわかる。そして、こういう日を繰り返しながら、SUPER BEAVERはこれからもバンドを続けて、私たちに新しい音楽を聴かせてくれるんだろう。「また会おう」。柳沢が最後にしてくれた約束が、暗転したステージに優しく残った。
終演後、横浜アリーナにて無観客の生配信ライヴを開催することが発表された。しかも、YouTubeにて無料で配信されるという。これまでの2つの配信よりも、さらに多くの人が彼らのライヴを目にする機会となるだろう。それでも彼らの姿勢はおそらく変わらない。観てくれる、聴いてくれるあなたへ全身全霊で音楽を伝えること。ただ、それだけだ。
文=竹内陽香
写真=青木カズロー
【SET LIST】
01 ありがとう
02 ハイライト
03 証明
04 閃光
05 →
06 361°
07 自慢になりたい
08 27
09 東京流星群
10 突破口
11 美しい日
12 予感
13 秘密
14 ひとりで生きていたならば
12月8日(火)、 12月9日(水)、横浜アリーナ2days 生配信ライヴ決定!
SUPER BEAVER 15th Anniversary
都会のラクダSP 〜特大のラクダ、イッポーニーホーサンポー〜 @横浜アリーナ
日程:2020.12.08
OPEN 19:00 / START 20:00
※生配信(アーカイヴ:2020年12月14日(月) 23:59まで視聴可能)
※限定ライヴの為、詳細は、該当者にのみ通達
※中止になったツアー詳細はページ下部をご確認ください。
SUPER BEAVER 15th Anniversary
都会のラクダSP〜全席空席、生配信渾身〜 @横浜アリーナ
日程:2020.12.09
OPEN 19:00 / START 20:00
価格:無料
配信先:SUPER BEAVER Official YouTube
視聴URL:https://youtu.be/j0CF6aqlUPk
NEW SINGLE「突破口 / 自慢になりたい」
2020.10.21 RELEASE
■初回生産限定盤(2CD)
■期間生産限定盤(CD+DVD)
■通常盤(CD)
〈CD〉 ※全形態共通
01 突破口
02 自慢になりたい
〈特典CD〉 ※初回生産限定盤のみ
SUPER BEAVERの厳選されたライブ音源6曲収録!
01 証明 (17.04.30 日比谷野外大音楽堂 単独公演)
02 うるさい (18.04.30 日本武道館 単独公演)
03 人として (18.04.30 日本武道館 単独公演)
04 閃光 (19.12.30 COUNTDOWN JAPAN 19/20 EARTH STAGE)
05 27 (20.01.12 国立代々木競技場 第一体育館 単独公演)
06 美しい日 (20.01.12 国立代々木競技場 第一体育館 単独公演)
〈特典DVD〉 ※期間生産限定盤のみ
TVアニメ『ハイキュー!! TO THE TOP』第2クール ノンクレジットオープニング映像
SUPER BEAVER オフィシャルサイト http://super-beaver.com/