【LIVE REPORT】
go!go!vanillas special live “MAKE UP CITY” at Blue Note Tokyo
2020.09.26 at Blue Note Tokyo
自宅アコースティックライヴ、そしてバンドセットでの配信ライヴを経て、ようやく開催されたgo!go!vanillasの有観客ワンマンライヴ。場所は伝統あるジャズクラブ、Blue Note Tokyoで、新型コロナウイルス感染防止ガイドラインに基づいて、定員は座席の50%にあたる140名限定。それを1日2ステージ、さらにYouTubeでも無料配信が行われた。
観に行ったのは2回目の公演。席に腰掛け、食事やお酒を楽しみながらメンバーの登場を待つ会場内は、当たり前だがライヴハウスの開演前とは違い、リラックスした雰囲気が漂う。おそらくほとんどの人が久々の生のライヴであるにも関わらず、だ。それは演奏が始まってからもそうで、メンバーはスーツでビシッと決めてはいるが、ほとばしる熱量を爆発させる、というよりももっと自然と音楽と戯れるようなプレイだった。観ているこちら側も手を挙げたり手拍子は起きるけれど、食事や会話の延長に音楽があるような印象。ライヴ中に牧がBlue Noteへ来たことがある人に挙手を願っていたが、手を上げたのはほんの数人。ライヴハウスやフェス以外で音楽の楽しみ方を提示することも今回の公演の狙いのひとつだったのかもしれない。
実際、「今日はひと味もふた味も違ったライヴを皆さんにお披露目したいと思っております」と牧は口にしたし、披露された11曲は、この日この場所に合わせたアレンジが施されていた。1曲目からゲストミュージシャンとして栗田祐輔(Glider/ピアノ)が参加し、7曲目の「エマ」以降はファンファン(くるり/トランペット)も加わった6人体制。しかし全体的なアレンジは音源から引き算したようなシンプルな構成で、身体を動かしたくてウズウズするというよりも、心地よく身体を揺らしたくなる感覚。レコードの針を落として音楽に酔いしれる様子を唄った「ビートクラブ」は、こんな日に聴くとより感慨深く聴こえてくるのもよかった。
柳沢のギターとピアノが美しく絡み合う「パラノーマルワンダーワールド」のイントロ。いつものライヴでは牧がハンドマイクで身体を踊らせながら披露する「Do You Wanna」も、この日はギターをプレイしながら。生のバンドの音によって、熱気や勢いとは違った形で身体に曲が染み渡っていく。アレンジがシンプルなぶん、一人ひとりの表現力やスキルが試されるステージ。しかもバンド史上初の2回まわし。しかし、これまでにさまざまな音楽を吸収しアウトプットしてきたこと、メンバーが1人不在の状態でツアーを廻った経験、もっと変わっていかなければと自身と向き合って高めてきたこと――そういったこれまでのバンドの歩みが、しっかり演奏の土台を支えていることが4人の豊かな音から伝わってくる。
ライヴで幾度も聴いてきた「エマ」や「平成ペイン」は、ピアノとトランペットが入ることで気分をアゲながらも、飾りすぎないアレンジや音作りによって、曲本来が持つポップさや、牧が追求してきた普遍性をあらためて感じられた。ライヴでは4人とフロアがぶつかり合いながらテンションをブーストさせるような曲のイメージが強かっただけに、それはとても新鮮だったし、メンバーの半分以上が30代を迎えた今、安定してこういうライヴができるのは、今のバンドの状態がいいということだろう。go!go!vanillasはつねに「変化」と「進化」を繰り返してきたバンドだ。ロックバンドのロマンやこだわりは持ちながらも、そこにヘンに固執することもなく、今の時代やその時の年齢にフィットする柔軟さがある。この日聴かせてくれた、自由かつ穏やかで、音を奏でる楽しさは決して失われない躍動的なサウンド。それは、若さや勢いだけではなく、10年後20年後でも新鮮にこういった曲を演奏している4人が想像できるほどだった。
そして、もうひとつ記しておきたいことがある。今回の有観客ライヴに対して牧はライヴ中、曲を作って聴いてもらう、そういうサイクルがないとバンドは疲弊していく、という話をした。だからいつもとは違う形だけど、有観客でライヴができた一歩が楽しかった、と。そのあとに披露されたバニラズ流のボーイミーツガールナンバーの「ラッキースター」を、軽快に、生き生きと演奏する6人を観て、どうしようもなく胸がドキドキした。コロナ禍以降、心が疲れることが多かった。スマホやパソコンの画面の中、限られた音響で音楽を楽しむには限界もある。けれど今、目の前で楽しそうに演奏するメンバー、眩しい照明、大きな音、牧の言葉、恋する瞬間を描いた「ラッキースター」、そういったいろんな要素が重なり、まるで君に一目惚れしたラッキースターの主人公のように、胸がものすごく高鳴った。なんてことない瞬間なのに、一瞬で世界の色が変わっていくような感覚。その感覚があるから、また明日から頑張ろうと思える。ライヴは、音楽はそういうものだし、そうであってほしい。あらためてそれを感じられたことがとてもうれしかった。
さらに、この日の模様も収録される新作「鏡 e.p.」をリリースすることが発表された。ひと足早くこの作品を聴かせてもらうことができたが、まだ詳しくは書けないけれど、メンバー4人の個性が激しく主張し合う一枚だった。初の日本武道館公演を前にリリースする作品として、さらなる進化と多分に遊び心が張り巡らされている。今の彼らにしか作れない作品であることは間違いない。音楽と人12月号(11月5日発売)では、メンバーインタビューをお届けする予定なので、お楽しみに!
文=竹内陽香
写真=西槇太一
【SET LIST】
01 マジック
02ビートクラブ
03 パラノーマルワンダーワールド
04 Penetration
05 Do You Wanna
06 鏡
07 エマ
08 ミスタースウィンドル
09 平成ペイン
10 ラッキースター
NEW EP「鏡 e.p.」
2020.11.18 RELEASE
■完全限定生産盤(CD+DVD) ※7inchサイズ・スペシャルパッケージ仕様
■通常(CD)
〈CD〉 ※完全限定生産盤・通常盤共通
表題曲「鏡」をはじめ4曲収録
※後日発表予定
※CD/DVDの収録内容をスマホでも楽しめるプレイパス対応
〈DVD〉 ※完全限定生産盤のみ
2020/9/26に行われた〈go!go!vanillas special live “MAKE UP CITY” at Blue Note Tokyo〉から未配信楽曲を含む、当日の公演を収録(収録曲数・選曲未定)
※詳細後日発表予定
【「鏡 e.p.」早期予約キャンペーン】
“名前入り武道館ラミパス”がもらえる早期予約は、10/1まで受付中!
ご予約&詳細はこちら
https://gogovanillas.com/news/detail/4105
〈go!go!vanillas ROAD TO AMAZING BUDOKAN TOUR 2020〉
11月7日(土)愛知県芸術劇場 大ホール
11月13日(金)福岡サンパレス ホテル&ホール
11月15日(日)神戸国際会館 こくさいホール
11月23日(月)日本武道館
go!go!vanillas オフィシャルサイト https://gogovanillas.com/