UKプロジェクトのレーベル部門とプロダクション部門に所属するバンドが一堂に会する夏の恒例イベント〈UKFC on the Road〉。今年でめでたく10回目を迎えるはずだったが、新型コロナウイルスの影響により、〈UKFC in the Air〉とタイトルを変更して、オンラインでの生配信という形で開催された。無観客のライヴハウスに登場した9組のバンドは、それぞれにオンラインだからこその魅せ方を展開。そこからは、このイベントの1回目から脈々と受け継がれているものをあらためて実感させられたのだった。
そこでここでは、初年度から皆勤賞のPOLYSICSハヤシとBIGMAMA金井による対談を実施。各バンドのレポートとともに、〈UKFC in the Air〉を振り返ります。
特別対談
ハヤシヒロユキ(POLYSICS)×金井政人(BIGMAMA)
コロナの影響もあり、オンライン開催となりましたが、それぞれ10回目となるUKFCでのライヴはいかがでしたか?
ハヤシ「すごい楽しかったな。というか、なんか不思議な感覚だった。照明バリバリだしライヴやってる感じはちゃんとあるんだけど、お客さんいないっていう。〈なんだろう? この感じ〉って不思議な感覚。レアな体験だったなぁ」
POLYSICSとしては、初の配信、かつ約半年ぶりのライヴで。
金井「僕はPOLYSICSのライヴを観てて、今まで観た中で一番カッコいいって思いましたね」
ハヤシ「おおっ、何いきなり(笑)」
金井「今回のUKFCのレギュレーションで、出番が終わったら楽屋を空けなきゃいけないっていうのがあったし、一番手だったんで、ライヴ終わって家に帰って。で、テレビに繋いで、大きな画面でお酒片手に観たんですけど、例えばヤノさんがドラム台からおりて、シンセドラムの前で叩く瞬間の光景であったり、今まで見れなかったアングルからの表情をリアルタイムで追ってくれる配信ならではのカメラワークで、それぞれのストロングポイントがきっちり見えてきたし、POLYSICSの新しい楽しみ方、可能性をすごく感じるライヴだったなと思って」
ハヤシ「すげぇ。めっちゃ褒めてくれてる(笑)」
今回は、ライヴ後にトークコーナーが設けられていましたが、そこでハヤシくんは、配信ライヴということで、どう向うかを考えた結果、内側に向かうことにした、と言ってましたよね。
ハヤシ「そうそう。最初は、半年ぶりだし、新体制一発目だし、UKFCだし、客席に向けて……いわゆる画面越しのお客さんに向けて楽しんでもらう。そういうライヴをイメージしてセットリストも考えてたんだけど、みんなと話してるうちに、〈待てよ、無観客だよな。『トイス!』……シーン、みたいになるよね〉って。そこで負けずに俺は『トイス!』を言い続けられるのか?みたいなことを思ったり(笑)。そっから、立ち位置ももう少し考えてみようとか、もっとバンドとして何を見せるのかを考えてやらないとダメだなっていうモードになったんだけど、そこに行くまでけっこう時間かかったかも」
金井「配信ライヴって向き不向きがあると思っていて。バンドそれぞれにファイティングポーズの取り方があるのと一緒で、(配信ライヴを)やらないことが正解だったりするバンドもいるけど、POLYSICSが鳴らしてる音と、バンドとしてずっとブレなかった芯の部分がキチンと昇華されてて、すごくカッコいいと思ったんですよね。コール&レスポンスがあって、一緒に楽しもうぜっていうライヴも最高だと思うけど、こっちのほうがカッコいいぞって(笑)」
ハヤシ「あはははは。今回は、3人が内に向かってどんどんテンションを上げて、そこで完全燃焼するみたいなライヴにしようって話をしてて。それができてよかったかな」
本当にポリのライヴには圧倒されました。BIGMAMAは1週間前に配信で新体制後初のワンマンライヴやってましたけど、UKFCはどうでしたか。
金井「僕らの場合、どっちも観てくれてる人がたくさんいると思ったので、ワンマンライヴを観てくれた人の気持ちもちょっと考えて、なるべくそこでやってない曲を選んで。あと自分の中では、配信ライヴでは、よりレコーディング的に楽しむというか、レコーディングでも楽しい瞬間ってたまにあるんだけど、その楽しい瞬間をリアルタイムでどう伝えるか、みたいなことを考えてて」
ハヤシ「じゃあ、これまでのライヴでの感覚とは全然違う感じで臨んでるんだ」
金井「違いますね。そういう意味では、〈観られてる・観せる〉という部分に関してはまだ弱さがあるかもしれないけど、5人でスタジオで音を鳴らしていて楽しい、っていう瞬間をカメラに追いかけてもらう、みたいな感覚が強いですね」
〈楽しさ〉を伝えようとするんじゃなくて、自分たちの中から湧き出てくる〈楽しさ〉をリアルタイムで観せる、そういう感覚であると。
金井「そう。感情や想いって歌や演奏に宿ってる、と信じているから、まずはバンドで音を鳴らして5人で息が合った瞬間って楽しいよね、っていうところからもう1回やり直すみたいな感じというか」
ハヤシ「それはやっぱり配信だから、ってことだよね?」
金井「いや、一昨日出たRUSH BALLはお客さんがいましたけど、同じ意識でしたね。何よりも大切にしなきゃいけないのは、気持ちよく唄うこと、バンドで演奏することを楽しむことだっていう。その意識に戻るのは、そんなに悪いことじゃないなって思いましたね」
金井くんが、レコーディングみたいな感覚、バンド内で音を出す楽しさに向かっていったのと、ハヤシくんが、内側に向かってやろうと思ったというのは、どこか似てますよね。
ハヤシ「そうだね。俺らと同じような感覚で今回のライヴに臨んでたとは思わなかったから、金井くんの話聞きながら、意外な発見って思った(笑)」