【LIVE REPORT】
Uru 〈Uru Online Live 2020「あなたと私」〉
2020.09.06 (無観客生配信ライヴ)
Uruにとって初の配信ライヴ、〈あなたと私〉。それは公演名のとおり、曲を通じて彼女と一対一で向き合うような、とても濃密なものだった。
開演時刻である19時。サポートメンバーが待機するステージ上に、水の弾く音が響き渡る。照明もグッと落とされた神秘的な空間に現れたUruは、定位置につくやいなや深々と一礼し、マイクを手に取ると、まず披露されたのは「今 逢いに行く」。〈君がもしまだ僕を求めてくれるのなら/もう迷わない 今逢いに行くよ〉。ツアーは延期になってしまったものの、こうして歌を届けている今の状況と歌詞とが絶妙にリンクし、高揚感がさらに高まっていく。そのまま「奇蹟」が披露されたあと、MCへ。「今、みなさんはどんなふうに聴いてくれているでしょうか。ソファに座りながら、ご飯を食べながら、お酒を呑みながら、それとも寝る前に布団の中で聴いていますか? 今日はこんなふうに、ちょこちょこ皆さんに話しかけていこうと思っているので、よろしくお願いします」と、観客を思って紡がれる言葉の一つ一つに優しさが滲んでいて、思わず心が温まった。
続いて、wacciの「別の人の彼女になったよ」のカヴァーや、「remember」と「いい女」を立て続けに披露。それこそ、水のようにスッと心になじむ歌声の美しさは言わずもがな、通常のライヴでは紗幕が用いられているが、それを使用しないどころか豊富なカメラワークで彼女の表情の変化を見せたり、画面がモノクロに切り替わったりと、配信ライヴならではの試みによって曲にさらなる深みが与えられている点も、また見応えがあっていい。その後再びMCに突入したのだが、「ちょこちょこ皆さんに話しかけていこうと思うので」という冒頭にあった言葉のとおり、この日は曲中に挟まれる他愛のないMCが印象的だった。子供の頃、夏休みに母親とのある約束を破ってしまったがゆえにコテンパンに叱られた話や、バンドメンバーとのグループLINEに「たまには他愛のない話を」と思い話題を投下したところ無反応であったことなど、彼女の神秘的な出で立ちに反して、お茶目な一面が垣間見られるような話題の数々につい顔が綻んでしまう。
思い入れの詰まった曲だというハナレグミの「サヨナラCOLOR」を披露する前、彼女は次のように語りだした。「昔の私は臆病で1人で何かをすることができなくて、でも1個だけ自分を肯定できたのは、最後には自分のやりたかったこと、行きたい道を選べたことです」と。音楽の力をたくさんもらって、こうして前へ進むことができたという。この日は、こんなふうに本音で構成されたMCや選曲から、彼女の中にある「音楽を通じて誰かの支えになりたい」という思いが強く伝わってきた。自分の背中を押してくれたのはまぎれもなく音楽であって、自分が音楽に救われたように誰かの支えになりたい。そんな思いが、音楽の道を志した日から今でも絶えず根底にあるのだろう。だからこそ、曲ごとに世界観は違えど、彼女の歌声に包まれていると不思議と1人じゃないと思えてくるのだ。
〈希望のはな 繋いだ絆が/今僕らの胸の中にあるから/決して散ることはない/生きる力〉
〈何の為向かうのか見失いそうな時に/守り抜きたいものがあること/気付いたんだ〉
これは終盤に披露された「フリージア」の一節であるが、個人的にはこの曲が一番心に刺さった。臆病で自分に自信のなかった彼女が、勇気を出して飛び込んだ先で出会った、守り抜きたいもの――今の彼女にとって、それはきっと画面の向こうにいる「あなた」であって、彼女は自身の弱さを吐露しながらも、今、唄うことで誰かに寄り添い、支えている。音楽の力が循環している様に、そしてしなやかで強い彼女の心に、思わず胸を打たれたのだ。
終演後、画面に流れたエンドロールには、今回のライヴに携わったスタッフ全員のクレジットが掲載されていた。さらに、舞台裏の様子も映し出されたのだが、そこには、本番直前に真剣な表情で何かを確認したり、信頼できるスタッフやバンドメンバーと談笑するUruの姿がおさめられていた。愛する人のために、愛する人たちと作り上げた空間。彼女は、曲を通じてこれからも幾度となく光を与えてくれるのだろう。フリージアの花言葉は「親愛の情」であるが、まさにそれが終始溢れていた時間だった。
文=宇佐美裕世
写真=西槇太一
【SET LIST】
01 今 逢いに行く
02 奇蹟
03 別の人の彼女になったよ
04 remember
05 いい女
06 marry
07 チェリー
08 fly
09 サヨナラCOLOR
10 Funny Bunny
11 プロローグ
12 フリージア
13 あなたがいることで
14 星の中の君
アーカイヴ配信
9月6日(日) 22:00~9月9日(水)23:59まで
※配信期間中は何度でもアーカイブ視聴可能です。
https://uru-official.com/feature/onlinelive_2020
NEW SINGLE「振り子/Break」
2020.10.28 RELEASE
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「振り子」が、10月30日公開の映画『罪の声』主題歌に決定!
また、「Break」は、10月3日から放送が開始する、読売テレビ・日本テレビ系テレビアニメ『半妖の夜叉姫』のエンディングテーマとして起用されています。
「振り子/Break」特設サイト https://uru-official.com/feature/9th_single
Uru オフィシャルサイト https://uru-official.com/