【LIVE REPORT】
〈SUPER BEAVER 15th Anniversary 都会のラクダSP ~LIVE document~〉
2020.07.11(無観客ライヴ&ドキュメント映像配信)
ライヴハウスに入ったメンバーは、セッティングを眺めながら、まるで初めて見るおもちゃを前にしたように、胸の高鳴りを言葉にしていた。苦しい時こそ、その状況をひっくり返して、楽しいことを見つけようとしてきたバンドのスタンス。〈SUPER BEAVER 15th Anniversary 都会のラクダSP ~LIVE document~〉には、その姿勢が敷き詰められていた。
7月11日、SUPER BEAVERが行った無観客でのライヴ&ドキュメント映像の配信。コロナ禍で通常のライヴができなくなり、多くのミュージシャン、バンドマンがライヴを配信しているが、彼らはあえて事前に収録した映像を流すという方法をとった。メンバーの会場入りからリハまでを追いかけた密着映像と全7曲のライヴという構成。それは、撮って出しのものではなく、多くのスタッフが関わり、演出、カメラワーク、編集に至るまで、緻密に作り上げられた映像作品に仕上がっていた。
空っぽの新木場スタジオコーストのフロアに4人分の機材が置かれ、向い合せでの演奏スタイル。ライヴハウスで鍛え上げてきた彼らならば、定位置でいつもどおりのライヴをやっても、観る人を惹きつけるものにできたはず。しかし、彼らはそれをしなかった。「相手がいて成立するライヴをしてきた」「届けた先に人がいるのが大前提」という映像中のメンバーの言葉のとおり、ライヴでは「ギター柳沢亮太、ベース上杉研太、ドラム藤原“32才”広明、ボーカル渋谷龍太とあなたでSUPER BEAVER」と必ず言ってきたし、渋谷は以前、「知らない人同士の人生がSUPER BEAVERの音楽を通してクロスオーバーする瞬間にロマンがある」とも話してくれた。「いつも通りスタージ上で構えてやるのもひとつだけど、それをやるのが想像できなかった」と柳沢が素直に口にしていたが、がらんどうなフロアに向かってライヴをする、そこに意味やワクワクを感じられなかったのだろう。しかしそこで、だからライヴはやらない、という選択肢にならないのがSUPER BEAVERだ。いつもどおりじゃワクワクできないなら、別なことをして楽しめばいいという決断。向き合う「あなた」がいないのであれば、いつも「あなた」がいる場所で、メンバー同士で対峙すればいい。向き合った4人のフォーメーションにはそんな意志も込められているように見えた。
そして映像に映る彼らは、その空間、この状況をなによりも楽しんでいた。やらなきゃいけない状況だからしょうがなくやったのではなく、できることを模索して、自分たちが面白いと思えるものを形にする。SUPER BEAVERは「あなた」という存在を大事にするバンドではあるが、そのスタート地点には「自分」というものが必ずある。自分が信じたもの、4人が楽しいと思えたうえで、それを「あなた」に真っ直ぐ届けて一緒に楽しんでもらいたい。楽しいことは1人より、大勢でやったほうが楽しい。その純粋な思いが彼らのずっと変わらない原動力であることを、あらためて実感する。
自分がワクワクできないと、あなたと作り上げられないとライヴとは言えない。しかし、ステージに立たなければバンドマンとは言えない。じゃあ、無人のライヴハウスで粛々とライヴすることに意味はあるのか。いろんな思考を巡らせながら、彼らは画面越しでリアルタイムで繋がり合うでも、「ライヴの代わり」のライヴをするのでもなく、今のバンドの意志を記録した映像作品を配信する、という方法を選んだ。もっと楽な道を歩んだって、どれかを切り捨てたって前に進めるはずなのに、決してそれをしないから、彼らの音楽はどんな時でも信頼できる。逆境をポジティヴなエネルギーに変えて、転がり続けてきたSUPER BEAVER。この日のラストナンバーは、その姿勢を象徴する「ハイライト」だった。彼らはどんな状況でもブレることなく、自分たちの信念を貫きながら、「あなた」と一緒にワクワクできる瞬間を求めて、必死に頭と身体を使って、音楽を鳴らし続けていくだろう。そんなことを思いながら、〈死ぬまで死なないように/その為に僕らは 必死でありたいよな〉というフレーズを噛み締めたのだった。
文=竹内陽香
写真=Taka"nekoze_photo"
【SET LIST】
01 歓びの明日に
02 青い春
03 正攻法
04 予感
05 ひとりで生きていたならば
06 嬉しい涙
07 ハイライト
SUPER BEAVER オフィシャルサイト http://super-beaver.com/