フジファブリックの山内総一郎(ヴォーカル&ギター)がツイッターを始めて、今年で丸2年を迎えた。正直、SNSとは大きな距離がありそうなイメージの彼がツイッターを始めたこと自体衝撃的だったのだが、何よりも驚いたのは、バンドの情報や自身の思いを今でも発信し続けているということ。昨年のデビュー15周年というアニバーサリーイヤーが幕を閉じようと、彼は時に苦戦しながらもマイペースにツイッターと向き合い続けている。例えば、先日配信リリースされた新曲「光あれ」に関しても、バンドの公式ツイッターでリリース情報がアナウンスされる前に、山内個人のツイッターで突如歌詞のみを公開するというサプライズが行われた。きっとその裏側には、ファンの人たちを楽しませたいという思いだったり、フジファブリックをもっとたくさんの人に知ってもらいたいという強い思いがあるからこそなのだろう――という勝手な分析のもと、実際のところどう思っているのかを紐解くべく、「山内総一郎とツイッター」をテーマにインタビューを敢行。話を聞いているうちに見えてきたのは、周りの人たちの気持ちを無意識のうちに慮ってしまう、山内らしさに溢れた「優しさ」だった。
山内さんはツイッターを始めてちょうど2年が経つそうですが。
「あ、もう2年かぁ」
たしか〈フジフレンドパーク2018〉のZepp Osaka Bayside公演で発表されたんですよね。「山内総一郎、ツイッター開始!」とモニターに大々的に映し出されてました。
「ツイッターて!みたいな(笑)。もともと『インスタじゃなくて、君の場合はツイッターだ』って言われてたんです」
(笑)せっかくの周年なので、今回は「山内さんとツイッター」というテーマで、いろいろお話を聞かせていただけたらと思います。
「わかりました。僕、全然機能とかわかってないですけど……」
ハッシュタグのつけ方だったり、正直苦戦されている様子は窺えます。そもそもツイッターを始めようと思ったきっかけはどんなものでしたか?
「きっかけは何個かあって、まずはフジファブリックの15周年に向けて、ファンの方々と何かやりとりができたらなと思ったんです。もともとFAB CHANNEL(註:フジファブリックのスマートフォン版有料会員サイト)でブログを書いていたんですけど、それって一方通行じゃないですか。だから、見てくれる人からのレスポンスがあったり、それに僕も答えることができたらなぁと。……と言いながらもう2年経ってますけどね。実際のところ、あんまりやりとりはできてないです(笑)」
でもツイッターを見ていると、ファンの人が温かいリプライを送っているのが印象的です。ツイッターのいろんな機能に挑戦する山内さんを見守っているというか。なんか、いい感じにグルーヴが生まれてるなと思いました。
「はははははは! グルーヴかぁ(笑)。確かに『独特だ』とはよく言われます。そもそもツイッターを始める時に、Zeppの楽屋でダイちゃん(金澤ダイスケ/キーボード)に『とりあえず知らないボタンは押すな』って言われたんです」
あはははははは。
「それを言われてから、もう怖くて押せてなくて(笑)。あと全世界の人が読めるので、これは発信しても大丈夫かな?って考えながらやることもありますし。もちろん勢いでバッとやる時もあるんですけど、やっぱり誰かを傷つけるのは嫌じゃないですか。『そんなの軽くやったらいいじゃん』って言う人もいるけど、バンドをやってる身で、しかも事務所に所属していて……迷惑になったら嫌だなぁって考えてしまうんですよね」
言葉に対する責任の重さはどうしても感じちゃいますよね。
「そうですね。でもあんまり堅苦しくなり過ぎてもよくないし。やっぱり曲と似たところがあるんですよ。曲とは違うんですけど、発信するっていう気持ちの部分では似てるというか……すべての人の気持ちとか、みんなの気持ちが100%わかるわけではないんですけど、ツイッターを見てくれている人たちは今こういうテンションかな?っていうのを、なんとなく察しながらやってはいるというか。新曲の〈光あれ〉に繋がるんですけど、見てくれる人が明るい気持ちになってくれたらいいなって思います。いろんな有名な人のツイートを見てると、みんな面白いんですよね。自分はそういうことできないなって思いながらも、自分の周りの人というか、フォロワーの方が少しでも楽になってもらえたらいいなって考えてます」
それこそ「光あれ」の告知も、自粛期間中、バンドのオフィシャルツイッターより先に山内さんの個人ツイッターで歌詞を上げられてましたが。あれは意図的にされたんですか?
「そうですね。ある種バンドの広報じゃないですけど、バンドに対して期待してくれている人に一つでも先に届けられたらなって。まぁ、楽しんでもらいたいっていうのが基本的には音楽のあるべき姿だなと思うので。〈こうやったら楽しいだろ?〉とか押しつけがましい気持ちではなくて、〈自分たちも楽しみながらみんなも楽しもう〉っていう思いは、ああいう期間の中でもあったなぁ。それに、今まではバンド自体もそういうやり方をあんまりやってきてなかったんですよね。バンドがやってこなかったことをやるっていうのは、自分たちの興味の一つでもあったりするので楽しんでやれてますね。ダイちゃんに関しては、1日に1個か2個は絶対に呟いてて、それはそれですごいなぁと思う」
ちなみに、山内さんはもともとSNSとかは苦手なほうでしたか?
「めちゃくちゃ苦手でした……」
そんな山内さんがもう2年もツイッターを続けてこられたのは、フジファブリックというバンドそのものや、楽曲の魅力を伝えたいって強い思いが根底にずっとあるからなのかな?と思ったんですが。
「それはあると思います。それがなかったら、そもそもツイッターをやってないかもしれない(笑)。〈バンドのことを〉って思いがまずあるから、個人としてのことは……まぁ見つかったらいいなっていう程度で。俺、そんなに面白い生活送ってないんですよ。今はYouTuberの方とかが、モーニングルーティンみたいなの紹介してるじゃないですか。俺の生活はあんなにお洒落じゃないし、逆に毎日の中で違いを見つけるのが難しいというか。今の期間はどこかに旅行に行くとかもないし。例えば僕がもう少し歳がいったら、ツアー中とか少し早起きをして散策とかするようになると思うんですけど……。今はバンドの情報がオフィシャルで出たら、それに対するメンバーの気持ちの発信として使っているというか。スタッフ側の気持ちとメンバー側の気持ち、両方を見てもらうって感じかな」
なるほど。ちなみに、さっきルーティンっておっしゃってましたけど、あれは嘘をついてる人もいるらしいんです。動画を作るために、普段やっていないことをあたかもやっているように見せたり。
「そうなんや! 逆にめっちゃ面白いなぁ(笑)」
山内さんの場合、そこまで日常を作り込むことはたぶんファンの人たちも求めてないと思うんです。動画に力を入れていただくよりも、純粋にそのぶん曲をたくさん聴きたいって思う人のほうが多いというか。
「絶対そう。俺もそう思うんですよ。それに、ツイッターで〈こんなのください〉って求めてくる人もいないですからね。攻撃的なことを言ってくる人もいないし……そもそも、俺が人に牙をむくようなことを言ってないので」