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RADWIMPS、ニューアルバム「ANTI ANTI GENERATION」から見えてくるバンドの〈いま〉

text by 樋口靖幸

(これは『音楽と人』2018年1月号に掲載された記事です)


 
 まず最初にアルバム全体のことよりも先に触れておきたいことがある。
「PAPARAZZI〜*この物語はフィクションです〜」という曲だ。その導入として小学校の先生が作文の宿題を生徒に与える会話が収められた寸劇「<宿題発表-skit->」があり、それとクロスフェードしながら幕を開ける。軽い咳払いと「ハー、ツーツー、ハー」というラッパーのマイクチェックのような呟きを発する洋次郎。それはおちゃらけでもなんちゃってでもない、ガチのヒップホップである。これまでも彼らは曲の中にラップという手法を取り入れてきたことはあるが、ここまでヒップホップに傾倒する曲を作ったのは初めてのことだろう。その理由は唄われているリリックを聴けばわかる。歌詞のストーリー自体はアイロニーで覆われているものの、その核にある彼の感情がむき出しになっているのだ。「五月の蝿」にもあったそれに近い、世の中の〈ある行為〉に対する怒りと憎悪。具体的にそれがなんなのかをここで晒すことは避けたいが、洋次郎の実体験を基にした事実をフィクショナルなストーリーに仕立てた凄まじいインパクトのある1曲となっている。この曲があるのとないのとでは、アルバムの印象自体まるで違ってしまうだろう。それぐらい衝撃度の高い内容だ。


 というわけでアルバム『ANTI ANTI GENERATION』だが、想像以上に彼らの音楽性はアップデートされている。今まで以上に洋次郎は、音楽という深い森の中に足を踏み入れることを心から楽しんでいるような印象もある。簡単に言うと音楽を作ることに没頭し、夢中になっている、そんなアルバムなのだ。


 かつて彼にとって音楽とは、表現やコミュニケーションの手段であり、もっと言えば社会と繋がることのできる唯一のツールでもあった。彼が音楽家として無限に湧き出る泉のような才能を持っているのは言うまでもないが、あくまでも自分自身がその音楽の先頭に立って〈自分の感情を素直に吐き出し、表明する〉ことが優先されるべき事項だったはず。ただ彼がやっているのはバンドなので、メンバーとの有機的な関係性の中で生まれる化学反応を楽しんだり面白がったりする一面もある。つまり彼自身のドキュメントとバンドメンバーとの中で生まれるドラマの絶妙なバランスが、RADWIMPSという他のどこにも存在しない音楽を作り上げてきたとも言える。


 でもこの作品はどうだろう。『人間開花』の「トアルハルノヒ」で〈ロックバンドなんてもんを やっていてよかった〉と唄っているようなバンドのカタルシスは、3人の演奏の中からあまり見受けられない。それはむしろ客演とのコラボレーションによって際立たされているような印象が強い。ONE OK ROCKのTakaと掛けあいのヴォーカルが痛快な「IKIJIBIKIfeat.Taka」は、シンプルなエイトビートのロックンロール。ピアノをメインに据えたアダルトな色香を放つバラード「泣き出しそうだよ feat.あいみょん」は、女性ヴォーカルをフィーチャリングすることで新しい世界を提示している。そしてニューヨーク在住のラッパー・MiyachiとSOIL&”PIMP”SESSIONSのタブ・ゾンビを迎えた「TIE TONGUE feat. Miyachi, Tabu Zombie」は、曲を聴いただけでこれがRADWIMPSだと思う人はまずいないだろう。それほどこの曲のアレンジはフィーチャリングした2人のアーティストに寄せられているのだ。こういったコラボレーションはバンドとして初めてのことかもしれないが、閉塞感の強かったバンドの空気が前作とともに一気に解放されたことを思えば、ごく自然なことかもしれない。バンドメンバーだけでなく、より多くのミュージシャンとのセッションを通じて、今の彼らは音楽そのものを楽しむ行為にのめり込んでいると解釈できる。繰り返しになるが、『ANTI ANTI GENERATION』はこれまでのどの作品よりも音楽そのものへの探究心や好奇心が溢れているアルバムなのだ。


 そして、ここには音楽性云々とは別の、もっと強い洋次郎の思いも注がれている。アルバムのタイトルから想像できるかもしれないが、これは社会の中でマイノリティーな立場に置かれている人へ向けられたアルバムでもあるのだ。みんなに同調できない、社会にうまく馴染めない人が、どう自分を肯定し、日々に立ち向かっていくか。どの歌詞にもそんなメッセージやストーリーが描かれている。洋次郎自身が〈マイノリティーの人間〉であることは、これまでのインタビューで明らかにされてきたが、今回はそんな自分とよく似た誰かのために身を費やしたということなのだろう。もはや彼にとってそれが人生の本懐であるかのように、このアルバムは自分以外の誰かのために存在している。


文=樋口靖幸


NEW ALBUM『ANTI ANTI GENERATION』
NOW ON SALE

01 AntiAnti overture
02 tazuna
03 NEVEREVER ENDER
04 IKIJIBIKIfeat.Taka
05 カタルシスト
06 洗脳(Anti Anti Mix)
07 そっけない
08 <宿題発表-skit->
09 PAPARAZZI〜*この物語はフィクションです~
10 HOCUSPOCUS
11 万歳千唱
12 I I U
13 泣き出しそうだよ feat.あいみょん
14 TIETONGUE feat.Miyachi, Tabu Zombie
15 Mountain Top
16 サイハテアイニ
17 正解(18FES ver.)

RADWIMPS HP

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