デビュー満10周年の忘れらんねえよがリリースするニューアルバム『週刊青春』がすごい。「プレゼント盤」と称する完全受注限定生産バージョンには、本人編集による全300ページを超えるの本がセットになっており、200ページにも及ぶ書き下ろしの自伝をはじめ菅田将暉など忘れらんねえよを愛する著名人との対談や著名漫画家たちが描きおろしたマンガ集、さらに柴田の両親へのインタビューなど、己のすべてを徹底的に一冊の本に集約させた渾身の作品となっている。さらにアルバムに収録された「なつみ」は、女の子にフラれた直後にレコーディングされたという生々しい感情が記録された歌。エンタテインメントでもパフォーマンスでもなく、全裸の自分を惜しみなく出し切ろうとする姿は、もはや神々しくもある。そんなわけで彼と裸の付き合いがしたくなってサウナに行った。汗まみれで熱気にあえぐその横顔は、地獄をくぐり抜けてきた男の精悍さに溢れていた。
(これは『音楽と人』2020年1月号に掲載された記事です)
サウナはどうでした?
「いやぁ、良かったです。ここ最近の俺のテーマなんですけど、今まで〈そんなもんやんねぇよ〉とか〈そういうのねぇだろ〉みたいなに思ってたことを極力やろうとしてて。だから今までの俺だと今日も一回サウナ入ったところでやめてたんですよ、〈これはないな〉って」
「辛いだけで意味わかんねー」って言ってたもんね。
「だって一回目は苦痛しか感じなくて。そのあとの水風呂も〈何がいいのこれ!?〉って。だから『もう一回入ろうぜ』って言われた時、嫌がってたじゃないですか、俺」
すごい嫌がってた。
「でもふと思ったの。〈ここで入らないのはいつものパターンだな〉と思って。だからもう一回無理して入ってみたら……すげえ良くて!」
ははははは!
「ちょー気持ち良かったです。サウナ入ってる間ずっと恋バナしてたのが良かったのかな」
会話に夢中で20分ぐらい入ってたからな。
「素晴らしい体験でしたね。だからこういう体験は最近なるべく意識してやってます」
そうやって自分の中の何かを変えたいとか?
「変えたいところはあると思う。あと、今までの自分に飽きたっていう」
何そのカッコいい言い方(笑)。
「こんな自分に飽きたの。女の子と全然喋れない自分にも飽きたけど、そこはずっと変わらないのかも。とにかく自分に飽きたしもっとドキドキしたいですよ。あと最近とある漫画家さんとよく呑むようになったんだけど、その人が知らない人を俺にどんどん会わせてくれるんですよ。それも面白い」
その漫画家さんはなんで柴田を誘ってくれるんだと思う?
「きっかけは何だったかな……? でも単純に俺のことを面白がってるんだと思いますよ。俺もさっきみたいに恋バナをベラベラ喋ってるし。あと、もともと忘れらんねえよが好きだったらしくて。〈なつみ〉も聴かせたらすごい泣いたって」
ははははは。
「ベロッベロに泣いたらしい」
まぁでも「なつみ」はファンの人が聴いたら号泣するかもしれない。
「いると思う」
10年バンド続けて、柴田もついにそういう存在になったと。
「ねっ!! ついにカッコいいバンドになったなって思いますよ」
それ、インタビューでこっちが言うセリフだから(笑)。普通は「カッコいいバンドになりましたね」ってこっちが言ったら「そんなことないですよ」って謙遜するんだけど。
「いやぁ、だってカッコいいだもん……」
ははははは!
「本当にそう思う。ちゃんとカッコいいバンドになったなって。もちろんそう思ってないヤツなんて世の中にいっぱいいるけど、〈ばーか〉って思う。〈おめぇには分かんねぇんだな〉って」
自分ではどういうところがカッコいいと思う?
「うーん……まぁ、誠実なところ?」
また自分から言ったな(笑)。
「や、でも本当に思うんだよ。誠実にやってきたから後輩のバンドにも『好きです』って言われるんだろうし。最近、フェスとかイベントに出てもバカにされることがだいぶ減ったし」
色眼鏡で見られることは減ったと。
「最近だと嬉しかったのはHump Backっているでしょ? こないだツアーにも呼んでくれたバンドで、俺も超好きなバンドなんだけど、ヴォーカルの萌々子ちゃんは忘れらんねえよのことを本気で愛してくれてて。だから彼女にも〈なつみ〉を送り付けたんですよ。俺、いろんな人に〈なつみ〉を送り付けてる(笑)」
みんなの反応はどう?
「いろいろ。〈まあいいんじゃない〉みたいな人もいる。でも萌々子ちゃんからは『すごい泣いたし、これが歌だと思います』みたいな返事もらって。で、最近そういうことを言ってくれる機会がずいぶん増えた気がしてて。それは今まで誠実にやってきたからなのかなって」