この号が出る頃には東京ガーデンシアターでのワンマンを無事に終えているはずのlynch.と、3月の幕張メッセイベントホールに向け47都道府県ツアーも最終局面に突入したDEZERT。どちらも一歩一歩着実に会場の規模を大きくしてきた真面目なバンドだが、その在り方は対照的だ。lynch.は結成から20年、そのイメージや音楽性に大きなブレがなく、自分たちの美学を守り続けてきた安定志向。かたやDEZERTは作品やツアーのたびにドタバタ劇を繰り返す危なっかしいバンドで、そのコントラストはこの2人のキャラクターによるところが大きい。しかしながら彼らにはいくつもの共通項があり、それこそが両バンドにおける最大のストロングポイントでもあると思っているのだ。というわけで両バンドを担当してきた自分にとって念願だった対談企画、新年のお年玉だと思って楽しんでいただけると幸いです。またいつか対バンしてほしいなー。
(これは音楽と人2026年2月号に掲載された記事です)
年末の忙しいところすみません。
葉月「全然忙しくないです」
千秋「全然大丈夫です」
前にもこの2人で対談はやったそうで。
葉月「WEBでやりました。ツーマンやるからってことで」
千秋「僕らの対バン企画ですね」
それ、俺が名古屋まで観に行ったライヴですね。ダイアモンドホール。
千秋「そうっす」
あの打ち上げの2軒目は3人で呑みました。
葉月「僕、途中で帰っちゃいましたけど」
楽しくお酒を呑んだわけですが、そもそも今回の対談はずっと前からやりたいと思ってて。昔、増刊『PHY』で座談会やったのを覚えてます? 葉月くんと千秋くん、あとはミヤくん(MUCC)の3人で。
千秋「写真も撮りましたよね」
あの時と同じ写真をこのあと撮ります。メンチ切ってるヤツ。それをもう一回やりたくて。
葉月「すごい顔近づけるヤツですよね? ちょっと嫌だ(笑)」
そうなの? 自分的にはいい思い出なんだけど。
葉月「いいわけないじゃないですか。千秋くんもそうでしょ?」
千秋「単純にめっちゃ怖かったです、ミヤさんが」
葉月「ミヤさんはマジ怖かった」
彼はノリノリでしたね(笑)。あと、あの時は千秋くんが遅刻してきて。
千秋「や、あれは僕のせいじゃないんですよ! 僕はちゃんと集合時間に来たのに、スタッフが遅れたんですよ。それなのに僕のせいにして」
その座談会でも葉月くんから「イベントで一緒になって、先輩かと思ったら後輩だった」っていう千秋くんのエピソードで盛り上がりました。
千秋「アレですね、僕がちゃんと挨拶しなかったヤツ」
葉月「や、挨拶はしてくれたんですよ。でも『ウィッス』だった(笑)」
千秋「はははははは」
あれから10年近く経って、対バンのあとに酒を呑むような関係になったわけで。で、まずは近況ですが、lynch.はガーデンシアターでワンマンがあり。
葉月「そうっすね。その時に告知することになってるんですけど、 2026年はアルバムを出す予定なので、今はガーデンシアターの準備をしつつ、並行して曲作りをガッツリやってるところですね」

かたやDEZERTは3月に幕張を控えてまして。どうですか? バンドの空気は。
千秋「シビアっすね」
葉月「シビアなの?」
千秋「はい。僕はまぁいつもの感じですけど、バンドがシビアな空気になる時もあって」
それっていつものことじゃない?
葉月「え、DEZERTって仲良いんじゃないの?」
千秋「悪くはないけど、みんなで遊びに行くような感じじゃないっすね」
葉月「そうなんだ」
千秋「メンバー全員、まるで性格が違うんで。たぶん〈なんなん、アイツ〉みたいなのはいっぱいあるんじゃないですかね、僕に対して」
葉月「それはそうだと思います」
はははははは!
葉月「でも千秋くんも『ウィッス』の頃と比べたら全然違いますよ」
千秋「あざっす」
っていう話を名古屋の対バンの時にも言ってました。どちらのライヴも素晴らしくて。
葉月「そうでしたね」
千秋「正直かなりプレッシャーはあって。なんとなくlynch.のお客さんって、僕の得意技が通用しない気がして」
しかもlynch.の地元だし。
千秋「だからどう戦うかめちゃめちゃ考えて。でもそこが対バンの面白いところなんで」
ちなみに打ち上げでもいろんな話をしましたが、どんな内容だったか覚えてます?
葉月「どんな話をしたんだっけ?」
千秋「葉月さんからは『もっと感覚の人だと思ってた』って言われたのを覚えてます。それこそ何も考えないで、やりたいようにライヴをやって悪態をつく、みたいな。でもけっこう真面目なんだねって」
葉月「そうそう。ちゃんと考えた上でのパフォーマンスだってことをその打ち上げで初めて知って。それこそ〈lynch.のお客さん相手にこういうことはやれない〉とか。それって僕もめっちゃ考えてステージに立つ人間なんで、すごく意外だったけど同じだなって」
実は共通項があったと。他にもこの2人には似てる部分があると個人的には思ってまして。
葉月「作曲に関しては似てる部分があるんじゃないですかね」
千秋「それはたぶんそう」
葉月「例えば僕の場合〈今のlynch.にはこういう曲が必要だ〉みたいなことを考えるんですけど、千秋くんもそこはちゃんと考えて曲を作ってるイメージがあります」
千秋「葉月さんのおっしゃる通りですね。いろいろ考えながら作ってます。〈今のタームだったらこういうのかな〉とか思いながら。あと、たぶんlynch.の曲は完全に葉月さんの世界観で作ってると思うんですよ。ギターリフとかアレンジも。そこは僕も同じです。バンドでスタジオに入って合わせたりはしない」
葉月「一緒だね」

2人とも曲を作った時点で理想形があって、その通りにバンドが再現することを望むタイプ。
千秋「僕はわりとそうですね。本当は自分が思ってる以上のものがメンバーから出てくるのが理想なんだけど、そこまで期待してないんで」
葉月「僕も本当はスタジオでジャムったりして〈なんだこれは!?〉みたいな自分では閃きもしないような曲が生まれるのが理想ではあって。試したこともあるんだけど、なかなか難しいなって」
2人とも自分の曲に対するこだわりが人一倍強いと思います。
葉月「そうかなあ」
だってこないだも「プロデューサーとか入れてみたら?」って言ったら「絶対嫌だ」って(笑)。
葉月「プロデューサーが僕より上手くアレンジできると思えないんですよ。『ごめん、こんなふうになっちゃった』って去っていく未来しか見えない」
千秋「はははははは!」
葉月「しかもその作品は一生残るわけですよ。それが許せないんで」
面倒くさい(笑)。そう、意外と葉月くんって面倒くさいところがあって、そこも千秋くんと共通してるところじゃないかと。
葉月「そんな僕、面倒くさいですか?」
lynch.もDEZERTも外から見てるぶんにはいいけど、この2人と一緒にバンドをやることになったら心が病みそうな気がします(笑)。
葉月「なんで!(笑)」
千秋「病んだとしても、僕は悪くないですよ。だって僕はDEZERTを売りたいんですよ。しかも僕が曲書いて、僕が唄ってて、そこの優先順位を落とすわけにはいかないじゃないですか。なのに勝手に病まれても〈いやいや俺のほうがやること多いし〉って思うんで、勝手に辞めていただければ(笑)」
はははは、酷い!
千秋「病むくらいなら辞めたほうが絶対いい」
葉月「樋口さんがどんな役割で入ってくるのかわからないですけど、僕的には仕事の出来次第ですかね」
千秋「怖い!」
葉月「樋口さんが仕事のできる人だったら絶対病まないです」
その言い方ですでに病みそうなんだけど(笑)。
葉月「そうですか? できないんだったら僕、めちゃくちゃ攻撃しますからね。『何やってんの?』みたいな(笑)」
千秋「そりゃそうですよ(笑)」
もう終わりにしようか、この対談(笑)。
葉月「だってできないほうが悪いじゃないですか」
千秋「その通りです!」
じゃあ2人に共通してる魅力について。ヴォーカルとして自分が思う強みってなんだと思う?
千秋「誰と比べるわけじゃないですけど、圧倒的にバンドとしてやるべきことに時間を割いてることですかね。音と向き合ったり、いろんな音楽聴いたり。最近は自分の声も研究するようになって、その成果がようやく出てきたところで。つまり好きなんでしょうね、ヴォーカルが」
葉月くんはどうでしょう。
葉月「フロントマンとして誇っていいのかわからないけど、〈こういうことしたらこんな作用が生まれてこういうことが起こるよね〉みたいに物事を想像するのが得意というか。例えば曲作りだったら〈ここにこういう間奏があったらファンのテンションが上がるだろうな〉とか、ライヴだったら〈この曲のあとのMCでこういう言葉を投げたらこういう反応が来るだろうな〉とか、そういうのを考えてその通りになることかな」
では逆に自分にはない強みをお互いに感じる部分は?
千秋「葉月さんって〈カッコいい〉の幅が決まってて、そこから絶対にブレないところですよね。全体的なlynch.のカッコよさを支えるものとして、葉月さんがやってることは絶対にブレないというか。無理やり超えようともしないし、下振れもしない。だからlynch.のライヴって安心して観てられるんですよ。MCでスベってるところも観たことないし」
葉月「ははははははは」
逆に千秋くんはブレるタイプで。確か武道館でも……(笑)。
千秋「そうなんですよ! ゴリゴリ下振れするんで(笑)。だから葉月さんの安定感は対バンとかでも強いだろうなって。僕なんてたぶん葉月さん以上にめちゃくちゃ考えますから。それでも下振れすることもある」
考えすぎてね。
千秋「いらんことするっていう(笑)。そこは魅力っていうか、マジで羨ましいです」
葉月「自分でもわかります。そこがlynch.の強みでありつつ、つまらない部分でもあるのかなって」
そうかな?
葉月「やっぱりlynch.では千秋くんの言う通り、安定しててブレないことをやろうと思ってるし、自分でも〈lynch.の葉月〉であろうとしてるんで」
だからといって葉月っていうキャラクターを作り込んでる印象はないけど。
葉月「無理に作り込むと、それこそ不安定になっちゃうんで。だから無理はしない。そこはあくまでも自然に」
納得です。千秋くんに対してはどうですか?
葉月「相手のことを考えてライヴとか作品に向き合ってるところは僕と一緒なんですよ。ただ、そう見えないところが僕との違い。どんなに考えても〈うるせぇお前ら!〉みたいな破天荒キャラとしてやれてるところは、僕からしてみれば羨ましくもありますね」
ブレるところが羨ましいと。
葉月「そう。〈こいつは何をしでかすんだろう〉みたいな」
千秋「でも下振れた時の周りの引き方はエグいっすよ」
はははははは!
千秋「周りも引きますから」
しかも武道館で思いっきり下振れして(笑)。
千秋「……それ、何回も言わないでください(笑)」
あ、ごめん(笑)。
葉月「ははははは!」

文=樋口靖幸
撮影=森康志
ヘアメイク=黒沢葵(葉月)、大平修子(千秋)
lynch. INFORMATION
NEW LIVE Blu-ray
『lynch. 20TH ANNIVERSARY XX FINAL ACT「ALL THIS WE’LL GIVE YOU」25.12.28 TOKYO GARDEN THEATER』
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Disc.1:lynch. 20TH ANNIVERSARY XX FINAL ACT 「ALL THIS WE’LL GIVE YOU」 25.12.28 TOKYO GARDEN THEATER(ライブ本編映像)/オーディオコメンタリー付き
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DEZERT INFORMATION
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3月20日(金・祝)幕張メッセ イベントホール
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