【Live Report】
ACIDMAN×STRAIGHTENER×THE BACK HORN Tour “THREE for THREE”
2019.06.05 at Zepp Tokyo
アンコールが終わって、ACIDMAN大木が記念撮影をしようと他2バンドをステージに呼び込んだ。いい歳した大人たちが、慣れない様子で並び順や掛け声などを決めては笑顔を交わし合う。個人的にはライヴのあとにみんながイエーイ!とピースを決めるのはあまり好きではないけれど、この日だけは、普段はそんなこと滅多にやらない3バンドがまるで同窓会のような雰囲気で今を写真に収める姿に、彼らが歩んできた20年以上の道のりを深く感じざるを得なかった。
ACIDMAN、ストレイテナー、THE BACK HORNという、ともに一昨年、昨年に結成20周年イヤーを過ごした同世代3バンドによるスプリットツアー〈THREE for THREE〉。15年前くらいに学生時代を過ごし、3組のCDを必死に聴いていた自分のような人間からすると、飛び跳ねたくなる組み合わせだ。しかし、音楽性もライヴスタイルもメッセージも、それぞれに異なる。そして、今やその世代のロックシーンを牽引し、後輩に慕われ、多くのバンドやリスナーに愛される存在ではあるが、彼らに共通して言えるのは、つねに〈孤高〉であり続けてきた、ということ。馴れ合うことを良しとせず、時に異質。そんなイメージが強くある。だからこそ、お互いに強く惹かれ合うこともあったのだろう。
トップバッターを務めたのはストレイテナー。「Melodic Storm」で幕を開け、新旧のナンバーを織り交ぜたセットリストと手加減なしのプレイから、この日にかける彼らの思いが伝わってくる。ギラギラとした野心がほとばしるような10年以上前の曲。スタイリッシュでエッジの効いたサウンドは、当時学生で他の人と違うものを求めていた自分に、とても魅力的に映ったことを思い出す。そこから時間が流れ、最新曲である「スパイラル」にあるようなホリエの歌を中心とした楽曲は、彼らがどのようにバンドの懐を広げてきたのかがよくわかり、その温かさが胸に染みる。「それぞれまったく違う道を歩んできたからリスペクトし合えて、果てしなく馴れ合える」とホリエ。それだけ自分たちの確固たるものを確立してきた自負が、その愛情に溢れた言葉に繋がったのだろう。
初っ端からライヴ定番ナンバーを立て続けに披露し、会場の熱量をグッと引き上げたのは、二番手のTHE BACK HORN。今回の企画はドラム松田が発起人ということもあり、MCも気合いが入っている(笑)。胸ぐらを掴むような前半戦を終え、中盤、山田もギターを抱えて昔のミドルテンポのナンバーを披露した。抑えきれない衝動と胸に抱えた孤独や焦燥。バックホーンは昔から誰にも理解されない自分の中にある孤独に寄り添い、個人の力で道を切り開いていく強さをくれるバンドだった。「またこの3バンドで東京でやります」と山田が宣言し、「シンフォニア」で〈帰る場所はTHREE for THREEにあるから〉と歌詞を変え、ラストの「刃」ではたくさんの拳があがる。いつでも帰ってこれる場所があるから安心して闘いに行ってこい。孤独と闘い続けて道を切り開いてきた彼らからのメッセージに聞こえた。
SEとおなじみの手拍子の中、トリを飾るACIDMANが登場し、太くしなやかなサウンドがZepp Tokyo内に鳴り響く。浦山と佐藤がバンドの地盤をしっかり固め、大木の叙情的な歌詞と伸びやかな歌声を遠くへ飛ばし、圧倒的なスケール感へと昇華する。夢や希望を追いかけ、目に見えないものへひたすらに手を伸ばしていたあの頃の記憶が蘇る。「それぞれのバンドにストーリーがあって、それぞれ乗り越えてここに立ってます。皆さんも一緒でしょう」「見えない夢に向かってもがいてきた。そのもがく様に感動してくれたから今がある」と、大木はMCで語った。バンドが解散の危機を迎えたこともあった。ロックバンド然とした佇まいの中に、途方もない葛藤や苦悩を抱えながら、彼らは今でもここにいるのだ。最後に置かれた「ある証明」と「MEMORIES」。激しくドラマチックに展開するこの2曲が、そのことを強く証明していた。
この日、大木は「この3バンドはひとつのバンドだと思って最後まで楽しんでください」と言った。「どのバンドが欠けても続けてこれなかった」とも。〈孤高〉の3バンドは、それぞれの道を歩み、少しずつ近づき、リスペクトと刺激を交わし合いながら、ぶつかり、混ざり、そうして道がひとつになった。しかしそれは、時代や周りに流されることなく、自分たちが表現すべき音楽に対して、ただただ真摯に向き合い、強い愛情とロックバンドとしての自負を持ち続けてきたからこそ。その延長線上に、今のバンドを取り巻く環境があるだけなのだ。
冒頭のシーンで写真を撮り終えると、「また開催する」「帰ってくる」と彼らは口々に言ってステージをあとにした。20年の間、我が道を進んできた3バンドにとって、この〈THREE for THREE〉が帰ってくる場所になったのだろう。彼らが帰ってくるまでまた自分の道を生き続けよう。そうすれば、またいつかこうしてひとつになれる瞬間がきっとあるはずだ。
文=竹内陽香
写真= 高田梓