SIX LOUNGEのニューシングル「天使のスーツケース」は、勢いや衝動よりもスケールの大きさが印象的なナンバー。発売中の最新号では、圧倒的な歌唱力を誇るフロントマンのヤマグチユウモリのインタビューを掲載しているが、このバンドに横たわるロックンロールへの憧憬や、途方もないロマンティシズムを担うのは、作詞を担当するナガマツシンタロウ(ドラム)だ。ここでは昨年行ったシンタロウのソロインタビューを再掲載する。本誌のインタビューと併せて、このバンドの奇跡的なバランスを感じてもらいたい。
(『音楽と人』2018年12月号に掲載された記事です)
勢いの止まらない大分のSIX LOUNGEから最新ミニアルバム『ヴィーナス』が到着した。1曲目は「MARIA」で、そのリリックは〈こめかみに銃口を向けて〉祈るようなシーンで幕を閉じていくから、人によっては少々クサい、大仰な、前時代的なロックンロールに思えるかもしれない。ただしヤマグチユウモリのヴォーカルには押し付けがましいエゴがなく、どんな言葉もスッと消化していくスマートな艶がある。だから彼らの楽曲は不器用に空回ることなく、常にポップなフィーリングで響き渡るわけだが、逆にいえば、ユウモリが気持ちよく唄っているだけでは生まれないものがあるのだ。これを担うのが全曲の作詞を手がけるドラムのナガマツシンタロウ。初めて彼ひとりに語ってもらったインタビューでは意外なほど内省的な素顔が見えてきたが、このシンタロウとあのユウモリの組み合わせだからこそ、SIX LOUNGEはかくも魅力的なのだ。
作品の評判も、ライヴの動員も高まる一方ですけど、もともとこのバンドは同世代にわかりやすいルーツを持っているわけではなくて。今の状態をどう受け止めていますか。
「基本は変わらずというか、やりたいようにやらしてもらってます。でもお客さんに関していえば……なんですかね? 同世代だけじゃなくて、30代、40代のお客さんも多いんですよ。わかんないですけど……みんな、ウチのヴォーカルが作るメロディだったり、歌声だったり、あとは俺が書く歌詞とか。どっかにハマってもらえてるのかな、と思ったりします」
やっぱり魅力はそこですよね。ユウモリさんのメロディと歌声を、シンタロウさんはどう思っています?
「最初に、高校で出会った時から〈すごくいい声してるなぁ〉と思ってましたね。毎回曲を作る時はスタジオで新しい曲を聴かしてもらうところから始まるんですけど、曲もメロディもどんどん磨かれてるなと思うし」
最初に彼が持ってくる曲って、言葉はないんですか。
「まったくないですね。ほんと〈ラララ~〉で作ってきて。たまーにワンフレーズとか日本語が混じってる時があるんですけど、あってもあんま聴き取れないし(笑)」
〈ラララ〉だけのメロディをアコギ一本で唄うと想像したら、それはもうポップスとして十分成立しますよね。
「そうっすね。だからベースもドラムも歌詞もそっちに寄せようと思ったら、ほんとにそういう曲になると思う。それこそドラマーがもし変わって違う人がフレーズ考えて叩いたら、SIX LOUNGEもまた違う感じになると思いますし」
うん。このメロがあって、バックがもっと控え目で、歌詞がたとえば〈負けないで〜〉とかだったら――。
「ふははっ! ……そうなります。だから最初にユウモリが持ってくるメロディとコード進行に、リズム隊の俺らが好きなものをどんどん詰め込んでいく感じです。まぁ俺の書く歌詞も、なんていうか、そんなに歌謡曲チックではないと思うし。そこが結局SIX LOUNGEらしさになってると思ってますね」
つまり、原曲にロックンロール色をぶち込んでいくのがシンタロウさんだと言えますが。
「……そうでありたいです。メンバーの中でも一番ロックンロールが俺は好きだと、自分でも思ってるので。とにかく大好きなんですよね、ロックバンドというかロックンロールが。子供の頃からこれが一番カッコいいと思ってます」
その憧れは歌詞の端々からドクドク溢れていますけど、ここから見えてくるシンタロウさんの本音って、どこか卑屈なところもあるなと思うんです。失礼ながら。
「いや、自分でもそうだなと思います(苦笑)。けっこう昔から人と接するのが得意じゃないのもあって。趣味も誰とも合わない、あんまり友達がいないような人で。だからなんか、ガツガツ出て行けない性格なんですけど。でもそこでこう……救われたって言うとアレですけど、〈それでもいいんだぜ〉って言ってくれたのがロックンロールだったんですね」
親御さんの影響で、最初はクイーンだったとか。
「そう。クイーンとか洋楽から入ったんですけど、ロックバンドを聴いてると〈お前はお前でいいんだ〉って言われてるような気がして。クイーンも普段はスターだけど、案外暗い、裏の弱さを唄ってる曲もあって、〈あぁ、みんなこうなのかな〉とか思ってましたし。ユウモリに会ってからは斉藤和義さんとかを勧められて聴くようになったけど、俺、もともとは洋楽の歌詞をずっと読んでたんですよ。和訳ですけど、普通の日本語のロックバンドじゃ出てこないような言葉も多くて」