心を揺さぶられたり、座右の銘となっている漫画、映画、小説などの1フレーズが誰しもあるはず。自身の中で名言となっている言葉をもとに、その作品について熱く語ってもらう連載コラム『言の葉クローバー』。今回は、SIX LOUNGEの作詞担当を担っているナガマツシンタロウ(ドラム)が、10代の頃に影響を受けたという中島らものエッセイ集と、そこに収録されているある一節について語ってくれました。
書籍『愛をひっかけるための釘』
肝心なのは、想う相手をいつでも腕の中に抱きしめていることだ
作品紹介
『愛をひっかけるための釘』中島らも
作家や脚本家、ミュージシャンなど多岐に渡り活動していた中島らもによるエッセイ集。早く大人になりたい。空を飛ぶ夢ばかり見ていた少年時代、よこしまな初恋、金縛りから始まる恐怖体験、酒の正体……など、喜びと哀しみと羞じらいに満ちた遠い日の記憶を語る。
(これは『音楽と人』2023年11月号に掲載された記事です)
この本に出会ったのは18歳ぐらいの時。もともと本を読むのは好きだったんですけど、中島らもは知らなくて。そしたらバンドやってる先輩が「知らんの?じゃあこれあげる。たぶん好きやと思うよ」って、このエッセイ集をくれたんです。それから読み始めて、最初は変わった人やなぁ〜っていう印象。でも型破りな感じがカッコいいなとも思いました。
今回選んだ言葉は「サヨナラにサヨナラ」っていう章に出てくるもので。そこで書いてるのは、今見ている星の光も太陽の姿もすべて過去のもので、テーブル越しに話している相手の笑顔も無限分の一秒前のもの。つまり目に見えているものはすべてが過去だと。で、人間の実相はどんどん変わっていくから、大切な人はいつも腕の中で抱きしめて同じ時間を生きることが大事で、二本の腕はそのためにあるんだって。これ読んだ時に、すげぇロマンチックなことを言う人だなって感動して。本当に好きな言葉すぎて、『東雲』に入ってる「ふたりでこのまま」っていう曲に入れたくらい。〈大好きな話に/書いていたこの両手は/サヨナラのためにあるんじゃない〉って歌詞は、ここからきてるんです。
らもさんはかなり言動も行動も派手な人だったみたいですけど、それでいて、裏路地の人間みたいな感じなんですよね。わかってもらえない孤独や寂しさが滲んでる。そういう人がこういう優しくてロマンチックなことを書くっていうのが、自分にしっくりきて。俺は小さい頃から〈死んだら無が永遠にあるだけだ〉みたいなことを考えて眠れなくなることがあったんですけど、俺みたいな人間に寄り添ってくれるというか。自分も歌詞を書く時に、この言葉が大勢じゃなくてもいいからひとりの人に響けばいいなって思うんです。自分と似たような奴に届いてくれたらいいなって。新しいアルバムに入ってる「モモコ」とか、まさにそういう曲で。表で生きてない奴、居場所がない奴、寂しさを抱えてる奴。そういう奴らの視点を持って歌詞を書けたらいいなと思うし、あと自分の中にあるロマンチックさをもっと曲で出してもいいんじゃないかって思わせてくれたのは、中島らもの影響が大きいですね。
他の作品もいろいろ読んでるけど、『愛をひっかけるための釘』はとくに優しいらもさんがいるイメージ。どの話もいい感じに力が抜けてて、クスッとできたり、急にグッとくるようなことを言ってきたり。けっこうロックスターっぽい話もありながら、中身はめちゃくちゃ温かい人だと思う。そこに憧れてるところもたぶんあって。俺も人として強くてカッコよくて優しくありたい。作詞の面でも、人間としてもいろんなことを考えさせてくれる大切な作品です。
NEW ALBUM『FANFARE』
2023.09.20 RELEASE
- アナーキー・イン・ザ・人生
- 俺たちのファンファーレ
- キタカゼ
- エバーグリーン
- merry bad end
- モモコ
- 宿酔
- エニグマ
- HAYABUSA
- 恋人よ
- 僕と心臓
- 骨
- アジアの王様
- Paper Plane
- リカ(初回盤のみ収録)
- 夢みた君が大好きだ(初回盤のみ収録)
SIX LOUNGE TOUR 2023-2024"FANFARE"
2023年12月12日(火) 石川県 金沢vanvanV4(延期)
2023年12月13日(水) 富山県 SOUL POWER(延期)
2023年12月15日(金) 新潟県 GOLDEN PIGS RED
2024年1月5日(金) 福岡県 Zepp Fukuoka
2024年1月12日(金) 愛知県 名古屋DIAMOND HALL
2024年1月14日(日) 大阪府 GORILLA HALL
2024年1月18日(木) 東京都 Zepp Shinjuku
※終了分は割愛