The Songbardsのヴォーカルコンビ・上野皓平&松原有志。
彼らの〈作詞力を向上させたい!〉という熱意に触発されスタートしたのが本連載。その名も「The Songbardsの描写探訪」。毎回異なるお題に沿って作詞に挑戦してもらう企画で、今回のテーマは〈登山〉に決定しました。
これまではバンドを代表して上野と松原の2人がさまざまな体験をしてきましたが、今年6月よりソングバーズが3人体制での活動を始めたことを機に、ドラムの岩田栄秀にも今回から参加してもらうことに。〈一人だけ置いていくのはかわいそうだし、山登りに挑戦してもらえば3人の絆もさらに深まるのでは?〉なんてフワッとした思いから参加してもらったのですが、岩田も事前に作詞に取り組んでくれたり、熱量高くこの取材に向き合ってくれました。それによって新体制のソングバーズに対する期待も、登山のやる気も高まっていたのですが……高尾山はそう簡単に我々を迎え入れてはくれませんでした。
ついにこの日がやって来ましたね。
松原「いやあ、ようやくですね……!」
岩田「取材の候補日が全部悪天候で変更になるっていう(笑)」
3度目のスケジュール調整を経て、ですよ。山頂に到達してないのにもう感慨深いです。最初の取材予定日、私は会社にいたんですけど、撮影用のカメラも充電できたしそろそろ高尾山に向かおうかなと思った矢先、雷が鳴り響いて……終わったなって思いました。
2人「はははははは!」
しかも取材延期を決断したのが遅かったので、栄秀さんと上野さんは高尾山に向けて出発したあとで。次の取材日も悪天候で延期。でも、今日はようやく晴れました!
松原「僕、めちゃくちゃ楽しみにしてたんですよ。登る気満々で(笑)」
岩田「俺も!」
栄秀さんはトンボのネックレスもつけて、ファッションからも楽しみな感じが伝わります。
ところで上野さんは?
松原「ちょっと遅れてるみたいですね……あ、来た」
上野さんお疲れ様です……って、そのリュックについてるのは?
上野「あ、スケボーです」
岩田「なんでスケボー?(笑)」
上野「このリュックは普段から使ってるんですけど、家出る前に急いで準備してたらスケボーを外す時間がなくって……そのまま来ちゃいました」
★
これから街中に繰り出すかのような格好(笑)。ひとまず登山を始めるにあたって、事前に書いてきてもらった歌詞を見せてもらいます。
【上野】
僕らは緑の中
途方もなく歩き続ける
何かを得るより
何かを削ぎ落とす為に
すれ違う人たちはみな
凛とした眼で
静寂に向かっている
「昔、祖父の家の近くにある山に、祖父と一緒に登った時の思い出を振り返りながら、高尾山道中を想像して書いた詩です」
【松原】
山は
生まれながらにして
そこを動かず
迎え入れ
送り出し
雨を吸い
汗を吸い
今日もただ
山である
「山登りをするのは学生の時の遠足以来で、当時は班のみんなと一緒に道を間違えて冷や汗をかいたり、どちらかというと自然への恐怖というか畏怖の念を抱いていました。今は自然の荘厳さや美しさのほうへ感情は向いています。このあと実際に夏の山を登ってどうなるかはわかりませんが……」
【岩田】
日々を賑わす宝石は
全部すみかに置いてきた
きっと感じるこの先は
遠い過去、近い未来
憧ればかり ポケットの中
「登山といえば〈自分と向き合う時間〉のような静的なイメージがあり、あらゆるノイズから離れて、静かな世界に踏み出す時の、それでも心のうちは自分の声で溢れている、という高まりをストレートに書きました」