7月21日。KinKi KidsのCDデビュー日である本日、ライヴ映像作品『KinKi Kids Concert 2022-2023 24451~The Story of Us~』がリリースされた。本作には昨年末から今年頭に行われたドーム公演〈KinKi Kids Concert 2022-2023 24451~The Story of Us~〉の京セラドーム公演2日間の模様が収録されているが、昨年はKinKi Kidsがデビュー25周年を迎えた記念すべき1年。よって、この公演も周年を意識したセットリストで構成されていたり、歴代の衣装が飾られたステージも含め、一貫して祝祭感溢れたものになっている。
「硝子の少年」「スワンソング」「愛のかたまり」「薄荷キャンディー」「愛されるより 愛したい」「雨のMelody」「Anniversary」など曲名を挙げればキリがないが、誰もが知っている名曲ばかりが収められている本作。それに加えて、昔から根強い人気を誇っているもののライヴで披露されることが少ない曲や、KinKi Kidsの歴史を語る上で欠かせない曲もあり、長い間彼らを応援している人は言わずもがな、ファンを誰一人取り残すことなく、2人からKinKi Kidsを愛するすべての人々に対しての感謝の思いが感じられる。あの頃のKinKi Kidsを一つ一つ思い返しながら彼らのパフォーマンスを観ていて、個人的に特に発見が多かった曲は「欲望のレイン」だ。
この曲は2000年にリリースされた4枚目のフルアルバム『D album』に収録されており、リリース当時21歳であった彼らが唄うには随分と大人びた歌詩が印象的な一曲でもある。とはいえ、当時の音源を聴き返しても歌詩が浮いて聴こえることはなく、それどころか甘く艶のある2人のハーモニーに魅了されるのだが、今のKinKi Kidsが唄うとまた別の良さがあり驚かされた。リリース当時の音源と地続きな儚さを纏いながらも、哀愁や色気が格段に増していて、彼らの人生経験が表現力にさらなる磨きをかけていることを実感したのだ。
その「磨き」というのは、自然と生まれたものではなく、彼らがストイックに音楽と向き合い続けているからこそ生み出されたものなのだろう。単に過去曲をなぞるのではなく、今の自分たちに表現できることを追求したい――憶測に過ぎないけれどそんな思いを感じたし、思い返せばKinKi Kidsはつねにそういうスタンスだった。ライヴでの生演奏を恒例にしたり、自分たちで作詩作曲を手がけたり、言ってしまえば「アイドル」に求められなかったようなことにも彼らは果敢に挑み、その積み重ねによって、アイドルという枠におさめるのは憚られるほどの音楽性を身につけ、アーティストとしての確固たる地位を築いてきた。〈KinKi Kidsはいい曲が多いよね〉といった世間における共通認識的な思いも、きっと2人の音楽に対して一切妥協しない姿勢や、いちアーティストとしての覚悟がもたらしたものなのだろう。
期待を裏切らないという意味で、彼らのMCにも触れておきたい。本作に収録されているMCの一部が、実はKinKi Kidsの公式YouTubeチャンネルで公開されているのだ。
KinKi Kidsのライヴを初めて観た時、それはもう衝撃的だった。だって、ライヴのMCで1時間近く(時には1時間以上)話すアーティストを見たことがなかったから。ちなみに、「1時間」というのは一つの公演でのトータルの時間ではなく、1回のMCでの時間。しかもそれが抜群に面白く、飽きるどころか〈もっと話してほしい〉と思わせるのだからすごい。漫才ほど緻密な構成ではなく、KinKi Kids自ら「自分たちのMCは生産性がない」と語るほどゆるいもので、話のネタはほんの些細なこと。基本的には話したいことを思いつきで話している印象があり、今回のライヴで言えば、5万5千人という大観衆を目の前にして相方の衣装の中を覗いてみたり(詳細は上記のリンクを確認していただきたい)、MCでの彼らはとにかく自由。もはやMCもKinKi Kidsのライヴの醍醐味と言っても過言ではないし、一度でも彼らのライヴを観れば、〈きっとまた面白い話をしてくれるのだろう〉と期待してしまうはずだ。
話は逸れるが、先日放送されたTBS『音楽の日2023』もそうだった。この音楽番組でKinKi Kidsは毎回何らかのネタを仕込み、総合司会である中居正広とコミュニケーションを図ることが恒例となっている。KinKi Kidsの出番前には、〈今年KinKi Kidsは何をしてくれるのかな〉といった期待に溢れた声をSNS上で見かけたりもした。ちなみに今年のネタはというと、中居正広だけでなく同じく総合司会の安住紳一郎も巻き込み、2人と全く同じ衣装を身に纏った光一と剛が登場、さらには「Amazing Love」の終盤で〈La La Love!〉を〈中居!〉〈安住!〉に変更して唄うというもの。そして、作戦は無事成功。歌唱後には彼らのサプライズを絶賛する声が多く上がっており、2人は世間の期待にまたも応えてみせたのだった。成功の背景には、音楽のみならず笑いに対しても真摯に向き合う2人のストイックさがあったのだと思うが、そもそも磐石な面白さを誇るライヴのMCだって、〈本番で話すことがなくならないように〉とそれまで一緒だった楽屋を別々にしたりと、意識的に工夫を施してきた2人の努力の賜物でもある。
話を元に戻すが、本作を観ていると〈やっぱりKinKi Kidsっていいな〉と何度も思わされる。個人的な感想だが、KinKi Kidsのライヴは新鮮な感動を与えてくれる一方で、いつ観てもブレないパフォーマンス力の高さなどが安心感に繋がり、安らぎさえ覚えてしまう。抜群のパフォーマンス力もお笑い芸人顔負けのトーク力も両立してしまう彼らには、つい絶大な信頼や期待を寄せがちだが、先ほどの『音楽の日』の件といい、世間の〈KinKi Kidsなら〉という無意識に生まれる期待に応え続けるのは、きっと並大抵の努力では無理だと思う。
そもそも、変わらずにKinKi Kidsで在り続けることだって容易ではなかったのだろう。「2人組」という特異性によってもたらされた唯一無二の魅力がある一方で、どちらかが欠けたら終わってしまうプレッシャーと闘い続けてきた25年でもあったはず。それでも2人はKinKi Kidsを守り、私たちに新しい景色を見せ続けてくれた。変わることを否定しているわけではない。でも、変わらずにいること、永遠なんてものはないと痛感することが日に日に多くなっていく今の時代に、地に足をつけてKinKi Kidsというグループを守りながら、自分たちを更新していく2人の勇ましさというのも本作からは確かに感じ取れるのだ。
そして、KinKi Kidsを愛しているのは、他の誰でもなく光一と剛であることが、一つ一つの曲を大切に唄い上げる姿から伝わってくる。特に、デビュー前から大切に唄い続けている「FRIENDS」の冒頭、言葉を交わすことなく腕をタッチする2人を見ていると、彼らの関係性について外野がとやかく言うことは実に滑稽なのだと思えてくる。余計な言葉はいらない。KinKi Kidsの永遠を願うのなら、根も葉もない噂には惑わされず、ただ黙って2人だけを信じればいい。本作を観ているとそんな結論に至るが、これだけは2人に対して何度だって言いたくなるし、声を大にして伝えるべきだと思う。KinKi Kidsでいてくれてありがとう、と。
文=宇佐美裕世
NEW Blu-ray & DVD
『KinKi Kids Concert 2022-2023 24451~The Story of Us~』
2023.07.21 RELEASE
■初回盤
【DISC 1】
01 The Story of Us
02 硝子の少年
03 スワンソング
04 愛のかたまり
05 薄荷キャンディー
MC
INTER
06 欲望のレイン
07 Time
08 lOve in the φ
MC
09 Harmony of December
10 銀色 暗号
11 高純度romance
12 KANZAI BOYA
13 KinKi Kids forever
MC
14 Happy Happy Greeting
【DISC 2】
01 薔薇と太陽
02 Secret Code
03 Kissからはじまるミステリー
04 愛されるより 愛したい
05 雨のMelody
06 Anniversary
07 Amazing Love
INTER
08 フラワー
【DISC 3】
●24451~君と僕の声~
OVERTURE
01 FRIENDS
MC
02 Kissからはじまるミステリー
03 硝子の少年
04 ジェットコースター・ロマンス
MC
05 Midnight Rain
MC
06 たよりにしてまっせ
07 Hey! みんな元気かい?
MC
08 ボクの背中には羽根がある
09 薄荷キャンディー
MC
10 薔薇と太陽
MC
11 全部だきしめて
12 好きになってく 愛してく
13 恋涙
14 愛のかたまり
15 このまま手をつないで
MC
16 Anniversary
MC
17 Amazing Love
【DISC 4】
24451~君と僕の声~ MC Collection
■通常盤
【DISC 1】
初回盤と同内容
【DISC 2】
01 薔薇と太陽
02 Secret Code
03 Kissからはじまるミステリー
04 愛されるより 愛したい
05 雨のMelody
06 Anniversary
07 Amazing Love
INTER
08 フラワー
●SPECIAL REEL〈24451~The Story of Us~ MC Collection〉