東京から盛岡まで新幹線でおそよ2時間。そこから高速バスで1時間半。バス停留所を降りて見えるのは、広いロータリーと広い空。澄んだ空気とのどかな雰囲気が流れている。やってきたのは、go!go!vanillasギター、柳沢進太郎の地元、秋田県鹿角市だ。
5月5日をgo!go!の日と称して、毎年ライヴを開催しているgo!go!vanillas。昨年は牧達弥(ヴォーカル&ギター)、長谷川プリティ敬祐(ベース)の地元である、大分県にてホールライヴを開催したが、今年はアルバム『FLOWERS』ツアーのファイナルであり、柳沢にとっては凱旋となるライヴが、鹿角市文化の杜交流館 コモッセにて開催された。
全23公演というロングツアーのファイナルというだけあり、バンドの一体感やグルーヴはかなり洗練された仕上がり。とくに、今ツアー全箇所に帯同した井上惇志(ピアノ)が呼び込まれてからは、音楽的な奥行きがさらに広がり、楽曲の世界にぐいぐい聴き手を引き込んでいく。スタート時は、東北県民特有のおしとやかで奥ゆかしい盛り上がりだった客席も、ステージ上のメンバーの熱量と比例して、たくさんの拳があがり大きなクラップが巻き起こっていった。
この日は柳沢の地元ということもあり、「Penetration」や「イノセンス」など、彼がヴォーカルを取る曲も多く披露された。そしてなにより印象的だったのは、アンコールでメンバー1人ひとりに対して、柳沢が赤裸々に思いを伝えていった場面だ。彼は物事をはっきり言うタイプではあるが、どこか熱いものを内側に秘めがちなところがあると思っていたので、意外でもあり、メンバーへの大きな信頼と愛情にgo!go!vanillasの結束力の強さをあらためて感じられたシーンだった。
ライヴ終了後、柳沢へインタビューする時間をもらった。どんな気持ちでライヴに臨んでいたのか、バンドや地元への思いとともに話してくれた会話をお届けします。
ライヴお疲れさまでした!
「お疲れさまでした!」
ツアーはどうでした?
「より音楽的な表現の仕方を身につけていったツアーでしたね。今まではわりと攻めのバニラズのカッコよさを研究していた感じだったんですけど、アレンジメントや曲間の繋ぎとかにも力を注ぎながらツアーを廻れて。今日のファイナルは、冷静と情熱の間みたいなライヴになったので、すごく成長を感じました」
そうですね。そして今日は凱旋ライヴという面でも、グッとくる瞬間がたくさんあって。
「そうですね。ぶっちゃけ、自分としては18歳の時に出てるんで、地元にそんなに思い入れがないって言ったら失礼なんですけど、そこまでレペゼン的な気持ちはなかったんですよ。学生時代の友達や先生も、べつに俺のことなんて覚えてないだろうなと思ってたし。でもいざ会場に来たら、同級生が祝い花くれたり、友人からQRコードが貼り付けられた紙が届いて、見てみたら学生時代の先生からの動画コメントだったりして。その先生も『3年前ぐらいから君が活躍してるの知ってたよ』みたいなことを言ってるんですよ」
すてきな話じゃないですか。
「俺が思ってた以上に、みんな見てくれてたんだなって。〈ありがとう〉っていう気持ちがちゃんとブーストした状態でライヴに入れたのはよかったですね。昨日までは、俺のこと誰も知らないだろって感じだったから、いいツアーファイナルにしようぐらいにしか思ってなかったんで」
お友達からのお花や先生の動画のおかげで、だいぶモチベーションが変わったと。
「こうやって俺個人を掘り下げてくれる友達がそんなにいたことにびっくりしたんですよ。そんな素振りまったくなかったやん! いつから俺のこと知ってたん!?っていう感じ(笑)」
ちなみに、これまで同窓会みたいなものに参加することはなかったんですか?
「俺、みんなの連絡先知らないんですよ。動画送ってくれた同級生も、会場宛に手紙で送ってくれて、そこにQRコードが貼ってあっただけだから、ひとりも連絡先知らなくて。でもそこまでしてくれる人がいるってことがすげぇうれしかった」
地元でライヴをやらないと気づけなかった。
「そうですね。地元に友達いないと思ってたんで」
ははははは!
「思ってたより俺の秋田時代って充実してたんだなって、今日やっと気づきました。本当に同級生のみんなと呑み行きたいんですよ。でも連絡先がわからないからお礼も言えないし、誘いようがないっていう。だから、この記事見てたら俺にDMしてください(笑)」
同級生の皆さん、進太郎くんへご連絡お待ちしています(笑)。あと、MCでも言ってましたが、今日はメンバーみんなスーツでライヴをしてて。その理由が、進太郎くんの大好きなおじいちゃんがスーツ好きだったからっていうのも、よかったですね。
「今、同級生に対してそんな素振りなかったって散々言ったけど……同じ土地で育ったから俺も性格一緒なんだなって思う節もあって」
どういうことですか?
「俺がじいちゃんのことめっちゃ好きってMCで話したけど、たぶん、母親からすると〈はぁ?〉ってなってると思うんですよ。そんな素振りを家ではしてないから。だから、俺が友達に抱いたような感覚を、おそらく親も持ったんじゃないかな(笑)」
家では好きなんて言ってなかったのに、みたいな。
「そうそう。秋田の人間って内向的なんで、自分の内にしまっておくことが多いんですよ。ふと今それを思いましたね。やっぱり、若い頃はじいちゃんのことが好きっていう気持ちを出すのがハズかったから、家族の前ではあまり見せてなくて。そういう思いをちゃんと言えずにじいちゃんが死んじゃって、自分がライヴしてる姿も見せられなかったなっていうのがずっとあったんですよ。だから鹿角でライヴやることが決まった時に、スーツでライヴやって、空にいるじいちゃんにその姿見せてあげようと思って」
他の3人もそれに賛同してくれたっていうのがいいよね。go!go!vanillasは周りの人や気持ちを大事にするバンドだなって、あらためて思いました。
「衣装って自分のモードを表す指標だったりするし、嫌がられてもおかしくないと思うんですよ。でも今の話をメンバーにして『よかったらスーツ着てもらえますか?』って聞いたら、すぐOKしてくれて。うれしかったっすね」