【LIVE REPORT】
Mrs. GREEN APPLE〈Mrs. TAIBAN LIVE〉
2023.04.04&05 at Zepp DiverCity(TOKYO)
Mrs. GREEN APPLEが今月4、5日に開催した対バンライヴ〈Mrs. TAIBAN LIVE〉。対バンのゲストは4日がももいろクローバーZとPEOPLE 1、5日がフジファブリックとネクライトーキーという異色の組み合わせ。しかもMrs. GREEN APPLEにとっては約7年ぶりの開催ということで、記念すべき2日間になることは公演を観る前からすでに約束されているようなものだった。
1日目のトップバッターを飾ったのはPEOPLE 1。1曲目に披露したのは「銃の部品」。Deu(ヴォーカル&ギター&ベース)とIto(ヴォーカル&ギター)の鬼気迫るツインヴォーカルを筆頭に、縦横無尽に暴れ回る彼らのステージングは会場の熱を一気に上げていく。その後も「スクール‼︎」「BUTTER COOKIES」などアッパーチューンを連発。PEOPLE 1といえば、否応なしに心を躍らせるポップなメロディだけでなく、心の奥底にある孤独感が滲んだ歌詞もまた魅力的だ。この日の中盤で披露された「魔法の歌」は〈生き辛いよな この世の中は/色んな事が分かってきてからはもっと涙がこぼれそうだ〉と生きることのままならなさを憂いながらも、力強く生きていこうと決意する楽曲。寂しさや満たされない感情をポップなメロディに昇華していく点は、紛れもなくミセスとの共通項であり、今回の対バンライヴでPEOPLE 1が指名されたことにも納得がいく。きっと、ミセスとPEOPLE 1は出会うべくして出会った2組なのだろう。
2組目は、大森元貴(ヴォーカル&ギター)がファンと公言するももいろクローバーZ。一瞬にして会場を明るく照らしてしまうその華々しいオーラは言わずもがなだが、何より、表立った輝きの奥に芯の強さを感じる力強いパフォーマンスを見ていると、彼女たちが長年アイドル界の第一線で活躍し続けていることも頷ける唯一無二の存在だと感じた。「サラバ、愛しき悲しみたちよ」「走れ! -ZZ ver.-」といった一見さんにも優しいセットリストの中で印象的だったのは、大森がももクロを知ることになったきっかけの曲「Wee-Tee-Wee-Tee」。こういった対バンならではのセトリに、彼女たちのサービス精神の旺盛さや遊び心を感じずにはいられなかった。何より、観客の半数以上がMrs. GREEN APPLEのファンというアウェイな空間の中、臆することなく可憐さと強さが共存したパフォーマンスで観客と対峙する姿はどこか痛快でもあり、アイドルの底力を見せつけられた気分だった。
2日目のトップバッターはネクライトーキー。1曲目の「ゆるふわ樹海ガール」を筆頭に、極彩色豊かな心躍るサウンドを鳴らしていく。MCではもっさ(ヴォーカル&ギター)が「今日はご依頼いただきありがとうございます! まさかMrs. GREEN APPLEに依頼してもらえるとは思わなくて、びっくりしました……」と語るやいなや、「依頼……? 言い方は間違ってないねんけど(笑)」とツッコむ朝日(ギター)。さらに、朝日と藤田(ベース)は6、7年前にミセスと対バンしたことがあると語る。表立って交流する姿を見せることはなくとも、実は互いに刺激し合ってきた関係性なのだろう。だからだろうか、ほのぼのとしたMCに反して、この日の彼らの演奏は熱量がすさまじかった。1組目にふさわしいパフォーマンスで鮮烈なインパクトを残し、ネクライトーキーはステージを去っていった。
2組目のフジファブリックは、1曲目の「Sugar!!」でじわじわと会場の熱を上げていく。MCでは山内総一郎(ヴォーカル&ギター)がミセスとの出会いを懐古。「大森くんとは弾き語りのイベントで共演して……」と語っていたが、これは『音楽と人』が開催した弾き語りイベント〈音楽と人LIVE 2016『東京アコースティック百景』〉を指していたのだ。そこから7年の時を経て再び競演となったこの日、山内は「ミセスのライヴはすごいですよね。今日は僕自身、ミセスのライヴを観られるのがすごく楽しみで」とうれしそうに語る。後輩へのリスペクトを忘れず対等な関係性を築こうとする点も、フジファブリックというバンドの愛すべき点だ。のちのミセス出演時、大森がフジファブリックについて「心の底から好きだと言えるバンド」と語っていたのが印象的だった。楽曲の素晴らしさや、そこから受け取ってきたものも彼の中にはたくさんあっての言葉だとは思うが。新曲「ミラクルレボリューション No.9」では観客に振り付けをレクチャーしたのだが、その際、一丸となってマスターしようとするミセスのファンに対し「いやぁ、みんな偉いよ。偉い!」と連呼した山内。それによって会場はさらにアットホームな空気に。演奏面だけではなく、その佇まいも含めて人を惹きつける魅力がこのバンドにはあることをあらためて実感した。
そして、2日間のトリを飾ったのはもちろんミセス。4組のゲストのパフォーマンスはどれも甲乙つけがたい魅力があったが、主催者であるミセスもやはり圧巻だった。1曲目の「藍」から、一瞬でも気を抜けば心がすべて持っていかれるほどの気迫が感じられたのだ。その後も「CHEERS」や「WanteD! WanteD!」「青と夏」といったキラーチューンを容赦なく連発。さらに、MCではゲストの楽曲をカヴァーする一幕もあった。1日目はPEOPLE 1の「DOGLAND」とももいろクローバーZの「行くぜっ!怪盗少女」、2日目はネクライトーキーの「オシャレ大作戦」とフジファブリックの「虹」。自分たちの楽曲を披露すると見せかけて先述の楽曲のサビ部分を披露し、演奏を終えると「緊張して他のアーティストの曲を演奏しちゃった!」とわざとらしく言う、というお決まりの流れがあったのだ。
「私は最強」を披露する際には、「声出しができるようになってからこの曲を演奏するのは今日が初めてです。みんなわかってるよね?」と煽る大森。つまり、サビラストの〈私は最強〉のフレーズをこの場にいる全員で唄いたい、ということ。このように観客の心を掻き立てるようなMCやパフォーマンス、そしてミセスのポップにもロックにも振り切れる幅広い音楽性も含めて、つくづくエンタメ性の高いバンドだなと思う。だからこそ、アイドルとロックバンドという異色の対バンも結果的には異色と思わせずに、両者を結ぶ架け橋的な存在になれるのだろう。意図的かどうかはわからないが、1日目に出演した3組はいずれもライヴで魅せるエンタメ性の高さが共通項だったのではないかと思う。
では2日目の共通項は何かというと、それはバンドとして音を鳴らすことを何よりも大切にしている、ということではないだろうか。フジファブリックは突然のメンバーの逝去、ミセスはメンバーの脱退など、互いに結成した頃は想像していなかった、バンドの存続が危ぶまれるような壁に直面することがあった。ネクライトーキーに関しては、朝日はボカロPとして活躍していた過去があり、ミセスも大森がソロで作品をリリースしたことがある。極端な話、彼らはバンドという形態でなくとも活躍できる可能性を秘めている。それでも3組はバンドにピリオドを打つ選択をせず、むしろ、メンバーでもあり盟友でもある仲間と曲を生み、鳴らすことに何よりも意義深さを感じてきたはずだ。
壮大なバラード曲「Soranji」を、身を削るかのように全身全霊で唄う大森を見ていたらそう思わずにはいられなかった。この曲に限らず、心の深部にある感情を曝け出すように、自身の孤独感、人との繋がりを求める気持ちを絶えず表現してきたミセス。大森がそれらの感情を躊躇なく詞に落とし込めるのは、それを受け止め、音楽へと昇華しようと共に戦い続ける若井滉斗(ギター)と藤澤涼架(キーボード)がいるからではないのか。きっと、彼一人では今こうしてステージに立っていないだろう。そもそも、一人で表現し続ける未来なんて端から彼の選択肢にはなかったはずだが。そんなふうに勝手に思いを巡らせてしまうほど、「Soranji」ではバンドとしての強い一体感があったのだ。
純粋に好きなアーティストだけをゲストとして招き、開催された今回の対バンライヴ。ゲストに対する思い入れや愛情の深さは、ミセスによる楽曲カヴァーやMCからも十二分に伝わってきた。しかし、憧れに飲まれず張り合えたのは、やはりミセスのバンドとしての力強さが現在進行形で増し続けているからだろう。最近でも初のドームライヴ〈Mrs. GREEN APPLE DOME LIVE 2023 “Atlantis”〉の開催が発表されたが、もはや彼らの勢いは誰にも止められない。どんな会場だろうと、どんな対バン相手と対峙しようと、彼らの存在感も訴求力の高さも揺るがないはずだ。7年ぶりの対バンライヴは、Mrs. GREEN APPLEというバンドの力強さと止まらぬ進化を肌で感じた素晴らしい公演だった。
文=宇佐美裕世
写真=Kana Tarumi
5月2日発売の音楽と人6月号では、メンバー3人のインタビューを掲載。配信シングル「ケセラセラ」と今のMrs. GREEN APPLEについて、じっくり語ってくれています。こちらもぜひチェックを!
【SET LIST】
■1日目
PEOPLE 1
01 銃の部品
02 スクール!!
03 BUTTER COOKIES
04 怪獣
05 魔法の歌
06 DOGLAND
07 エッジワース・カイパーベルト
ももいろクローバーZ
01 吼えろ
02 BIONIC CHERRY
03 Wee-Tee-Wee-Tee
04 L.O.V.E
05 孤独の中で鳴るBeatっ!
06 サラバ、愛しき悲しみたちよ
07 走れ! -ZZ ver.-
Mrs. GREEN APPLE
01 藍
02 CHEERS
03 WanteD! WanteD!
04 インフェルノ
05 青と夏
06 Soranji
07 私は最強
08 ダンスホール
09 ニュー・マイ・ノーマル
■2日目
ネクライトーキー
01 ゆるふわ樹海ガール
02 北上のススメ
03 こんがらがった!
04 がっかりされたくないな
05 だれかとぼくら
06 オシャレ大作戦
07 遠吠えのサンセット
フジファブリック
01 Sugar!!
02 Green Bird
03 ミラクルレボリューション No.9
04 徒然モノクローム
05 楽園
06 若者のすべて
Mrs. GREEN APPLE
01 藍
02 CHEERS
03 WanteD! WanteD!
04 インフェルノ
05 青と夏
06 Soranji
07 私は最強
08 ダンスホール
09 ニュー・マイ・ノーマル