【LIVE REPORT】
DOES〈DOES TOUR 2021 (R)evolution #1〉
2021.11.04 at 渋谷CLUB QUATTRO
「本当におかえりなさい」
この日の終演後、メンバーに最初にかけた言葉がこれだった。もちろん、バンド再始動の知らせを聞き、去年1月に行った復活インタビュー(『音楽と人』2020年3月号掲載)の際にも、一年越しとなった復活ライヴのアフターインタビューにも、その言葉を使ってはいたが、この日、ロックバンドとしての拍動をしっかりと感じさせる彼らの姿を見て、本当の意味でのバンドの帰還を感じたのだった。
本来であれば、昨年6月に行われる予定だった東名阪ツアー〈(R)evolution #1〉。しかしながらコロナ禍により、開催を発表することなく一旦白紙となっていたツアーが、今回、約一年半越しに開催された。実に5年ぶりとなるツアーの東京公演、会場となった渋谷クアトロには、早くもバンドの復活を喜ぶオーディエンスによる熱気が充満していた。
ゲイリーグリッターの「Rock & Roll」というお馴染みの、かつ5年ぶりに聴くオープニングSEに合わせてハンドクラップが起きるなか、真っ赤に照らされたステージにメンバーが登場し、ひときわ大きな拍手でオーディエンスが彼らを出迎えた。「お久しぶりです!」という氏原ワタル(ヴォーカル&ギター)の声を合図に、バシッと3人が音を合わせる。そして、「道楽しようぜ!」という言葉とともに、DOESの新章の幕開けを告げたナンバー「道楽心情」で、勢いよくライヴはスタートしたのだった。
「帰ってきたよー! やっと会えましたね。久しぶりの人も、初めましての人も、今日はみんなで仲良くパーティだ!」という言葉に続けて、「このご時世、みんなはまだ声を出せないから」と、頭を振ってのヘッドバンギングでも、足を踏み鳴らしてのストンプでも、その場で飛び跳ねるジャンプでも、どんな形も身体を使って一緒に今日という日を楽しんでいこうと伝えたワタル。
その言葉通り、「サブタレニアン・ベイビー・ブルース」では、森田ケーサク(ドラム&コーラス)が叩き出すビートに合わせてハンドクラップがフロアに広がり、続く「戯れ男」ではザックザックのギターリフに合わせてヘッドバンキングしたり、拳を振り上げたりと、身体を使って思い思いに音楽に反応していくオーディエンス。またイントロを長めにとった「ワンダーデイズ」で「足を使って、リズムに合わせて踏み鳴らせ!」「サビになったらみんなでジャンプしよう!」と投げかけていたワタルしかり、イントロや曲間でハンドクラップを先導していくベースの赤塚ヤスシや、自身が打ち出すビートで終始オーディエンスを引っ張っていったケーサクからは、こうやって同じ空間、同じ時間を共にするのであれば、一緒にとことん楽しもうじゃないか!という強い思いが伝わってくる。そうやって初めてライヴハウスに来たという人にも、フロアでもみくちゃになっていたかつてのライヴを知っている人間にも、こんな形で一緒に楽しむこともできるぜ、とコロナ禍でのロックバンドの楽しみ方を常に提示していた3人の姿は、何と頼もしいことか。
この日のライヴを共に楽しむものにしたいというバンドの思いは、この日のセットリストにも表れていた。4月に行われた復活一発目の配信ライヴが、シングル曲を中心に、止まっていた時計の針を進め、これまでとこれからのDOESをみせていくものだったとしたら、今回は、目の前にいる人たちが、この窮屈な状況を忘れるぐらいに音楽と戯れ、一緒に楽しめるような内容となっていた。それを特に感じたのが、先の「ワンダーデイズ」からの中盤。スウィンギンなリズムに自然と身体が揺れる「天国ジャム」や、珍しくヤスのヴォーカルパートもある4つ打ちビートの「ユリイカ」など、オルタナ/ガレージを基調にしつつも、カラフルなサウンドを纏い始めた4枚目のアルバム『MODERN AGE』からのダンサブルなナンバーを久々に披露し、オーディエンスの身体を縦にも横にも揺らしていたのだった。
メンバー紹介を兼ねてのMCタイムでは、5年ぶりにツアーを廻れたこと、お客さんの前で演奏ができることへの喜びと感謝をそれぞれの言葉で述べた3人。その後、ワタルがアコギを抱え、「世界の果て」をしっとりと唄い上げ、そこからエモーショナルな初期ナンバー「太陽病」へと繋げ、DOESというバンドが持つもう一つの顔ともいえるセンチメンタリズムをみせていく。
そこから、〈最強の未来しかない〉と歌詞を変えて唄われた「KNOW KNOW KNOW」を皮切りに後半戦へ。いろいろあるけど楽しくやってこうぜとガレージパンクに乗せて唄い飛ばす「ヘイヘイヘイ」から「レイジー・ベイビー」と畳み掛け、「修羅」の切れ味鋭いギターストロークが振り落とされた瞬間、その場から動くことはできないけれど、思い思いの形で全身からエネルギーを放出していくオーディエンス。そんなフロアの熱気に負けじと、3人は全力で音を放ち、今後バンドとDOESを愛する者たちとの約束の歌になっていくであろう「斬り結び」を、そして「まだまだ踊りたいか!」という言葉とともに「バクチ・ダンサー」を投下し、本編は終了した。
2016年の活動休止前ラストライヴ以来、約5年ぶりにライヴで演奏された「今を生きる」で始まったアンコール。もともとこの曲は10年前の東日本大震災を経て生まれた、少しでも光ある未来を願う歌だったが、閉塞的な日々が続くコロナ禍の今、改めてこの曲を、目の前にいる人たちに直接届けたかったのだろう。アウトロでワタルは「今生きて、こうやって再び会えたことを感謝します!」と叫び、改めて待っていてくれたファンへの思いを伝えたのだった。
「それじゃあ、やっちゃいましょうか!」と、ダブルアンコールにも応え、「明日はくるのか」「曇天」をプレイ。ラストに向けてどんどん爆発力を増していくバンドのグルーヴは、かつての、いや、以前よりも有機的で力強いものになっていた。そこからは、ここからまたバンドが動き出していくこと、そして一連の復活に際しての祭りが終わってもなお、いいテンションのままバンドが続いていくことを確信させた。それが、この日なによりも嬉しかった。
最後に、三本締めを模したセッションによって、フロアとステージが一体となり、ワタルがギターを高く掲げ、スパッと刀を振り下ろすかのようなギターストロークをかまして、大団円を迎えた。 ようやくバンドが帰ってきたことを強く実感できたこの日。果たして、当の本人たちは今回のツアーを終え、どんな感覚を手にしたのだろうか。ライヴを終えたばかりの3人に、少しの時間、話を聞かせてもらった。もうすでにバンドは次の動きを見据えているようだ。